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米7月雇用統計・NFPは2ヵ月連続で20万超え、9月利上げ観測再燃

by • August 5, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off3054

July Jobs Report Puts September Rate-Hike On The Table.

米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比25.5万人増と、市場予想の18.0万人増を大幅に上回った。ホリデー商戦でかさ上げされた2015年10月以来の高水準だった前月の29.2万人増(28.7万人増から上方修正)に続き、2ヵ月連続で見事な急増を果たす。過去2ヵ月分では、1.8万人引き上げられた(5月分は1.1万人増から2.4万人増へ上方修正)。5〜7月期平均は19.0万人増と4〜6月期の15.3万人増を超えつつ、1−3月期の19.6万人増や2015年平均の22.9万人増以下となる。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が21.7万人増となり、市場予想の17万人増を超えた。前月の25.9万人増(26.5万人増から下方修正)に届かなかったとはいえ、2010年2月以来の減少を記録した5月の0.1万人減(0.6万人減から上方修正)を大きく巻き戻している。民間サービス業が20.1万人増と前月の25.4万人増(25.6万人増から上方修正)に続き20万人の大台を保った。セクター別動向では久々に専門サービスがトップに立ち、ベスト3常連の娯楽/宿泊が2位だったほか3位に政府が入った。通信大手ベライゾンのストライキ明けで6月に急増した情報は横ばいにとどまり、元の低調なペースへ戻した。

(サービスの主な内訳)
・専門サービス 7.0万人増>前月は5.3万人増、3ヵ月平均は5.2万人増
(そのうち、派遣は1.5万人増<前月は2.1万人減、3ヵ月平均は±0万人)
・娯楽/宿泊 4.5万人増<前月は5.4万人増、3ヵ月平均は4.8万人増
(そのうち食品サービスは2.1万人増、4〜6月と同じく2015年平均の3.0万人増から下振れ)
・政府 3.8万人増>前月は3.3万人増、3ヵ月平均は3.2万人増

・教育/健康 3.6万人増<前月は5.8万人増、3ヵ月平均は4.7万人増
(そのうち、ヘルスケア/社会福祉は4.9万人増<前月は5.4万人増、3ヵ月平均は4.8万人増)
・金融 1.8万人増>前月は1.5万人増、3ヵ月平均は1.6万人増
・小売 1.5万人増<前月は2.6万人増、3ヵ月平均は1.4万人増

・輸送/倉庫 1.2万人増>前月は0.7万人減、3ヵ月平均は0.3万人増
・その他サービス 0.3万人増<前月は1.2万人増、3ヵ月平均は0.2万人増
・卸売 0.2万人増>前月0.1万人増、3ヵ月平均は0.1万人減

・公益 0.1万人増<前月は0.3万人減、3ヵ月平均は±0万人
・情報 ±0万人<前月は4.2万人増、3ヵ月平均は±0人

財生産業は1.6万人増と、前月の0.5万人増を超え2ヵ月連続で増加した。米7月チャレンジャー人員削減予定数の通り、鉱業が引き続き減少。米7月ISM製造業景況指数で雇用が分岐点割れに転じたものの、製造業や建設はプラスを保った。

(財生産業の内訳)
・建設 1.4万人増>前月は0.3万人減と2ヵ月連続で減少、3ヵ月平均は0.2万人減
・製造業 0.9万人増<前月は1.5万人増、3ヵ月平均は0.8万人減
・鉱業/伐採 0.7万人減、減少トレンドを維持(石油・ガス採掘は2000人減)=前月は0.7万人減、3ヵ月平均は0.8万人減

6月に続き、7月のNFPは20万人増オーバーの快挙。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.3%上昇の25.69ドル(約2600円)と、市場予想に並んだ。前年比は2.6%の上昇となり、こちらも市場予想並びに前月値通りで、2009年7月以来の力強さを維持した。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想に並び6月まで5ヵ月続いた34.4時間を上回った。財生産業の平均労働時間は4ヵ月連続で、40.3時間。2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間から、乖離を維持している。

失業率は6月に続き4.9%となり、市場予想の4.8%を上回った。リーマン・ショック以前にあたる2007年11月以来の水準へ急低下した5月の4.7%を超えたままだ。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2016年見通しを上回る。マーケットが注目する労働参加率は62.8%と、前月の62.7%から改善。なお、2015年9〜10月は62.4%と1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比1.3万人減となり、前月の34.7万人増から小幅ながら減少に転じた。雇用者数は42.0万人増となり、前月の6.7万人増と合わせ2ヵ月連続で増加。失業者の減少に加え雇用者数が増えたため、労働参加率の改善しつつ失業率の上昇を抑えた。就業率は59.7%と、前月の59.6%から5月の水準へ戻している。とはいえ、金融危機以前の水準を下回ったままだ。

