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トランプ次期大統領、財務長官にやっぱりムナチン氏を指名へ

by • November 30, 2016 • Latest News, NY TipsComments Off4012

Trump Chooses Steven Mnuchin As Treasury Secretary.

・2008年の米大統領・民主党予備選で、クリントン候補を支援
・映画“アメリカン・スナイパー”、“マッドマックス 怒りのデスロード”
・サブプライム危機

この3つのキーワードで、どなたを思い浮かべるでしょうか?“トランプ次期大統領”、“ゴールドマン・サックス”、“財務長官”の言葉が加われば、もうお分かりですね。はい、トランプ氏に米財務長官に指名される方針が固まったティーブン・ムナチン氏です。日本語では、ムニューチン氏とも呼ばれていますね。

同氏は53歳で、ユダヤ系。父ロバートに続き1985年にゴールドマン・サックスに入社し、頭角を現したウォール街出身者です。GSが上場した当時に富裕層の仲間入りを果たし、2002年にGSを退社するとソロス・ファンドに在籍、2004年にはジョージ・ソロス氏の支援を得てGSの仲間と共にヘッジファンドであるデューン・キャピタル・マネジメントを立ち上げます。デューン・キャピタルを設立してからは21世紀フォックスの資金調達契約を結び、映画界への進出。大ヒット作“アバター”など、数々の映画を成功に導きました。

2008年にはクリントン候補を支援しつつ、共和党にも献金してきたヘッジの達人でもあります。同じ年に直撃したサブプライム危機では、米住宅預金保険公社(FDIC)が損失を負担するとの合意の下で破綻したサブプライム層向け住宅ローン貸手インディマック、後のワンウェストを15億ドルで連邦政府から買収、結果として9億ドルの救済資金を取得しました。住宅ローン2014年にはワンウェストをCITグループに売却したものの、CITグループの株式を1%(1億ドル相当)保有しているといいます。

トランプ次期大統領とはNYの社交界で、親交を温めていたことでしょう。具体的に選対本部入りの決定打となったのは、NY州での予備選で勝利した4月の祝賀パーティーでした。トランプ氏は、その翌日に選対本部の財務責任者の職を要請したといいます。

トランプ氏とムナチン氏には、共通点が多いことも事実。トランプ家は不動産で財を成し、ムナチン氏の父ロバートは生き馬の目を抜くGSで生涯勤務しゼネラル・パートナーに上り詰め、退職前の年収は820万ドルに及びました。またトランプ氏の結婚歴が3回で現在の妻がモデル出身である通り、ムナチン氏も最初の妻と1999年に結婚し3人の子供に恵まれつつ2014年に離婚。現在はドラマやホラー映画を中心に活躍する女優ルイーズ・リントン(34歳)と婚約中です。

婚約者との一枚。ムナチン氏の「結婚式はホワイトハウスの芝生の上かな」というジョークが、真実になる?
Premiere Of Warner Bros. Pictures' "Jupiter Ascending" - Arrivals
(出所:Hollywood Reporter

ウォール街やハリウッドとの人脈が豊富であるムナチン氏、トランプ氏と対照的に一部で“nerd=オタク”と称されることも。また金融業界での手腕についてGSのブランクファイン最高経営責任者(CEO)から「敏腕(highflier)で、賢い(smart)男」との評価を受ける半面、政治には“novice=初心者”と厳しい声も聞かれているようです。

米上院での指名承認に立ちはだかる壁は、ウォール街との関係性でしょう。トランプ氏自身、クリントン候補をはじめ他の共和党大統領候補とウォール街とのパイプを猛批判し、特にGSを槍玉に上げていました。さらに、ムナチン氏がサブプライム危機をビジネスの機会と捉え、巨額の利益を得たという事実も承認に水を差しかねません。財務長官の座を射止めたとしても、ドッド・フランク法の廃止あるいは修正を目指す過程では風当たりが強まること必至です。

ムナチン氏のトランプ選対本部入りは、友人に衝撃を持って迎えられたといいます。しかし、当の本人はどこ吹く風だったとか。8月のブルームバーグ・ビジネスウィークとのインタビューでは、閣僚入りへの関心を明確に表明し「もし僕が政権入りしたら、誰も『なんで選対本部入りしたんだろう』なんて尋ねないさ」と答えていました。投資の世界で目利きを鍛えていただけに、その頃には勝利の臭いを嗅ぎ取っていたのかもしれません。

同じユダヤ系で金融コネクションもあり愛娘イヴァンカの夫、ジャレッド・クシュナー氏との関係も良好と考えられます。トランプ陣営としては、忠実な僕であるムナチン氏の指名は当然の帰結だったことでしょう。

なお商務長官への指名が確実視されるウィルバー・ロス氏については、こちらをご参照下さい。

(カバー写真:Emma Nairne/Flickr)

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