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11月ベージュブック、FOMC議事要旨と異なり物価上昇を指摘

by • December 1, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off866

Beige Book Notes Stronger Price Pressures Unlike FOMC Minutes.

米連邦準備制度理事会(FRB)が11月29日に公表したベージュブック(10月前半から11月半までカバー)によると、米経済の拡大ペースは前回に続き「緩慢からゆるやか(modest to moderate)」で据え置いた。今回、引き続き労働市場の逼迫を指摘したほか、物価について前回より上昇の芽を感じさせる内容だった。11月FOMC議事録内容に反する記述となっている。セントルイス地区連銀がまとめた今回の詳細は、以下の通り。各地区連銀の名称で表記している。

<経済全般のセクション>

(今回)
・経済活動は、12地区連銀にわたって「緩慢からゆるやか(modest to moderate)」なペースで拡大し続けた。地区連銀の間では、見通しに「わずかながら改善(a slight improvement)」がみられた。

(前回)
・経済活動は拡大したが、「緩慢からゆるやか(modest to moderate)」なペースに分かれた。リッチモンドやアトランタ、ダラスは地域のほか輸送やエネルギー、農業などのセクターでハリケーン “ハービー”と“イルマ”による甚大な被害を報告した。

<個人消費>

(今回)
ホリデー商戦前、小売売上高と自動車の販売動向は「まちまち(mixed)」で、「概して横ばい(largely flat)」だった。しかしながら、見通しは概して「楽観的(optimistic)」である。NY地区連銀が「わずかな軟化(a slight softening)」を報告し、サンフランシスコ地区連銀がカリフォルニア州での山火事に伴う出荷量の「一時的減少(temporarily reduced)」を伝えたものの、多くの地区連銀は、輸送セクターでの「拡大を強調(highlighted growth)」していた。

(前回)
・個人支出は「鈍く拡大(rose slowly)」し、自動車売上高と観光支出は増加した。

<製造業、非製造業の活動>

(今回)
・全ての地区連銀は、製造業活動が拡大したと報告し、そのうちほとんどが「ゆるやかな(moderate)」伸びだった。

(前回)
・製造業活動と非金融サービスは、ほとんどの地域で「緩慢からゆるやかに(modestly to moderately)」拡大した。製造業関連企業の間では、回復基調が続くとの見方が優勢だったが、フィラデルフィアとセントルイスは「鈍化の兆し(signs of slowdown)」を指摘した。

<住宅市場>

(今回)
住宅不動産の活動は「抑制されたまま(remained constrained)」で、ほとんどの地区連銀は販売あるいは建設で増加をさほど確認せず。対照的に、非住宅不動産の活動は前回のレポートに沿い、「わずかに拡大した(slight growth)」。

(前回)
・住宅建設は「拡大し続け(continued to increase)」、商業施設の建設は概して「わずかに拡大(up slightly)」した。販売向けの住宅在庫が低水準にある状況が続き、多くの地域で住宅販売を押し下げているが、非住宅不動産活動は全体的に「わずかに拡大した(increase d slightly)」

<貸出需要>

(今回)
ローンの需要は「安定的からゆるやかに強まった(steady to moderately stronger)」。

(前回)
・全体的にローン需要は概して「安定(stable)からゆるやかに上昇(moderately higher)」した。

<農業、エネルギー>

(今回)
・サマリーでは表記なし。

(前回)
・エネルギーセクターでの伸びは、全体的に「わずかにゆるんだ(eased slightly)」。農業の状況は「まちまち(mixed)」で、一部の地域で収穫が予想を上回ったものの、商品先物価格が農家の所得を抑制し続けた。

<雇用と賃金>

(今回)
雇用の伸びは前回から「拡大し(increased)」、ほとんどの地区連銀は拡大ペースにつき「緩慢からゆるやか(modest to moderate)」と報告した。労働市場の逼迫は広がっている。ほとんどの地区連銀は、企業からあらゆる技能水準で条件を満たした人材確保が困難との指摘を受け、「一部の(several)」地区連銀は、適格な人材が見つけられない状況が採用計画を抑制するカギとも報告している。賃金野伸びは「緩慢あるいはゆるやか(modest or moderate)」なペースにとどまった。人材確保が困難な専門職、技術職、生産職では、賃上げが最も「顕著(notable)」だ。多くの地区連銀によれば、雇用主は賞与やその他の臨時ボーナスで雇用確保に努めているという。

(前回)
・雇用の伸びは概して「緩慢(modest)」で、ほとんどの地区連銀で「横ばいからゆるやか(flat to moderate)」に拡大した。多くの地区連銀は、企業にとって適切な人材確保が困難になっていると報告、特に建設や輸送、製造業での特殊技能職、一部のヘルスケアとサービスで顕著となっている。人材不足は、業績の伸びを抑える一因だった。一部地区連銀の企業は人材不足を挙げ、特に建設関連での人手不足はハリケーンの復興需要に伴うものだ。労働市場の逼迫にも関わらず、大部分の地区連銀における賃金圧力は「ごく緩慢からゆるやか(only modest to moderate)」にとどまった。しかし、複数の地区連銀は輸送や建設など一定のセクターでの「力強い賃上げ圧力(stronger wage pressures)」を挙げた。契約金や残業、その他賃金以外の支払いで従業員を引き留める努力が強まった。

