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米10月雇用統計・NFPは大幅改善も、平均賃金の伸びは鈍化

by • November 5, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off493

U.S. Economy Rebounds From September, But Wage Growth Slows.

米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比26.1万人増と、市場予想の31.2万人増に届かなかった。ハリケーン“ハービー”と“イルマ”の打撃により、大幅に伸びが減速した前月の1.8万人増(3.3万人減から上方修正)からは改善。2016年7月以来で最大の伸びを記録している。米10月ADP全国雇用者数からは、小幅に上回った。過去2ヵ月分は9月分だけでなく8月分も上方修正(16.9万人増→20.8万人増)、2ヵ月分で9.0万人の上方修正となる。8~10月期平均は16.2万人増となり、引き続き2016年の平均18.7万人増に及ばず。年初来では16.9万人増にとどまった。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比25.2万人減と、市場予想の30.1万人増を下回った。前月の1.5万人増(4.0万人減から上方修正)から大きく改善している。民間サービス業は21.9万人増と、2010年2月以来の減少となる前月の0.3万人減(4.9万人減から上方修正)から反転した。

セクター別動向では、ハリケーンの影響で9月に過去最大の減少幅を記録した娯楽・宿泊が前月分の減少を打ち消し、トップに返り咲いた。2位は前月3位だった専門サービスが入り、3位は前月1位だった教育・健康が並んだ。7~8月の2位から教育・健康がトップに浮上した。9月に2位だった輸送・倉庫は、大幅に伸びを縮小したものの増加基調を続けた。小売は前月の増加から一転して減少、ホリデー商戦で小売関連が臨時雇用計画を発表したものの、さえなかった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)
・娯楽・宿泊 10.6万人増>前月は10.3万人減、6ヵ月平均は1.2万人増
(そのうち食品サービスは8.9万人増、過去12ヵ月平均は1.9万人増)
・専門サービス 5.0万人増>前月は2.2万人増、6ヵ月平均は4.2万人増
(そのうち、派遣は1.8万人増>前月は0.8万人増、6ヵ月平均は1.0万人増)
・教育/健康 4.1万人増>前月は2.2万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち、ヘルスケア/社会福祉は3.4万人増>前月は0.8万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)

・その他サービス 1.2万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.7万人増
・政府 0.9万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・輸送・倉庫 0.8万人増<前月は2.5万人増、6ヵ月平均は1.1万人増

・卸売 0.6万人増<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・金融 0.5万人増<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
・公益 ±0万人=前月は±0人、6ヵ月平均は±0人

・情報 0.1万人減>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は0.4万人減
・小売 0.8万人減<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.4万人減

財生産業は前月比3.3万人増と、前月の1.8万人増(0.9万人増から上方修正)を上回った。3ヵ月連続で増加している。ハリケーンの復興需要を一因に建設が3ヵ月連続で増加したほか、製造業も3ヵ月連続で増加した。ただし、原油価格が50ドル台で堅調に推移するなかでも鉱業は2ヵ月で増加を止めた。

(財生産業の内訳)
・製造業 2.4万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・建設 1.1万人増=前月は1.1万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・鉱業・伐採 0.2万人減(石油・ガス採掘は400人の減少)<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.5万人増

NFP、ハリケーンの反動で2016年7月以降にて最大の伸びを達成。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比±0%上昇の26.53ドル(約3,020円)と、市場予想の0.2%を下回った。9月の0.5%にも届かず。前年比では2.4%の上昇となり市場予想の2.7%はもちろん2009年4月以来の力強さを遂げた前月の2.9%を下回った

週当たりの平均労働時間は34.4時間と、市場予想並びに前月と一致した。6~7月の34.5時間を下回ったままだ。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.4時間と、9月の40.2時間を超えた。ただし、7月の40.5時間には届いていない。

失業率は4.1%と、市場予想及び前月の4.2%を下回った。金融危機後以来で最低だっただけでなく、2000年12月以来の4%割れを視野に入れた。9月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2017年見通しをも下回る。マーケットが注目する労働参加率は62.7%と、2014年3月の高水準に並んだ前月並びに市場予想の63.1%以下に終わった。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比28.1万人減少し、2ヵ月連続で減少した。雇用者数は48.4万人減と、前月に反しマイナスを迎えた。結果、就業率は60.2%となり2009年1月以来の高水準を遂げた前月の60.4%を下回った。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.1%減の1億2,667万人と、わずかに減少した。パートタイムは1.5%減の2,724万人と、4ヵ月ぶりに減少。増減数では前月に続きフルタイムが2.3万人減、パートタイムは41.5万人減だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が増加したため週当たり平均労働時間が変わらなかったとはいえ、0.2%上昇し3ヵ月ぶりにプラスへ転じた。平均時給は前月比で横ばいだったが、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.2%上昇、2ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は7.9%と、前月の8.3%を下回り2006年12月の低水準に並んだ。不完全失業者は475.3万人と、前月の512.1万人から減少。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は5.0%と前月の5.1%を下回り、少なくとも年初来で最低を更新した。

