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米5月中古住宅販売件数は9年ぶり高水準も、既存顧客の買い替え要因?

by • June 23, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off1999

Existing Home Sales Rise, But First Time Buyers Fall.

全米リアルター協会(NAR)が発表した米5 月中古住宅販売件数は年率553万件と、市場予想の555万件に届かなかった。とはいえ、前月の543万件(545万件から下方修正)を1.8%上回り、3ヵ月連続で増加。2007年2月以来の高水準を遂げている。前年比では6.0%増となり、1.5%増から伸びを加速させ5ヵ月連続でプラスを示した。

内訳をみると一戸建てが前月比1.9%増の490万件、複合住宅も1.6%増の63万件とそろって3ヵ月連続で増加した。一戸建てはヘッドラインと同じく2007年2月以来の500万件乗せを視野に入れ、複合住宅は2015年5月以来で最高となる。

4大地域別では、3地域で増加し前月の2地域を上回った。IT産業が集まる西部が5.4%増の118万件、石油生産地が集まる南部も4.6%増の228万件とそれぞれ前月から増加に転じた。北東部は4.1%増の77万件と、3ヵ月連続で増加している。一方で、中西部は6.5%減の130万件と3ヵ月ぶりに減少した。

在庫件数は、前月比1.4%増の215万件と5ヵ月連続で増加、直近で最高を示す。販売件数の伸びを在庫件数がそれぞれ増加したため、在庫相当は前月通り4.7ヵ月と、2015年12月以来の水準を維持した。中央価格は前年比で4.7%上昇の23.97万ドルと、過去最高を記録。前月比では2.9%上昇し、3ヵ月連続で上向いた。売り出し平均期間は32日と前月の39日から短縮、前年同期は40日だった。

買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件 5%=前月は5%、前年同月は7%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 1%、直近で最低<前月は2%、前年同月は3%
・差し押さえとショートセールを合わせた不良債権物件 6%、直近で最低<前月は7%、前年同月は10%
・新規購入者 30%、直近で最低<前月は32%、前年同月は32%
・現金での購入者 22%、直近で最低<前月は24%、前年同月は24%
・住居用ではなく投資向け 13%=前月は13%、前年同月は14%

中古住宅販売件数、一戸建てと複合そろって好調。

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(作成:My Big Apple NY)

発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、結果を受け「(気温上昇を受け潜在購入が住宅市場に参入する)春に超低金利が続き、買い手にインセンティブを与えた」と振り返る。ただし「新規購入者は低迷したままで、ホームエクィティが積み上がった住宅保有者が買い替えに動いている」と指摘。住宅の買い替えを行う買い手が回転を利かせているため、販売件数の増加につながったと説明した。

▽MBA住宅ローン申請件数指数は上昇、金利低下で借換が支え

全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請件数指数は、6月17日週に前週比2.9%上昇し522.2だった。前週の2.4%の低下から反発、過去5週間で3回目の上昇を示す。借換が6.5%上昇の2189.4と、プラスに反転し全体に寄与。新規は逆に2.4%低下の231.9と前週と合わせ2週連続で低下した。米連邦公開市場委員会(FOMC)は惨憺たる結果に終わった米5月雇用統計を受け金利据え置きを決定、FF金利見通しなど下方修正したため金利が低下し借換を中心に需要を喚起した。MBA住宅ローン申請件数指数の前年比(季節調整前)は34.8%上昇し、前週の33.3%から加速。新規が11.7%の上昇(前週は15.9%)と伸びをせばめたが、借換が58.7%(前週は51.7%の上昇)と押し上げた。

30年固定金利型の住宅ローン金利(平均)は前週の3.79%から3.76%へ低下した。1年前の4.19%以下にとどまり、過去3年間で最低近くを保つ。15年固定金利型(平均)は前週の3.06%から3.04%へ低下。FHAのローン金利も、前週の3.75%から3.70%へ低下した。

MBA住宅ローン申請件数指数、低金利を支えとし連休明けに大幅反発。

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(作成:My Big Apple NY)

申請全体に占める借換の割合(件数ベース)は57.7%と、前週の55.3%を上回った。2009年6月以来の低水準である2015年7月3日週の48.0%から切り返した水準を維持。ただし2013年5月以来の高水準となった2015年1月16日週の73.9%からは、大きく遠ざかったままだ。

▽米4月住宅価格指数は予想以下、15年8月以来の低い伸び

米住宅金融公社(FHFA)が発表した米4月宅価格指数は前月比0.2%上昇し、市場予想の0.6%を下回った。6ヵ月ぶりの高水準に並んだ前月の0.8%(0.7%から上方修正)に届かず、2015年8月以来の低水準。ただし、16ヵ月連続でプラスを示す。前年比は5.9%上昇し、3月の6.1%並びに1~2月の6.0%から小幅に鈍化した。国勢調査ベースの9地域別では6地域で上昇し、前月の7地域を下回った。

FHFAが公表する住宅価格指数は、米連邦住宅貸付機関監督局(OFHEO)傘下のFHFAの場合はプライム層向けの住宅価格がメインで、融資額が政府保証機関(GSE)の買取基準額を超えるジャンボ・ローンや、低所得者層向けのサブプライムを含んでいない。従ってS&Pケース/シラー住宅価格指数とは対象が異なり、数字自体は現状より強めの数字が出ると言われている。こうした背景からFHFAは2011年6月分から、フレディマックやファニーメイなどGSE以外のローンを含んだ住宅価格指数を拡大版として、公表を開始した。

――米5月中古住宅販売件数は数字上では好結果でしたが、詳細はバラ色とは言い難い。特に新規購入者の割合が低下しMBA住宅ローン申請件数指数の新規購入が伸び悩むように、既存顧客が買い替えを活発化させているようです。NY連銀の家計調査にある通り住宅ローンの審査は厳しく、ミレニアル層など若い世代を中心に住宅購入が困難な実態が浮かび上がっており、信用の高いプライム層が全他を支えている可能性を残します。

(カバー写真:Melinda …./Flickr)

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