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ドラギ総裁、追加措置の余地残すも現状維持

by • June 3, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2286

Draghi Stays On Sidelines, Leaves The Door Open For More Stimulus.

欧州中央銀行(ECB)は2日、ウィーンで定例理事会を開催した。政策金利にあたるリファイナンス金利は、前回に続き市場予想通り0%で維持。上限金利の限界貸出金利も0.25%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.4%で据え置いた。3月に決定した追加措置も、堅持した。

ドラギ総裁は、記者会見の導入で社債購入(コーポレート・セクター買入プログラム、CSPP)を6月8日から開始すると発表した。前回の説明によると、発行市場と流通市場で行う。ユーロ圏の中央銀行のうちドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、フィンランドの6行が、月額800億ユーロに引き上げた資産買入プログラムの枠内で実施する。買い入れの限度は、それぞれ70%まで。条件として 1)オペの担保対象、2)BBBマイナス以上の格付け(投資適格級)、3)6ヵ月から30年、4)ユーロ圏に本籍を置く企業で、ユーロ建て、5)銀行及び銀行の傘下企業以外(親会社として銀行を保有する企業であればOK)――とした。

対象を絞った長期的流動性供給オペ(TLTRO)に4年物を追加したTLTRO IIは、6月22日に実施するとも発表した。こちらは2017年3月まで四半期に1回、計4回実施する予定。貸出金利となるリファイナンス金利はゼロ%なので、ECBが定めた量より増加させた銀行に対しては中銀預金金利のマイナス0.4%を適用する(つまりECBが金利を支払う)。

政策金利をめぐっては「金利は相当の期間、資産買入プログラム(が終了予定の2017年3月以降)より先まで、低い水準で推移すると見込む」と前回の文言を繰り返した。前回に続き、包括的な緩和策により「ユーロ圏での資金調達環境は改善した」とも強調。一方で「物価安定への見通しを注視し、目標が保証されるならば利用可能な全ての手段を用いて行動する」とし、「必要な限り、金融緩和を維持することが不可欠」を削除した。具体的に行動が必要な環境としては1)ユーロ高などの金融引き締め進んだ場合、2)原油安から派生する二次的影響(ただしドイツ以外、賃上げや物価高が派生せず)――を挙げ、ドイツ以外では現時点で波及していないとも説明する。

成長見通しは、今回2016年分を0.2%ポイント上方修正したように「経済回復はゆるやかながら安定したペースで進展していくと予想する」と説明した。従来の「経済回復が進展していくと予想する」から、具体的なペースが追加されている。また「成長見通しは下方に傾くが、リスク・バランスは改善した」と盛り込み、従来の「成長見通しは下方に傾く」から上方修正した。

インフレも「向こう数ヵ月先に非常に低い水準で推移するか、あるいは再びマイナスに陥る」とし、「再びマイナスに陥る可能性がある」より悲観度を後退させた。インフレ参照値2%の達成は、「2017年から2018年」で据え置き。今年後半には、原油価格を中心に前年比での押し下げ効果が薄れるためベース効果が生じ上向く可能性を指摘する。もっとも二次的影響は「ドイツ以外、確認していない」と述べ、基調のインフレは低水準にあるとの考えを示した。

以上を踏まえ、成長見通しは2016年のみ上方修正した。HICP見通しは原油価格の戻りを受けても若干の上方修正にとどめた半面、コアHICP(食料、燃料を除く)は下方修正が目立った。

2016年見通し(6月時点)
GDP 1.6%
HICP 0.2%
コアHICP 0.9%

2016年見通し(3月時点)
GDP 1.4%
HICP 0.1%
コアHICP 1.1%

2017年見通し(6月時点)
GDP 1.7%
HICP 1.3%
コアHICP 1.2%

2017年見通し(3月時点)
GDP 1.7%
HICP 1.3%
コアHICP 1.3%

2018年見通し(6月時点)
GDP 1.7%
HICP 1.6%
コアHICP 1.5%

2018年見通し(3月時点)
GDP 1.8%
HICP 1.6%
コアHICP 1.6%

BREXITをめぐっては、「英国と欧州連合(EU)には互恵関係があり、残留が望ましい」と語った。ギリシャについては「過去数ヵ月でかなりの進展があったと認識する」と述べつつ、資金供給オペの担保として同国債の受け入れ再開の決定は見送ったと明かした。ギリシャ政府が合意した改革を実行するか、債権団の確認が必要と説明している。

BNPパリバのルイジ・スペランザ欧州・CEEMAマーケット・エコノミクス共同ヘッドは、レポートにて「ゆるやかかつ安定的に回復するという基本シナリオへの自信を深め成長見通しを引き上げつつ、3月に発表した政策ツールに焦点を置く姿勢を打ち出した」と分析した。追加緩和への扉を閉じなかった点にも、注目。コアインフレ見通しにおいて一段の下方修正を余儀なくされる場合は「資産買入期間を延長する」とし、その時期を「9月」と見込む。

――今回は、金融市場に無風な定例理事会となりました。英国の国民投票を23日に控えつつ、まるで市場が嵐の前の静けさのごとく凪状態にあり、個人的には不気味な印象を禁じ得ません。

(カバー写真:European Central Bank/Flickr)

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