Weed Could Be An Unprecedented Solution To The Opioid Epidemic.
マリファナ入りのコーヒーを飲む――日本では考えられませんが、娯楽向けマリファナ使用が合法化されたワシントン州やコロラド州では可能です。アルコール飲料大手コンステレーション・ブランズは、新たな成長戦略としてそこに着目しました。同社はカナダのマリファナ生産会社キャノピー・グロースの株式を9.9%、1億9,100万ドル相当で取得することで合意。アルコールを含まないマリファナ入り飲料の開発・生産に乗り出す意欲満々です。
日本ではあり得ないマリファナ入りのコーヒーは商品化され、ブランドの種類も増加中。もちろん、購入するには法令に従い21歳以上でなければなりません。
(出所:Therapy Tonics & Provisions)
全米50州のうち、娯楽向けマリファナ使用を合法化させた州はカリフォルニアやコロラドなど8州と首都ワシントンD.C.で、医療用使用のみ合法化させたニューヨークやフロリダなどを含めると29州に及びます。コンステレーション・ブランズはいずれ全米でマリファナ入り飲食物が合法になると読み、先行投資を決定した格好です。足元では、2019年頃にカナダでマリファナ飲料物の合法化が見込まれるカナダが販売候補地となります。
日本人からしてみると、コンステレーションの新機軸は勇み足のように見えます。トランプ大統領は10月26日、オピオイド(アヘンから作られ種類としてモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、コデインなどを含む)系鎮痛剤の蔓延に対し非常事態宣言を発しました。訴訟社会を背景に医者が患者の求めに応じオピオイドを処方、過剰摂取につながり死者が増加し続けているためです。薬物過剰摂取による死亡者数は2009年に自動車事故での死亡者数を抜き1位へ浮上、2015年には5万2,404人と1999年の約3倍へ膨れ上がり、一部ではそのうちオピオイドが約3分の2を占めるとの試算もあります。トランプ米大統領だけでなく、イエレンFRB議長が懸念を寄せるはずです。
そのオピオイドに含まれる物質が処方可能(“スケジュールII~IIIなど”)である一方、マリファナは米司法省下の麻薬取締局が使用禁止に分類する“スケジュールI”の一つです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校スチュアート・アンド・リンダ・レズニック精神神経病院のストラウス院長が、マリファナの“スケジュールI”指定を「歴史的かつ政治的な背景に依拠し、科学的と言い難い」と指摘したところで、トランプ政権下では覆りようがないでしょう。全米50州が娯楽向けマリファナ使用を合法化することと同じくらい、難しいと言えそうです。
ただ、コンステレーション・ブランズは一縷の望みを残します。マリファナこそ、オピオイド蔓延の解決の鍵を握るというではありませんか。2016年時点でマリファナの過剰摂取での死亡例は皆無で、前述のストラウス院長もマリファナの中毒性はオピオイドやアルコールと比較して格段に低いと分析します。ミシガン大学メディカル・スクールのダニエル・クロウ教授のチームは、マリファナの代替使用によって利用者のオピオイド摂取量を3分の2に減らすことに成功しました。
マリファナがオピオイド対策に効果的な側面を持つ一方 、気管支炎や心臓発作などの副作用が認められていることも事実です。それでも、医療関係者の分析を基に各州政府が「毒をもって毒を制す」ならば、米国各地でマリファナ入り飲食物が店頭に並ぶ日はそう遠くない?日本では、全くもって考えられませんけどね・・。
(カバー写真:Cindy Shebley/Flickr)
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