Wall Street Grades Trump’s First 100 Days.
5月2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、CNBCが今回も直前恒例のFedサーベイを行いました。ただし今回は無風が見込まれるため、トランプ米大統領就任100日記念と題した簡略版となっています。
ウォール街のエコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーなどが採点したトランプ政権の評価は、”C”=平均点でした。インフラ投資拡大、税制改革、規制緩和といったトランプノミクス=経済政策は”C+”となります。経済政策実施について”C-”というのは、税制改革の公表が4月26日まで待たなければならなかったことを踏まえると、やさしいですよね。
ちなみに、USAトゥデーでは「B」~「B-」と概ね高評価でした。それもそのはず、世界大恐慌以降でトランプ政権100日間のS&P500のパフォーマンスは歴代5位と上々だったのです。
(作成:My Big Apple NY)
経済指標では、以下の通り。オバマ政権1期目は金融危機直後、ブッシュ政権1期目はITバブル崩壊直後にあたります。こうしてみると。トランプ政権の成長率は季節調整要因を残しつつ景気回復期としては寂しいばかり。失業率はトランプ政権での低水準が目を引く一方、平均時給の伸びは2000年以降のトレンドラインに沿ったレベルでした。
話をウォール街が与えるトランプ政権の評価に戻して。
個別の経済政策をめぐっては、以下の通り。米大統領令でドッド・フランク法の見直しなどに着手しているだけに「規制緩和」、「税制改革」は“非常にポジティブ”で、「所得税減税」は“ポジティブ”を確保。3月24日に採決を断念した医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃・代替案移行は“マイナス”、通商政策は北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を離脱したため、“非常にネガティブ”となっていました。
経済政策の影響として、成長拡大を予想する回答は全体の86%を占めます。ところが、財政赤字の拡大を予想する声も90%に達しました。トランプ政権の経済性策で向こう10年間に連邦政府の債務が足元のGDP比77%から111%へ達するとの予測もあり、成長の代償に金利上昇が重く圧し掛かりかねません。
さて、トランプ米大統領と言えば政権メンバーと共に5月1日に様々な発言が飛び出していました。
トランプ米大統領
- 「インフラ計画を2、3週間内に公表へ」(CBSとのインタビュー)
- 北朝鮮の金正恩氏との会談に前向き=「条件適切」なら(ブルームバーグとのインタビュー)
- 超党派での包括的歳出法案合意に、「非常に満足」(同上)
- 「ウォール街の銀行分割を前向きに検討している」(同上)
- 米1~3月期GDP速報値は「実にひどい」が、「自分の責任ではない」(同上)
- 「ガソリン税増税」の可能性残す(同上)
- フィリピン大統領との会談を「楽しみにしている」(同上)
ペンス米副大統領
- 北朝鮮孤立へ「中国はさらなる行動を取る必要」(CBSとのインタビュー)
ムニューシン米財務長官(ミルケン・グローバル・インスティチュート・カンファレンス)
- 「為替に関する中国の最近の動きは米経済に恩恵」FOXインタビュー)(right now they are intervening in currency markets to make it more beneficial to us)
- ドルは「世界の準備通貨」
- 「中国に最も期待するのは北朝鮮関連での支援」
- 「超長期債、米国にとって完全に合理的となり得る」
- 「インフラ投資の財源を負債でまかなうことは望まない」
- 「GDP成長、3%回復には2年を要する」
- 「国境税は現状では機能せず」=公平貿易、財源確保狙う
- 「銀行株の上昇は私のおかげだ」
コーンNEC委員長
- 「ヘルスケア法案、下院は必要な票確保したと確信」(CBSとのインタビュー)
ロス米商務長官(ミルケン・グローバル・インスティチュート・カンファレンス)
以上を踏まえると、4つの焦点が浮かび上がってきます。
1)インフラ投資をまもなく発表、財源は燃料税増税の禁じ手も厭わず(1993年から燃料税は据え置き、ガソリンで1ガロン当たり18.4セントを維持)、超長期債の発行にも意欲
2)北朝鮮とは歴代米大統領のスタンスである「北朝鮮と直接関与せず」を変更する可能性も中国の出方次第か、米朝首脳会談の前にこの人が電撃訪朝も?
3)大手銀解体に着手も(銀行株は1日、発言を受けて上昇。大手銀でパフォーマンスの高い部門がさらに成長する期待を煽ったほか、中小銀行の競争力も意識)
4)NAFTA再交渉は継続、ただカナダ・メキシコ首脳との電話会談後に離脱する意思をトーンダウン、トランプ米大統領はインタビューでもNAFTA批判控える
トランプ米大統領の就任100日は、既に数々のドラマを生み出しました。医療保険制度改革(オバマケア)撤廃・代替案移行こそ最初は失敗したものの、ライアン下院議長から主導権をホワイトハウスが奪取し税制改革は政権主導で基本方針を表明するまでこぎつけています。インフラ投資拡大もこのまま政権主導で進めていく姿勢をちらつかせ、議会で多数派を握る共和党をいかに結束させるのか。次の100日で、1期目の命運が決まりそうです。
(カバー写真:Dano/Flickr)
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