<物価のセクション>

(今回)
物価は、前回のレポートから「強まった(strengthen)」。ほとんどの地区連銀は、販売価格につき「緩慢からゆるやかな(modest to moderate)」、仕入れ価格につき「ゆるやか(moderate)」なペースで上昇を指摘。特に、建設素材のコストはほとんどの地区連銀で上昇し、多くの地区連銀では木材価格の上昇やハリケーン後の復興に関わる「需要の高まり(increases in demand)」を挙げた。住宅不動産価格も、「概して上昇(generally increased)」した。輸送セクターでのコストも、上昇した。また「一部の地区(several Districts)」は、製造業の仕入れ価格上昇を報告。輸送と製造業の上昇は、多くの場合、消費者に「価格転嫁された(passed through)」。燃料価格も上昇し、複数の地区で原油と天然ガスの価格の上昇圧力を報告した。しかし、農業作物の価格圧力は「まちまちであり続けた(remained mixed)」。

(前回)
・物価は、前回のレポートから「緩慢に(modestly)」上昇した。複数の地区連銀は製造業の仕入れ価格での「上昇(increased)」を指摘したが、ほとんどの場合は販売価格に反映されなかった。小売価格は全般的に「わずかに上昇(increased slightly)」した。輸送やエネルギー、建設の素材価格はより「急速に(rapidly)」上昇し、複数の地区連銀ではハリケーン効果を挙げた。

経済活動に対する形容詞の登場回数、比較チャート。

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(作成:My Big Apple NY)

<地区連銀別、経済活動の形容詞>

・「緩慢」と表現した地区連銀、5行<前回は6行
フィラデルフィア(前回は“緩慢”→今回据え置き)
アトランタ(前回は“緩慢”→今回据え置き)
セントルイス(前回は“緩慢”→今回据え置き)
ミネアポリス(前回は“緩慢”→今回据え置き)
カンザスシティ(前回は“緩慢”→今回据え置き)

・「ゆるやか」と表現した地区連銀、5行>前回は4行
NY連銀(前回は“ゆるやか”→今回据え置き)
クリーブランド(前回”ゆるやか“→今回は据え置き)
リッチモンド(前回は“ゆるやか”→今回据え置き)
ダラス(前回は“ゆるやか”→今回据え置き)
サンフランシスコ(前回は”ゆるやか“→今回据え置き)

・「緩慢からゆるやか」と表現した地区連銀 1行=前回も1行
ボストン(前回は“緩慢からゆるやか”→今回据え置き)

・その他
シカゴ(前回は“緩慢”→今回“わずか”)
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(作成:My Big Apple NY)

<全体のキーワード評価>

総括並びに地区連銀のサマリーでみたキーワードの登場回数は、以下の通り。5月、7月、9月、10月に続き5回連続で「不確実性」の文言はゼロだった。なお「不確実」の登場回数は米大統領選挙前の2016年10月分に7回、2016年11月分は3回、2017年1月分は7回、2017年3月分は3回だった。

「増加した(increase)」→24回>前回は16回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→7 回=前回は7回
「ゆるやか(moderate)」→19回>前回は13回
「緩慢、控え目など(modest)」→21回=前回は21回
「弱い(weak)」→2回>前回は1回
「底堅い(solid)」→1回>前回は0回
「安定的(stable)」→1回=前回は1回
「不確実性(uncertain)」→0回=前回は0回

「不確実性」をめぐる文言は総括で前回に続きゼロだったものの、地区連銀の詳細報告で「不確実」の登場回数は6回となり、前回と変わらなかった。指摘した地区連銀は、以下の通りとなる。12地区連銀別では前回の5行から4行へ減少。今回はリッチモンドが消え、前回の4行(ボストン、クリーブランド、セントルイス、ダラス)のうちクリーブランドの指摘が増えた。

・ボストン 1回=前回は1回
→医療保険市場の“不確実性”を指摘。

・クリーブランド 3回>前回は2回
→自動車関連のOEMは2018~19年の見通しについて“不確実”と表現、貸出の低迷につき政治的な“不確実性”を指摘したほか、複数の銀行はノンバンクの貸手が占める商業不動産市場シェアが“不確実”と言及。

・セントルイス 1回=前回は1回
ヘルスケア関連企業は政策決定に関わる“不確実性”を指摘、一部では資本支出を低水準に抑制

・ダラス 1回=1回
連邦政府の税制に関わる“不確実性”を挙げ、設備投資の計画立案が困難と指摘。

<ドル高をめぐる表記>

ドル高をめぐるネガティブな表記は、5月分、7月、9月、10月分に続き総括ではゼロ。地区連銀別では、5月分、7月分の1行(クリーブランド)を経て、9月、10月と合わせゼロだった。

<中国>

中国というキーワードが登場した回数は、総括部分で10月に続きゼロとなった。地区連銀別でも、前回に続き2回連続でゼロだった。なお中国の言葉が登場した回数につき過去を振り返ると、4月分まで6回連続でゼロとなった後、5月分で2回登場(ボストンとミネアポリスがそれぞれ1回ずつ指摘)していた。なお2015年9月に初めて中国が盛り込まれた当時は11回で、その後は徐々に減少。1年経過した2016年9月分でゼロへ戻し、2017年4月までその流れを続けていた。

――今回のベージュブック、仕入れコストをはじめ物価上昇の「強まり」を指摘していました。製造業活動も一部で鈍化がみられるものの、個人消費にも見通しも明るさが現れています。こうなると、なぜ11月FOMC議事要旨で物価低迷への懸念を強めたのか、不思議でなりません。本来ならば利上げを維持し、いずれやって来るであろう景気減速局面の備えを残したいはずでしょうが、利上げペースを鈍化させる理由を残したかったのか。”謎”は尽きません。

(カバー写真:Matthew Black/Flickr)

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