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IMF、税制改革実現にらみ2018~19年の米成長見通しを合計1.0%引き上げ

by • January 23, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1362

IMF Revised Up U.S. Real GDP Outlook Dramatically After The Tax Reform Deal.

国際通貨基金(IMF)は1月23日、世界経済見通し(WEO)の最新版を公表した。タイトルに「明るさを増した見通し、楽観的な市場、困難が待ち受ける今後(Brighter Prospects, Optimistic Markets, Challenges Ahead)」を掲げた今回、2018年と2019年の世界成長見通しを、それぞれ前回2017年10月の3.7%増から3.9%増へ上方修正。今回、2018年で特に目立って引き上げられたのは米国で、前回スルーした税制改革の実現を組み入れたためと解釈できる。そのほかドイツや日本、韓国、新興国ではブラジル、中国、南アフリカを挙げた。

IMFは、2018~19年の世界経済見通しを上方修正したように「世界経済の回復は、強含み続けた(continued to firm up)」との見解を示した。前回に続き「短期的なリスクは均衡」と判断したほか、景気に上向きな要因として循環的な景気回復を繰り返し、緩和的な金融市場の動向も要因に挙げる。ただし、前回に続き「中期的には依然として下方リスクに傾いている」と指摘。リスク要因には、米国の税制改革で成長が加速した場合の利上げペース加速物価の上振れドル高株安世界の金融市場の引き締め効果投資フロー債務借換などを並べた。その他のリスク要因は、以下の通り(前回分はこちらを参照)で、注目点としては先進国での低インフレ警戒が削除された。

1)金融市場の脆弱性の高まり(Buildup of financial vulnerabilities)
→金融市場が中期的に緩和的である見通し。低金利と低ボラティリティ環境の継続により、利回り追求の動きが低信用の国債や社債、家計などに関わる証券への投資を広げ、債務拡大につながるリスクあり。中国によるノンバンク系への規制強化は歓迎すべき動き

2)内向き重視の政策(Inward-looking policies)
北米自由貿易協定(NAFTA)のような長きにわたる通商政策のほか(注:カナダ銀行の声明文と同じく、NAFTAと名指し)、英国と欧州連合(EU)間の経済的な取り決めが再交渉の局面に。再交渉の結果、通商障壁が高まり規制強化の方向へ進んだ場合、世界投資の重石となり、生産効率性を低下させかねず、先進国から新興国まで成長の重石となりうる。

3)非経済要因、地政学的リスクの他、選挙を通じた政治不透明性など(Noneconomic factors)
→東南アジアや中東での地政学的な緊張のほか、ブラジルやメキシコでの大統領選に関わる政治不透明性を問題視。また悪天候要因として大西洋部のハリケーン、サハラ砂漠以南のアフリカとオーストラリアにおける干ばつ、並びにその経済的コストが懸念材料。移民の増加も、受け入れ国での不安定化につながる。

前回分で明記しなかった資産価格の上昇に対しては、あらためて懸念を示した。今回は下方リスクとして「バリュエーションの高まりと非常に抑制されたタームプレミアムが金融市場の調整を引き起こし、成長と信頼感を低下させる可能性がある(On the downside, rich asset valuations and very compressed term premiums raise the possibility of a financial market correction, which could dampen growth and confidence)」と明記している。なお同年4月にIMFが金融安定報告を公表した時は、米株相場に対し「割高観(stretched valuation)と財政刺激で恩恵を受ける見通しのセクターの高いパフォーマンスが過剰にバリュエーションに判断されているリスク」を挙げていた。

以上の点を踏まえ、IMFは1)構造改革を通じた潜在成長率の引き上げ、2)低インフレが続く先進国を中心に緩和的な金融政策の維持、3)財政政策における緩和方向から目標回帰方向への転換、4)多国間での協力――などの必要性を唱えた。