2)長期失業者 採点-○
失業期間の中央値は9.9週と、前月の10.3週から短縮した。ただし、2008年11月以来の10週割れを達成した6月の9.6週を上回る水準を保つ。平均失業期間は26.0週と前月の26.8週から短縮も、2009年6月以来で最短だった4月の24.1週を超える水準を保つ。27週以上にわたる失業者の割合は24.8%と前月の25.5%から改善した。なお、4月は22.6%と2009年1月につけた低水準に並んでいた。

3)賃金 採点-×
今回は前月比±0%にとどまり前月の0.5%以下に終わった。前年比も2.4%上昇するにとどまり、2009年4月以来で最高の伸びだった2.9%から減速している。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比±0%上昇の22.22ドルと全従業員と変わらず。前年比は2.3%の上昇となり、全従業員の2.4%を下回った。非管理職・生産労働者の賃金は、2016年10月の流れが続き、引き継ぎ管理職を合わせた全体に追いつかない状況だ。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。

平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.7%と、2014年3月に遂げた高水準となる前月の63.1%を下回った。金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.5%減の1億6,038万人と、労働参加率が著しく改善したように3ヵ月連続で増加。非労働人口は1.0%増の9,539万人と前月から増加に転じた。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、デビッド・ハリソン記者の署名記事で「活況な労働市場、パウエル新FRB議長とFedに困難をもたらすか(Booming Labor Market Could Pose Challenge for Powell and the Fed)」と題した記事を配信。労働市場が示す通り米経済が高成長を続ければFedは引き締めペースを加速する必要が生じる半面、米株高と高成長を目指すトランプ政権から利上げ抑制への圧力を受ける可能性があると報じている。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストも、好調な労働市場を受けて12月12~13日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのFF金利見通しの中央値すなわちドット・チャートが「年3回ではなく、4回を見込む水準へ変更となる」と予想した。併せて、JPモルガンは2018年の利上げ見通しを「従来の3回から4回へ引き上げる」と結んだ。

——米10月雇用統計・NFPは娯楽・宿泊に代表される通り、ハリケーンでの減少幅が回復し、大幅増加となりました。平均時給は横ばいに転じましたが、逆に娯楽・宿泊という低賃金職が増加した結果、全体を押し下げたのでしょう。

失業率が低下したとはいえ、全体的に労働参加率が前月を下回っていた影響が大きい。

16~19歳:10月→34.8%、9月→35.8%と3ヵ月ぶりの高水準

20~24歳:10月→71.9%、9月→72.1%と2009年8月以来の高水準

25~29歳:10月→82.4%と9月に続き2009年7月以来の高水準、9月→82.4%

30~34歳:10月→82.4%、9月→82.5%と5ヵ月ぶりの高水準

35~39歳:10月→82.3%、9月→82.5%と5ヵ月ぶりの高水準

40~44歳:10月→83.4%、9月→83.5%と2010年5月以来の高水準

45~49歳:10月→81.6%、9月→82.4%と2012年10月以来の高水準

50~54歳:10月→78.9%、9月→79.0%と2012年5月以来の高水準

55歳以上:9月→39.8%、9月→40.1%、8月は40.2%と2013年9月以来の高水準

年齢別でみると、16~19歳や働き盛りの世代に含まれる45~49歳で下振れが目立ちます。とはいえ、働き盛りの男性の労働参加率は上げ渋りが続いていることに変わりありません。

25~54歳の男性の労働参加率は88.5%と、リセッション前の水準はおろか2008年9月当時の90.5%以下を継続。

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(出所:My Big Apple NY)

ベビーブーマー世代の引退要因が押し下げている説は否定できないものの、平均時給の伸び悩みと直結する課題としてパウエル新FRB議長に引き継がれることでしょう。

(カバー写真:Lou Stejskal/Flickr)

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