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米8月新車販売台数、スローダウンは金利上昇が背景か

by • September 2, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2156

New Car Sales Slow Down In August.

ワーズオートが発表した米8月新車販売台数は、年率換算で前月比8.0%増の1691万台と市場予想の1720万台を下回った。2015年10月以来の1800万台に接近した前月の1770万台から減速を示す。8月はNY連銀のダドリー総裁をはじめ、9月利上げに言及する米連邦公開市場委員会(FOMC)関係者が相次いだため金利が上昇し、需要を押し下げたとみられる。営業日が2015年8月と変わらなかっただけに、外部環境の変化を感じさせる。なお、ワーズオートの数字は米国内総生産(GDP)の算出に使用される。

オートデータが発表した米8月新車販売台数は、前年同月比0.7%増の152万2297台だった。前月の151万3997台からも、増加している。年率ではワーズオートと同じく1700万台と前月の1788万台を下回った。米4~6月期上級融資担当者調査では自動車ローンの融資条件の緩和より引き締めが多かった影響が、ここで現れた可能性を示唆したと言えよう。なお2015年9~11月に2000年以来となる1800万台を突破したため、2015年は前年比5.7%増の1747万台と2000年に樹立した1735万台を突破し過去最高を塗り替えた。

ケリー・ブルー・ブックによると、8月の平均販売価格は前年同月比2.6%上昇の3万4143ドル(約340万円)となり、7月の2.5%を小幅に上回った。前月比では±0%で、7月の0.2%以下にとどまり上昇を2ヵ月で止めている。メーカー別の平均価格を前月比でみると、6~7月に反し上昇が優勢。排ガス不正問題に揺れるVWが0.2%上昇し、4ヵ月ぶりに上向いた。その他GMとスバルが0.5%上昇し、ホンダは0.4%上昇、日産は0.3%上昇し、トヨタは0.1%上昇した。下落したメーカーはフィアット・クライスラーで0.4%の低下、フォードで0.2%の低下となる。前年比ではVWのみ3.9%下落した程度で、その他は軒並み上昇した。

kbb
(出所:Kelley Blue Book)

2016年の新車販売台数につき、自動車価格情報サイトのトゥルーカーは「1800万台」を予想する。ただし、伸び率は3%台とし、2015年の5.7%を下回る見通しだ。全米自動車協会は「1770万台」となる。いずれの数字も、2015年を超える公算だ。

8月の単月動向をメーカー別でみると、米国のかつてのビッグ3だったGM並びにフォード、クライスラーがそろって市場予想に届かず。日本勢も全て市場予想を下回り、全体的に減速感は否めない。車種ではトラックをはじめスポーツ多目的車(SUV)、セダンや小型車など総じて軟調だった。ガソリン価格は2月に一時1.724ドルと2004年3月以来の安値をつけた後、6月に一時2.399ドルまで上昇。その後は原油先物が40~50ドルのレンジで推移するなか、ガソリン価格も8月に2.150ドルまで調整が入った。

以下、米国をはじめメーカー別動向。

【GM】
GMは前年同月比5.2%減の25万6429台となり、市場予想の4.9%減より下げ幅を広げた。4ヵ月連続で減少している。小売販売台数も5.4%減の21万2915台で、13ヵ月ぶりに減少した6月に続き、2回目の減少を示す。新車販売台数での4大ブランド別では1ブランドのみ増加し、7月の3ブランドを下回った。小売販売台数もキャデラックを除き、3ブランドで減少している。2016年通期の新車販売台数は6月に1720万台から1730万台を上方修正した水準を維持しつつ、過去最高を達成した2015年以下を見込む。新車販売台数の詳細は、以下の通り。

・キャデラック 3.9%増の1万6346台、3ヵ月連続で増加
→SUVで売れ筋の「エスカレード」が5.5%増の1867台と3ヵ月連続で増加したほか、セダン「ATS」が1.1%増の2477台、「XTS」が47.9%増の2264台と支えた。小売販売台数は0.3%増の1万3990台だった。

・ビュイック 2.7%減の2万1678台、過去6ヵ月間で5回目の減少
→牽引役の「リーガル」は52.1%増の2205台と力強かったものの、主力の「エンスレーブ」が29.3%減の5227台、「アンコール」も7.0%減の5843台とそれぞれ減少した。小売販売台数は12.4%減の1万7124台と、減少に転じた。

