Job Openings Rise But Hires Fall 2-Month In A Row.
米労働省が発表した米9 月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は609.0 万人と、市場予想の607.5万人を上回った。ハリケーン“ハービー”、“イルマ”等の直撃を受けたものの、8月の609.0万人(608.2万人から上方修正)とほぼ変わらず、過去3番目の高水準となる。米9月雇用統計の修正値に反し、力強い雇用増加の兆しをみせた。
一方で、新規採用人数はハリケーンの影響により前月比3.4%減の523.7万人と、2ヵ月連続で減少した。2006年11月以来の高水準をつけた7月の552.1万人を下回る水準を続けつつ、リセッションが開始した2007年12月時点の500万人という大台は24ヵ月連続で超えた。
離職者数は前月比0.6%減の524.0万人と2ヵ月連続で減少、過去6ヵ月間で4回目の減少を迎えた。5ヵ月ぶりの低水準となる。定年や自己都合による退職者は2.9%増の318.2万人と増加に転じ、2001年以降で3番目の高水準となる。解雇者数は4.4%減の170.3万人と3ヵ月連続で減少した。
求人数と新規採用者数は減少、両者の乖離は続く。
求人率は4ヵ月連続で4.0%と、統計開始以来の最高を維持した。民間が統計開始以来の最高である4.3%を維持したほか、政府も前月の2.2%から2.3%へ上昇した。
就業者に対する新規採用率は3.6%だった。2014年7月以来の低いレベルにとどまった5月の3.5%に近い水準を保つ。民間が4.0%と前月の4.1%以下だった半面、政府は前月の1.5%から1.6%へ上昇した。
自発的および引退、解雇などを含めた離職率は前月に続き3.6%だった。民間が前月の4.0%から3.9%へ低下しつつ、政府は1.5%で前月と横ばいだった。自発的離職率は2.2%と、前月の2.1%から上昇。解雇率は4ヵ月連続で1.2%となり、2000年12月に統計が開始してからの最低である1.1%に近い水準を保つ。
解雇者数は増加傾向である一方、離職者数も低水準を維持し労働市場のタイト化を表す。
――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中、7~8月に続き5項目となり、6項目を達成した2月には届いていません。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字です。
1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.0%
2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%
3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.2%
4)採用率—×
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.6%
5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 16.2万人増
6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 4.1%
7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 7.9%
8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 24.8%
9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.7%
――新規採用数はハリケーンの影響で減少したと考えられ、10月は雇用統計で明らかになった通り雇用増加を確認するのでしょう。ただ、引き続き企業が求める人材と応募者とのスキルギャップがあるようで、求人数と新規採用の乖離は継続。人材派遣会社マンパワーの調査では、2016年時点で調査対象企業の46%が人材不足に直面していると回答、4年ぶりの高水準でした。2006~16年のうち2008、09、10年を除く平均値42.5%も超えています。ベージュブックでここ数年指摘される通り特殊技能職が1位で電気技術や建設などが挙げられていました。次いで重機やトラックなどの運転手、3位に営業担当、4位に教師、5位にレストラン、ホテルの従業員が並びます。AIやIoTなど省力化テクノロジーが注目されているとはいえ実用化には時間が掛かるとみられ、景気減速に陥らない限り労働市場のタイト化が進むのでしょう。その割に賃金は上昇せず、FRB新議長に就任予定のパウエル氏は引き続き低インフレ対応に迫られそうです。
(カバー写真:Sheila in Moonducks/Flickr)
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