ISM Manufacturing Index Rises To Highest In 16 Months.
ISMやマークイットが発表した6月の製造業景況指数、米5月建設支出をおさらいしていきます。
米6月ISM製造業景況指数は53.2となり、市場予想並びに前月の51.3を超えた。分岐点乗せは4ヵ月連続で、2015年2月以来の高水準。内訳は以下の通りで、新規受注をはじめ新規輸出受注、生産、在庫が前月を上回った。雇用に至っては7ヵ月ぶりに50の分岐点を回復している。詳細は、以下の通り。
・新規受注 57.0、4ヵ月ぶりの高水準で6ヵ月連続の分岐点乗せ>前月は55.7、6ヵ月平均は55.0
・生産 54.7、3ヵ月ぶり高水準で6ヵ月連続の分岐点乗せ>前月は52.6、6ヵ月平均は53.3
・雇用 50.4、7ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月は49.2、6ヵ月平均は48.6
・在庫 48.5、12ヵ月連続で分岐点割れ>前月は45.0、6ヵ月平均は45.8
・新規輸出受注 53.5、2014年11月以来の高水準>前月は52.5、6ヵ月平均は50.7
・仕入れ価格 60.5<前月は63.5と2014年9月以来の高水準、6ヵ月平均は51.1
・入荷時間 55.4、2014年12月以来の高水準>前月は54.1、6ヵ月平均は51.4
・受注残 52.5、分岐点を回復>前月は47.0、6ヵ月平均は48.8
ISM製造業景況指数と各連銀景況指数、6月はまちまちだったもののISMは上振れ。
ISMのブラッドリー・ホルコム会長は、結果に対し「18業種のうち13業種が拡大を示した」と指摘した。前月の12業種から増加した内容を評価し、「非常に好ましい」とコメント。上半期の平均値50.8が続けば「2016年の成長率は2.4%、6月の53.2が続けば3.2%が見込まれる」と期待を寄せる。
▽米6月マークイット製造業PMI確報値、下方修正も3ヵ月ぶりの水準回復
米6月マークイット製造業PMI・確報値は51.3となり、市場予想に並んだ。速報値の51.4から下方修正され、3ヵ月ぶりの水準を回復。2009年9月以来の水準へ低下した前月の50.7から改善した。とはいえ、金融危機以前の平均値54.1にはまだ距離を残す。
マークイット製造業PMI、09年以来の最低から改善。
(作成:My Big Apple NY)
マークイットのクリス・ウィリアムソン主席エコノミストは、結果を受け「製造業PMIは6月に上向いたが、4~6月期ベースでは過去6年間で最低」と振り返る。雇用が改善したとはいえ「一時的であると考えられ、脆弱な企業信頼感において採用活動は明らかに抑制されている」と指摘。BREXIT問題もあり、「向こう2ヵ月間の経済指標は金融当局者にとって非常に重要」と慎重なトーンで結んだ。
▽米5月建設支出、2ヵ月連続で予想外の減少
米5月建設支出は前月比0.8%減の年率1兆1430億ドルとなり、市場予想の0.6%増に反する結果となった。2010年7月以来で最大の減少率を示した前月の2.0%減(1.8%減から下方修正)を含め、2ヵ月連続で減少。内訳をみると住宅が±0%と前月の減少から横ばいに転じたものの、非住宅が1.3%減と2ヵ月連続で減少した。建設支出の前年比は2.8%増と、前月の4.5%増(速報値)を下回った。
民間は0.3%減と、前月の1.9%減と合わせ2ヵ月連続で減少した。ヘッドラインと同じく住宅が±0%だったものの、非住宅が1.3%減と2ヵ月連続で減少している。非住宅の内訳をみると11項目中、5項目で増加。前月の3項目(速報値ベース)を上回った。前月比ベースで娯楽が3.2%増と最も強く、次いで宿泊が1.9%増、輸送が1.7%増、通信が1.3%増、ヘルスケアが0.5%増だった。一方で減少が目立ったのは前月の急増による反動で宗教となり10.4%減、教育が4.5%減、製造業が1.9%減、商業が1.6%減、オフィスが0.4%減、電力が0.2%減となる。
公共は2.3%減と、前月の2.3%減を含め3ヵ月連続で減少した。住宅が0.7%減と3ヵ月連続で減少しただけでなく、非住宅も2.3%減と3ヵ月連続で減少。非住宅の12項目中、3項目が増加。前月の4項目を下回った。今回は保存/開発が7.3%増だったほか、オフィスも4.2%増、電力も0.3%増だった。反対に教育は5.4%減、廃棄処理が5.1%減、輸送が4.6%減、娯楽が4.3%減、ヘルスケアが1.0%減、公共安全が0.5%減、水道と高速道路/道路が0.2%減、商業が0.1%減だった。
バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受け「民間の一戸建てが3ヵ月連続で減少したため民間の住宅が弱かったほか、民間の非住宅も前月に続いて減少した」と指摘。住宅投資だけでなく、公共投資も減速しており「企業の構造物投資だけでなく、州・地方政府の支出も鈍化する見通し」と振り返る。過去分の下方修正もあり、4~6月期の住宅投資をめぐっては「前期比年率3.7%減」と予想。そのほか構造物投資や政府支出の弱含みも考えられ、米6月新車販売台数の減速もあり、4~6月期国内総生産(GDP)予想につき「前期比年率2.8%増から2.6%増」へ引き下げた。
アトランタ地区連銀のGDP予想は、米4~6月期GDPの予想を従来の2.7%増から2.6%増へ下方修正した。NY連銀は前週と変わらず4~6月期予想につき2%付近の2.1%増、7~9月期の予想を2.2%増とした。
――米6月ISM製造業景況指数は予想外に明るい結果を叩き出した半面、米6月マークイット製造業PMI・確報値は下方修正され芳しくなりません。米5月建設支出も建設活動の勢いが失われた様子を浮き彫りとさせ、2015年4~6月期GDPのような3.9%増が遠い状況。奇しくもBREXITが与える企業収益や個人消費への動向も不透明であり、楽観は禁物でしょう。
(カバー写真:eltpics/Flickr)
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