・シボレー 2.7%減の17万5965台、過去5ヵ月で4回目の減少
→SUVの「エキノックス」が39.4%減の1万5273台と、単月で過去最高した前月から減速した。「シルバラード」も4.7%減の5万2408台と3ヵ月連続で減少。その他、小型車の「マリブ」が4.7%減の1万6723台と弱い。セダンの「インパラ」も42.5%減の5684台と減少率が大きかった。小売販売台数は2.7%減の14万2656台で、3ヵ月ぶりに減少した。

・GMC 14.0%減の4万2440台、前月から減少に反転
→SUVの「アルカディア」が35.0%減の6101台と、4ヵ月連続で2桁減だった。「テレイン」も35.0%減の6004台と弱い。主力の「シエラ」すら17.7%減の1万7478台と、3ヵ月ぶりに増加に転じた前月から再びマイナスに落ち込んでいる。小売販売台数は12.8%減の3万9415万台と、前月から減少に反転した。

【フォード】
フォードは前年同月比8.8%減の21万3411台となり、市場予想の8.2%減より弱い結果となった。2大ブランド別では、フォードが減少した一方でリンカーンは増加した。なお同社は1月、日本とインド市場から年内に撤退を決定した。詳細は、以下の通り。

・フォード 9.0%減の20万5239台、2ヵ月連続で減少
→アルミ製ボディのトラック「Fシリーズ」が6.1%減の6万6946台と、2ヵ月連続で減少した。SUVも下振れし「エクスプローラー」は15.5%減の1万8924台と2ヵ月連続で2桁減を示す。「エスケープ」も2.8%減の2万8061台と前月に続き減少した。小型車も振るわず「フォーカス」が27.9%減の1万1772台と4ヵ月連続で減少、「フュージョン」も34.6%減の1万9052台と2ヵ月連続で減少した。小型SUVの「エッジ」も5.3%減の1万1204台だった。

・リンカーン 7.0%増の9243台、7ヵ月ぶりに減少した前月から増加
→新型「MKZ」が7.1%増の2754台だった一方、新型「MKS」は41.1%減の325台と9ヵ月ぶりに減少した。

【フィアット・クライスラー】
フィアット・クライスラー・オートモビルは前年同月比2.4%増の19万6756台となり、市場予想の5%増に及ばなかった。もっとも前年比プラスは77ヵ月連続となる。5大ブランド別では3ブランドで増加し、前月の2ブランドから増加した。詳細は、以下の通り。

・ジープ 12%増の8万6468台、34ヵ月連続で増加
→単月ベースでは、2013年11月以来続く過去最高をたどる。「チェロキー」が41%増の2万3932台と牽引したほか、「グランド・チェロキー」も12%増の1万8409台など、2桁増が目立つ。結果、6車種中では4車種が増加し、前月の5車種から減少している。

・ドッジ  5%増の4万4340台、過去5ヵ月間で2回目の増加
→主力の「ジャーニー」が40%増の1万1732台だったほか、「キャラバン」も2%増の1万572台と2桁増から鈍化しつつ堅調だった。

・ラム 2%増の4万4426台、3ヵ月連続で増加
→主力の「ラム」が横ばいの4万202台と増加を2ヵ月で止めた半面、「プロマスター・バン」が32%増の3234台だった。

・クライスラー 22%減の1万8753台、7ヵ月連続で減少
→新型「パシフィカ」が7559台と押し上げた。ただしミニバン「タウン・アンド・カウンティ」が75%減の1809台と3ヵ月連続で減少したほか、セダンの「200」も66%減の4210台と弱い流れを保つ。

・フィアット 21%減の2732台、8ヵ月連続で減少
→「500」や「500L」などが軒並み2桁減を示したほか、新型「500X」も15%減の898台だった。

自動車メーカーのシェアは、GMがトップを維持しつつフォードとトヨタが14.1%で2位に並ぶ。

USA auto brand market share chart August 2016
(出所:Good Car Bad Car)

【トヨタ】
トヨタは5.0%減の21万3125台と市場予想の0.4%減より下げ幅を拡大させた。4ヵ月連続で減少している。ブランド別では、トヨタとレクサスが2ヵ月連続でそろって減少。営業日数が昨年同月と変わらないため、営業日ベースでも5.0%減少した。詳細は、以下の通り。