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全失業率は9.7%となり、金融危機前にあたる2008年4月以来の最低だった前月の9.6%から上昇に転じた。失業期間の中央値は11.6週となり、年初来で最低だった前月の10.7週から延びている。平均失業期間は前週の27.7週を上回る28.1週で、2009年9月以来で最短だった5月の26.7週も超え。27週以上にわたる失業者の割合も26.6%と、6月の25.8%並びに2009年3月以来の水準に低下した5月の25.1%を上回った。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.2%増の1億2389万人と2ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.5%増の2760万人と、5ヵ月ぶりに増加。増減数ではフルタイムが30.7万人増、パートタイムは15.0万人増となる。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は週平均労働時間が34.5時間と34.4時間から延びた結果、前月比で0.5%上昇した。労働時間の長さに加え平均賃金が堅調で、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は、前月比0.8%上昇し5〜6月を上回った。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-×
今回は9.7%と、2008年4月以来の低水準を示した前月の9.6%から上昇した。不完全失業者数は前月比1.7%増の594.0万人だった。

2)長期失業者 採点-×
失業期間が6ヵ月以上の割合は全体のうち26.6%と、前月の25.8%並びに2009年3月以来で最低を更新した6月の25.1%から上昇。平均失業期間は28.1週と、前月の27.7週から長期化し、2009年9月以来の低水準だった6月の26.7週からも延びた。6ヵ月以上の失業者数は前月比2.1%増の202.0万人と直近で最低を更新した5月の188.5万人から2ヵ月連続で増加した。

3)賃金 採点-○
今回は前月比0.3%上昇で6月の0.1%を超えつつ、前年比は6月と同じく2.6%上昇し2009年7月以来の高水準を達成した。週当たりの平均賃金は、前年同月比2.3%上昇の886.31ドル(約8万9500円)と、6月と同じ伸びを示す。生産労働者・非管理職は前月比0.2%上昇の21.59ドル(約2200円)円で、前年比は2.6%上昇。週当たりの平均賃金も前年同月比2.6%上昇となり、727.58ドル(約7万3500円)だった。5〜6月とは異なり、非管理職・生産労働者の賃金の伸びは管理職を含めた全体と遜色ない結果を迎えている。

非管理職・生産労働者の平均時給、管理職を含む全体の伸びに並ぶ。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-○
今回は62.7%となり、前月の62.6%から上昇。1977年9月以来の低水準だった2015年9−10月の62.4%から一歩遠ざかった。軍人を除く労働人口は0.3%増の1億5930万人と、2ヵ月連続で増加。非労働人口は0.2%減の9433万人と2ヵ月連続で減少した。労働参加率が上昇したように、労働力の回復がみられる。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番で知られるジョン・ヒルゼンラス記者ではなくデビッド・ハリソン記者の署名による「Fedは利上げの道筋を維持(WSJ Analysis: Jobs Report Keeps Fed on Track for Rate Increase)」と題した記事を配信。米4〜6月期国内総生産(GDP)速報値は期待外れだったものの米7月雇用統計で米経済失速への懸念が後退し、早ければ9月20〜21日開催のFOMCで追加利上げを行うと伝えた。

FF先物市場をみると、利上げ観測の高まりを示す。9月利上げ織り込み度は前日の9%から2倍の18%へ上昇。米6月雇用統計発表時点とは一線を画し、利下げは全く織り込まれていない。

バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受け「9月利上げの見通しを維持する」とした。次の焦点は「8月26日予定のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長によるジャクソン・ホールでの講演」との見解を寄せる。

——米7月雇用統計・NFPは予想外に力強い伸びを遂げ、9月利上げ派にエールを送りました。賃金の伸びも申し分なく米7月新車販売台数が力強く切り返しただけあって、4〜6月に続き個人消費が成長を牽引する期待が膨らみます。労働参加率が上昇しながら、失業率が前月から横ばいだったことも、心強い。S&P500が高々と舞い上がり、ザラ場で最高値を更新するはずです。

12月利上げ派の筆者があえて疑問符をつけるならば、長期失業者や不完全失業率ですね。7月は6月からわずかながら弱含みました。さらに、季節調整マジックが気掛かりです。7月の民間就労者数を振り返ると8.5万人増にとどまり、季節調整済みの21.7万人増を大きく下回ります。特に今年は季節調整での上振れが大きい。5月の民間就労者数も季節調整前では66万人増だった一方で季調後に0.1万人減へ急減するなど、ッ調整段階で大いに修正が加わるというのはよくある話でもあります。ただ、7月は夏休みや自動車工場のモデルチェンジといった季節要因が加わりやすい事情も重なり、留意しても損はないでしょう。

(カバー写真:City Year/Flickr)

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