Trade Deficit Increase In October, Goods Exports Decrease.
米10月貿易収支、米10月製造業受注、米7~9月期労働生産性・確報値をおさらいしていきます。
米10月貿易収支は426.01億ドルの赤字となり、市場予想の420億ドルを超えた。前月の361.66億ドル(364億ドルから上方修正)を17.8%上回り、4ヵ月ぶりの水準へ拡大している。内訳をみると、輸出が前月比1.8%減(5ヵ月ぶりに減少)の1863.61億ドルと、3ヵ月ぶりの低水準。輸入は逆に1.3%増(過去5ヵ月間で3回目の増加)の2282.62億ドルと2015年8月以来の高水準となり、赤字拡大を促した。
国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、603.48億ドル。前月の541.54億ドル(修正値)を上回り、4ヵ月ぶりの600億ドル乗せとなる。なお2015年の貿易赤字は前年比4.6%増の5315億ドルと、2012年以来で最大を記録した。2014年の5050億ドルに続き、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加した。
バークレイズのブレリナ・ウルシ米エコノミストは、結果を受けて「予想通りモノの輸出が落ち込んだ」と指摘した。ただ、見通しを変えるほどでもなく米10~12月期GDP予想を従来の「2.1%増」で据え置いた。
貿易収支、今回は輸出が減少が響き赤字拡大。
輸出の内訳をみると、モノは前月比2.8%減と5ヵ月ぶりの減少を示した。ドル高の進行を背景に加え、食料品の輸出が大幅に落ち込んだ。項目別では食品・飲料のほか消費財、産業財、自動車が弱い。
(増加項目)
・サービス 0.2%増、3ヵ月連続で増加<前月は0.2%増
・資本財 0.1%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は3.7%増
(減少項目)
・食品/飲料 11.1%減、2ヵ月連続で減少>前月は12.0%減・消費財 5.4%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は4.6%増
・産業財 3.0%減、4ヵ月ぶりに減少<前月は1.4%増
・自動車 0.3%減、2ヵ月連続で減少>前月は3.6%減
前年比で輸出は食品・飲料がプラスを維持も他は伸び悩み。
輸入の内訳をみると、モノが1.5%増と前月の減少分を打ち消し過去5ヵ月間で3回目の増加を示す。原油価格が40~50ドルで安定推移するなか、量ベースでの石油製品輸入は3.3%減と前月の9.3%減に続き減少。金額ベースでも2ヵ月連続で下落した。石油製品を除いたモノの輸入は1.3%増と、前月の1.0%増から転じ過去5ヵ月間で3回目の増加を示す。消費財や資本財が支えた半面、自動車や産業財は弱含んだ。
(増加項目)
・消費財 5.0%増、5ヵ月ぶりに増加>前月は1.8%減
・資本財 2.2%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は3.3%減
・食品/飲料 0.2%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は±0%、
(減少項目)
・自動車 2.2%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は4.4%増
・産業財 0.9%減、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は4.2%増
国別でのモノの貿易収支動向をみると、中国への赤字は前月比4.2%減の311.09億ドルと2ヵ月連続で減少した。日本への赤字は22.9%増の59.29億ドルと、増加に反転。欧州全体への赤字額も22.8%増の145.55億ドルと、増加へ転じた。そのうち英国との貿易収支は前月の9.05億ドルの黒字から5.04億ドルの赤字へ反転した。
主な原油輸出国への貿易収支は、まちまち。原油先物の上昇を背景にカナダへの貿易収支は2.6倍の12.69億ドルの赤字と、2ヵ月連続で赤字となっている。メキシコへの赤字額も18.1%増の61.94億ドルと前月分の縮小を相殺した。石油輸出国機構(OPEC)への赤字も前月比31.3%の14.34億ドルへ拡大した。以下は、今回の貿易収支における輸出と輸入の内訳のほか各国ごとのモノの貿易収支動向。10月は貿易赤字のランキングで、ベトナムが韓国を抜いて6位に浮上した。輸出では、10位だった香港が9位に上昇、代わりにベルギーが10位に転落するなど、変化がみられている。
▽米10月製造業受注、コア資本財出荷は予想外の低下
米10月製造業受注は前月比2.7%増となり、市場予想の2.6%増を上回った。前月の0.6%増(0.3%増から上方修正)を含め4ヵ月連続で増加しただけでなく、2015年3月以来の力良い伸びとなる。民間航空機など輸送機器を除く場合は前月の0.8%増となり、前月の0.6%増から増加。コア資本財受注(民間航空機を除く非防衛財)は0.2%増と、速報値の0.4%増から下方修正されつつ前月から小幅ながら増加に転じた。
製造業出荷は0.4%増と、前月の0.9%増と合わせ3ヵ月連続で増加した。国内総生産(GDP)に反映されるコア資本財の出荷は0.1%減と速報値の0.2%増から下方修正され、3ヵ月ぶりに減少した。
製造業在庫は±0%と、前月の0.1%減(修正値)から転じた。出荷が増加したものの、在庫相当は前月の1.34ヵ月で変わらなかった。
――製造業受注でコア出荷が3ヵ月ぶりに減少に転じたため、米10~12月期GDPで企業の設備投資を表す機器投資が従来予想より鈍化する兆しが現れています。調整一巡が期待された在庫も増加せず。米大統領選でトランプ氏が勝利し、米株は高成長シナリオを念頭に過去最高値を更新していますが、企業の設備投資は期待先行で改善するのか見極めが必要です。
▽米7~9月期労働生産性・確報値は上昇、単位労働コストは低下
米7~9月期労働生産性・確報値は、速報値通り年率3.1%上昇し市場予想の3.3%を下回った。前期の0.2%の低下(0.6%の低下から上方修正)を超え、4期ぶりに上昇に転じている。内訳は、以下の通り。
・生産 3.6%、上昇トレンドを維持>速報値は3.4%、前期は.1.6%
・労働時間 0.5%、4期連続で上昇>速報値は0.3%、前期は1.7%
・時間当たり賃金 3.8%、2期連続で上昇>速報値は3.4%、前期は3.7%
・実質賃金 2.2%、2期連続で上昇>速報値は1.7%、前期は3.4%
・単位労働コスト(一定量を生産するために必要な労働経費を示す) 0.7%、3期連続で上昇>速報値は0.3%、前期は6.2%
労働生産が上方修正されたと同時に労働時間や実質賃金も引き上げられ、労働生産性は横ばいにとどまった。単位労働コストも、上方修正。7~9月期の前年比での労働生産性は前期の0.3%の低下から±0%へ戻したものの、1~3月期から続く低迷トレンドを維持した。労働生産性は2015年10~12月期まで10期連続で上昇した後、横ばいとマイナスを繰り返している。反対に単位労働コストは3.0%乗祖父、2014年1~3月期から2番目の高水準をつけた。企業の利鞘縮小の可能性を示唆する。
労働生産性、前年比はリセッション後は低迷継続。
――以上の結果を踏まえ、アトランタ地区連銀は米10~12月期GDPの予測値を従来の2.9%から2.6%へ下方修正されました。米10月貿易赤字の拡大で純輸出の寄与度低下が見込まれるほか、米10月製造業受注で機器投資、在庫投資が従来予想ほど上向かなかったためです。米7~9月期GDP改定値はブラジル悪天候を受けた大豆の輸出増加が純輸出の寄与度を高めたものの一連の特殊効果が剥落することもあり、2期連続での3%成長は期待できそうにありません。
(カバー写真:Stephanie Young Merzel/Flickr)
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