・トヨタ 4.6%減の18万2187台、4ヵ月連続で減少
→引き続きSUVやトラックが牽引し、日本では来春に販売・生産を打ち切る計画のSUV「RAV4」が8.6%増の3万3171台と11ヵ月連続で単月での記録を塗り替えた。「ハイランダー」も12.2%増の1万4966台と健闘しているセダンでは「カローラ」が3.1%減の3万741台と3ヵ月連続で増加し、「カムリ」に至っては12.6%減の3万2864台と3ヵ月連続で減少した。

・レクサスは7.6%減の3万938台、6ヵ月連続で減少
→SUVやトラックは1.6%増の1万8004台で、4車種中全て増加。一部の車種は単月で過去最高を達成した。反対に乗用車部門は23.9%減の1万2934台で、7車種中全て減少している。

【ホンダ】
ホンダは前年同月比3.8%減の14万571台となり、市場予想の1.0%増に反し減少した。ブランド別では、ホンダが2ヵ月連続で増加した半面、アキュラは、2ヵ月連続で減少した。詳細は、以下の通り。

・ホンダ 3.5%減の13万325台、3ヵ月ぶりに減少
→SUVの「CR-V」が5.0%増の3万6517台と前月に続き過去最高を更新。セダンはまちまちで「シビック」が2.4%増の3万2807台と支えた半面、「アコード」は26.4%減のの3万115台だった。

・アキュラ 7.0%減の1万4246台、3ヵ月連続で減少
→主力の「MDX」が8.1%増の5131台だったものの、「RDX」が3.6%減の4207台と足を引っ張ったほかその他の減少が響いた。

【日産】
日産は6.5%減の12万4638台となり、市場予想の0.6%減より落ち込んだ。2大ブランドでは、それぞれ減少に反転。日産は2ヵ月連続、インフィニティは5ヵ月ぶりに減少している。詳細は、以下の通り。

・日産 6.9%減の11万4199台、3ヵ月ぶりに減少
→単月で過去最高を更新。SUV・トラックで主力の「ローグ」が19.2%増の3万2979台となり、クロスオーバーと共に前月に続いて過去最高を達成した。セダン「マキシマ」も前月に続き42.7%増の6064台と好調。しかし主力のセダン「アルティマ」が39.2%減の1万9646台だったほか、SUV「パスファインダー」も17.9%減の5794台などその他の車種で減少が目立つ。

・インフィニティ 1.8%減の1万439台、2ヵ月連続で減少
→SUVの「QX60」が18.2%減の3268台と5ヵ月ぶりに減少し、「QX50」の397.9%増の1200台の効果を打ち消した。セダンは「Q50」は2.4減の3745台を示すなど、軒並み減少した。

その他の海外メーカーは、以下の通り。

・フォルクスワーゲン(VW)が9.1%減の2万9384台
→排ガス不正が発覚した2015年9月、および同年10月は値下げ効果もあって小幅な増加にとどまったが、同年11月にガソリン車にも火種が及んだ影響からか以降は9ヵ月連続で減少。ただしアウディが2.5%増の1万9264台と増加トレンドをたどり、グループ全体では4.5%減の4万9126台へ下げ幅を縮めた。

・ヒュンダイは±0%の7万2015台。
・キアは7.9%減の5万4248台と4ヵ月ぶりに減少した。

・テスラ(推計値)は75.0%増の3500台
→ガソリン価格が上向くなかで快走。6月末に自動運転中(オートパイロット)の衝突事故が発生したものの、スピードを加速させて運行していた事情などが明らかになるなかで前月の65%増から伸びを広げた。

自動車メーカーからディーラーへの1台当たりインセンティブは前年同月比7.7%上昇の3331ドルで、前月の0.2%下落から上昇に転じた。前年比での伸び率は高級車市場でメルセデス・ベンツを追走中のBMWが26.1%上昇しトップを維持し、次いでVWが23.9%、スバルが18.5%と並んだ。一方で、ホンダが最大の下落幅となり17.4%落ち込み、その他キアが6.8%下落、ダイムラーが1.6%下落した。

truecar
(出所:Truecar)

高級車部門別ランキングは、以下の通り(%は全て前年比)。今回、高級車御三家のメルセデス・ベンツ、レクサス、BMWがトップ3を維持した。1位はメルセデス・ベンツで変わらず。1月に3位の座をビュイックに譲ったBMWはインセンティブを引き上げ販売台の維持に努めたものの、7月に続きレクサスに追撃され3位に転落した。

1位 メルセデス・ベンツ 3.0%増の3万1556台
→1~7月に続き、首位を堅持した。年初来では1.0%増の24万1293台でトップに君臨している。2015年は、4.7%増の37万2977台でトップ。2013年は1位だったが、2014年ではBMWに1位を明け渡していた。