IMFは今回、米国につき2018年は従来の2.3%増→2.7%増2019年も従来の1.9%→2.5%増と、合わせて1.0%ポイントも上方修正した。税制改革法案の成立を受け、2020年までの成長率予想では1.2%引き上げたという。外需の押し上げも期待される。ただし内需の強まりで貿易赤字が拡大する可能性あり。内需拡大でのインフレ加速は限定的に。経済のたるみ縮小や前回から利上げペースが引き上げられたFedの動きは、コアインフレに大きな影響を与えていないため。なお前回10月分では、4月からの下方修正に対し「財政政策に対する仮定を大幅に修正したため」と説明、税制改革を通じた減税効果を排除したと考えられる。

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(作成:My Big Apple NY)

日本も、2018年(前回0.7%増→1.2%増)2019年(前回0.8%増→0.9%増)ともに上方修正した。外需に加えこれまでの成長の力強さ、補正予算の下支えを挙げている。為替動向で円安に言及されており、同要因が加味された可能性も捨てきれない。

ユーロ圏は、成長見通しを上方修正(2018年:前回1.9%増→2.2%増、2019年:前回1.7%増→2.0%増)した。ドイツ、イタリア、オランダでは内需が牽引するとみられ、特に引き上げが顕著に。スペインの成長率はこれまで潜在成長率を上回ってきたが、政治的な不透明性を受けて見通しを下方修正。

その他、BREXITに直面する英国は、2018年(前回1.5%増→1.5%増)で据え置いたが、2019年(前回1.6%増→1.5%増)は下方修正した。リスク要因として挙げられたように、EUとの離脱交渉の行方が一因と考えられる。

中国はゆるやかに成長が鈍化していく見通しだが、2018年(前回6.5%増→6.6%増)と2018年(前回6.3%増→6.4%増)ともに上方修した。インドは2018年(前回7.4%増→7.4%増)と2018年(前回7.8%増→7.8%増)で据え置いた。

世界貿易動向では、2018年につき前回の4.0%増→4.6%増へ、2019年も前回の3.9%増から4.4%増へ上方修正された。しかし2017年の4.7%増(前回の4.2%増から上方修正)には、それぞれ届いていない。

以下は、各国・地域の成長見通しで()内の数字は前回2017年10月分あるいはその後の改定値。筆者としては、米国の劇的な成長見通し上方修正もさることながら、2019年のメキシコ成長見通しの0.7%ポイントの引き上げに胸が熱くなっております。NAFTA再交渉、大統領選を経て、2019年はメキシコ復活の年となるのでしょうか?

2018年成長率

世界経済→3.9%(3.7%)
a先進国→2.3%(2.0%)
aa米国→2.7%(2.3%)
aaユーロ圏→2.2%(1.9%)
aa独→2.3%(1.8%)
aa 仏→1.9%(1.8%)
aa伊→1.4%(1.1%)
aa西→2.4%(2.5%)
a日本→1.2%(0.7%)
a英国→1.5%(1.5%)
aカナダ→2.3%(2.1%)

a新興国→4.9%(4.9%)
aa中国→6.6%(6.5%)
aaインド→7.4%(7.4%)
aASEAN5ヵ国→5.3%(5.2%)

ブラジル→1.9%(1.5%)
メキシコ→2.3%(1.9%)
ロシア→1.7%(1.6%)

2019年成長率

世界経済→3.9%(3.7%)
a先進国→2.2%(1.8%)
aa米国→2.5%(1.9%)
aaユーロ圏→2.0%(1.7%)
aa独→2.0%(1.5%)
aa 仏→1.9%(1.9%)
aa伊→1.1%(0.9%)
aa西→2.1%(2.0%)
a日本→0.9%(0.8%)
a英国→1.5%(1.6%)
aカナダ→2.0%(1.7%)

a新興国→5.0%(5.0%)
aa中国→6.4%(6.3%)
aaインド→7.8%(7.8%)
aASEAN5ヵ国→5.3%(5.3%)

ブラジル→2.1%(2.0%)
メキシコ→3.0%(2.3%)
ロシア→1.5%(1.5%)

(カバー写真:jen dubin/Flickr)

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