Trump Could Decide To Remove Chief Strategist Bannon.
*バノン首席戦略官は現地時間の8月18日、辞任しました。
バノン首席戦略官の去就が、にわかに注目されています。
8月17日、ダウ274ドル安のトリガーを引いたのは国家経済会議(NEC)のコーン議長をめぐる辞任の噂でしたが、そのコーン氏を「毎日戦う」相手と語ったバノン氏がホワイトハウスを去る8人目(オバマ前政権の任命者を除く)となりそうです。
理由は2つ。1つは、左派系メディアのアメリカン・プロスペクトの独占インタビューです。
”国家主義者”とされるバノン氏は中国との貿易戦争や北朝鮮の軍事衝突はないと明言したほか、上記のようにコーン氏を名指しで批判し”現実派”と対立状態にあると明かしました。ここで思い出されるのが、7月31日に広報部長を解任されたスカムラッチ氏です。彼は7月27日、インタビューでプリーバス前首席補佐官を妄想型統合失調症、バノン氏にはそれ以上の言葉を用い、それはそれはcolorful=”えげつない”言葉でこき下ろしたのですよ。それから4日後、スカムラッチ氏が更迭されたのはご周知の通り。
バノン氏はインタビューで白人至上主義者と「無関係」で彼らを「負け犬」と批判していたため、政権のイメージアップの一環として受けた可能性を残すものの、スカラムッチ氏のように政権内の軋轢を赤裸々に語ってしまった代償は大きいかもしれません。
プリーバス前首席補佐官と同じ穴の狢になるのでしょうか。
(出所:Gage Skidmore/Flickr)
もう1つは、コーン氏の存在です。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が8月16日、バージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義と反対派の衝突に対しトランプ米大統領が明確に前者を批判しない点を捉え、娘婿のクシュナー上級顧問をはじめ政権内のユダヤ系が困惑していると報じていました。コーン氏は”disgust and deeply upset(反感を覚え深く動揺した)”状態と伝えたものです。その翌日には、コーン氏に近いビジネス関係者が辞任するよう圧力を掛けていると報じていました。まさに、コーン氏辞任の噂の火元というわけですが、本人が辞任を示唆したといった文章は挟み込まれていません。政権内を揺るがす、ペンもといキーボードを操作した攻撃と言えるでしょう。
この報道がコーン氏の辞任を促すかと言えば、逆でしょう。むしろ、コーン氏の面目は報道を受け多少なりとも保てたはずです。白人至上主義者と反対派「双方に非がある」と発言したトランプ米大統領と、一線を画したことになりますからね。
そのコーン氏と言えば、税制改革の司令塔とされるだけでなく、インフラ投資や金融規制の緩和でも重要な役割を担います。トランプ政権にとって、今辞任されるわけにはいきません。しかも戦略・政策フォーラムなど2つの助言機関の解散を余儀なくされ、インフラ諮問委員会まで設立を断念せざるを得なくなったのですから、ゴールドマン・サックスの前最高執行責任者として企業とのパイプを持つコーン氏が必要なのはまさに今。そのコーン氏を辞任させないよう、対立軸にあるバノン氏を更迭してもおかしくない。
白人労働者層の支持率に影響が及ぶリスクを残すものの、オバマケア撤廃・代替案移行で躓いたいま、税制改革が肝心要の政策であり失敗できませんから、トランプ政権が決断を下す可能性は小さくないでしょう。そうなった場合、政権内で現実派が実験を握り共和党と歩み寄る余地が生まれるのか注目です。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
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