2位 レクサス 7.6%減の3万938台
→1~3月の2位から、4~6月にBMWに2位の座を奪われた後で7月に続き2位を堅持した。年初来では5.3%減の21万392台となり、BMWとの差を数百台から広げた。2015年は10.7%増の34万4601台で3位。2011年まで11年間連続で首位を飾ったが、東日本大震災後に順位を落とし2014年、2013年、2012年に続き3位にとどまる。

3位 BMW 8.3%減の2万5531台
→1月はまさかのトップ3圏外で始まり4~6月は2位に立ちつつ、2~3月、7月に続き3位に甘んじた。年初来では8.3%減の20万4744台となり、7月に続きここでも3位となる。2015年は1.8%増の34万6023台で、首位の座を宿敵メルセデス・ベンツに明け渡していた。2014年では1位、2013年は2位だった。

4位 ビュイック(GM)2.7%減の2万1678台
→7月に続き4位だった。年初はBMWを振り切って3位へ急伸したものの、以降はトップ3圏外へ戻す。年初来では0.4%減の14万8845台 と4位を保った。2015年も2.6%減の22万3055台で4位だった。

5位 アウディ(VW)2.5%増の1万9264台
→VWショックに揺れるなか、5~6月の4位を経て7月に続き5位。一時期の7位からは回復している。年初来では3.5%増の13万4562台で、5位を維持した。2015年は11.1%増の20万2202台で、5位だった。

6位 キャデラック 3.9%増の1万6346台
→6~7月と変わらず。年初来では6.2%減の10万3918台で、ホンダに続き7位となる。2015年は2.6%増の17万5,262台で、7位だった。

7位 アキュラ 7.0%減の1万4246台
→6~7月と変わらず。年初来では8.9%減の10万6914台で6位を堅持。2015年は5.6%増の17万7165台で6位に収まっていた。

8位 インフィニティ 1.8%減の1万439台
→2月まで8ヵ月連続で8位を経て、3月に7位へ浮上した後で4~7月に続き8位にとどまった。年初来では、±0%の8万5362台で8位となる。2015年も13.8%増の13万3,498台で8位だった。

新車販売台数:モデル別ランキング(%は前年同月比)で、今回は7月と登場車種は変わらず。順位が一部で移動した程度だった。前年で減少した車種は5つで、7月の3つから増加した。

1位 Fシリーズ(フォード)6.1%減の6万6946台、前月も1位
2位 シルバラード(GM)4.7%減の5万2408台、前月も2位
3位 ラム(フィアット・クライスラー)11.3%減の4万202台 前月も3位
4位 CR-V(ホンダ)5.0%増の3万6517台、前月も4位
5位 Rav4(トヨタ)8.6%増の3万3171台、前月は9位

6位 ローグ(日産)19.2%増の3万2979台、前月も6位
7位 カムリ(トヨタ)12.6%減の3万2864台、前月は5位
8位 シビック(ホンダ)2.4%増の3万2807台、前月は7位
9位 カローラ(トヨタ)3.1%減の3万741台、前月は10位
10位 アコード(ホンダ)26.4%減の3万115台、前月は8位

SUV版:新車販売台数、ブランド別ランキング(%は前年同月比)は以下の通り。今回はスバルの躍進が目立つ。一方で7月に7位だったフィアット・クライスラーの「ジープ・ラングラー」のほか、10位だったトヨタの「ハイランダー」が圏外へ脱落した。前年比で減少した車種は7つで、前月の4つから増加した。

1位 CR−V(ホンダ)5.0%増の3万6517台、前月も1位
2位 RAV 4(トヨタ)8.6%増の3万3171台 前月は3位
3位 ローグ(日産)19.2%増の3万2979台、前月は2位
4位 エスケープ(フォード)2.8%減の2万8061台、前月も4位
5位 ジープ・チェロキー(フィアット・クライスラー)40.7%増の2万3932台、前月は9位

6位 エクスプローラー(フォード)11.4%減の2万980台、前月も6位
7位 フォレスター(スバル)11.9%増の1万9658台、前月は12位
8位 ジープ・グランドチェロキー(フィアット・クライスラー)11.7%増の1万8409台、前月も8位
9位 アウトバック(スバル)56.2%増の1万7358台、前月は13位
10位 エキノックス(シボレー)39.4%減の1万5273台、前月は5位

(カバー写真:GM

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