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米4月貿易赤字は2017年9月以来の低水準、輸出は再び過去最大

by • June 7, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2204

U.S. Trade Deficit Narrows To 7-Month Low As Export Hits Record.

米4月貿易収支と、米1~3月期労働生産性・確報値をおさらいしていきます。

米4月貿易収支は461.99億ドルの赤字となり、市場予想の490億ドルを下回った。前月の472.10億ドル(489.56億ドルから修正)から2.1%減少。2ヵ月連続で減少した結果、赤字幅は2017年9月以来の低水準となる。原油関連を除く貿易赤字も413.35億ドルと、前月の424.48億ドル(修正値)を下回り、同じく2017年9月以来の低水準だった。1月に太陽光パネル・洗濯機、3月に鉄鋼・アルミへのセーフガードが発動し、トランプ政権は中国に対しても知財制裁関税を賦課する意志を表明するなかで、輸出が増加した半面、輸入が減少し貿易赤字が縮小した。

内訳をみると、輸出が0.3%増の2,106.60億ドルと過去5ヵ月間で4回目の増加を示しただけでなく、2ヵ月連続で過去最高を更新した。輸入は逆に0.2%減の2,574.44億ドルと2ヵ月連続で減少、輸入額は3ヵ月ぶりの低水準だった。

輸出が増加した一方で輸入が減少、貿易赤字は2017年9月以来の低水準。

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(作成:My Big Apple NY)

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、774.73億ドルだった。前月の781.55億ドル(修正値)を下回り、こちらも7ヵ月ぶりの低水準となる。

4月の輸出の内訳をみると、モノは前月比0.2%増と過去5ヵ月間で4回目の増加となった。項目別では食品・飲料のほか産業財、消費財が増加している。特に食品は前月に続き大豆とコーンが18.5%増、29.7%増とそれぞれ大幅に増加した。

(増加項目)
・食品・飲料 5.6%増<前月は8.2%増、過去5ヵ月間で4回目の増加
・産業財 3.0%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は3.2%増
・消費財 0.4%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は2.4%増
・サービス 0.4%増、9ヵ月連続で増加<前月は0.5%増

(減少項目)
・資本財 3.0%減、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は3.9%増
・自動車 1.5%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は2.3%減

輸入の内訳をみると、モノは0.3%減と2ヵ月連続で減少した。原油価格が2014年末以来の70ドル乗せへ近づくなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が4.4%増と過去5ヵ月で3回目の増加を示した。前年比でも3.3%増と、6ヵ月ぶりに増加している。金額ベースでも2ヵ月連続で上昇した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は0.9%減と、過去5ヵ月間で3回目の減少に。項目別では、産業財と資本財で増加していた。詳細は、以下の通り。

(増加項目)
・産業財 2.5%増>前月は0.8%減、7ヵ月ぶりに減少
・資本財 0.7%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は1.9%減

(減少項目)
・消費財 5.1%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は1.8%減
・食品・飲料 0.5%減、過去5ヵ月間で3回目の減少>前月は1.9%減
・自動車 2.9%減、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は0.6%減

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比8.1%増の279.62億ドルと、2017年3月以来の低水準から拡大した。日本への赤字は1.6%減の62.85億ドルと前月から小幅に減少。欧州全体への赤字額は22.1%増の172.86億ドルと、2ヵ月連続で増加した。英国との貿易黒字は過去最高を更新した前月の52.6%減の7.57億ドルとなったが、8ヵ月連続で黒字となった。

主な産油国への貿易収支は、石油関連の輸入量と金額が増加したものの、NAFTA加盟国であるカナダとメキシコ以外では黒字拡大・赤字縮小を示した。カナダへの貿易収支は前月比131.6%増の7.85億ドルの黒字となり、2ヵ月連続で黒字を計上メキシコに対する赤字額は30.9%減の55.62億ドルと3ヵ月ぶりに減少、なお前月は過去最大だった。一方で、石油輸出国機構(OPEC)への貿易収支は前月の322.3%増の32.43億ドルの赤字と、7ヵ月連続で赤字を示す。OPECのみで赤字が大した一因は、原油の輸入量にある。OPECからの石油関連の輸入量は前月比36.5%増だった半面、カナダは3.9%増にとどまったほか、メキシコに至っては32.1%減だった。さらに自動車関連の輸入額もカナダ(4.7%減)、メキシコ(13.0%減)と落ち込んでいた。

国別動向の年初来・貿易赤字は、3月に続きカナダがトップ10圏外に陥落、3月の13位から16位へランクを下げた。詳細は、以下の通り。以下は、各国ごとの単月の貿易収支動向は以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

なお今回、貿易収支が改定された。2017年の貿易赤字額でみた主要各国の動向は以下の通り。米国に占める中国のシェアはWTOに加盟した2001年の19.7%から、2017年は46.5%へ上昇。日本は逆に2001年の16.3%から8.5%へ低下した。

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(作成:My Big Apple NY)

――トランプ政権の保護主義的な通商政策が展開された影響か輸入が2ヵ月連続で減少した半面、輸出が2ヵ月連続で過去最高を記録し、貿易赤字の縮小を招きました。トランプ政権が鉄鋼輸入で1位のカナダをはじめEU、メキシコに対し鉄鋼・アルミ関税の発動を決定し、各国・地域が7月から報復関税に打って出る構えをみせるなか、輸出増にブレーキが掛かりかねません。その半面、中国はトランプ政権による知財制裁関税を撤回と引き換えに、米国輸入品を700億ドル拡大する意志を表明済み。トランプ政権は米国内半導体メーカーに配慮し、中国ZTEの制裁解除に向け暫定合意をかわしたとされますが、ディール好きなトランプ政権は対中の輸出入品リストをにらみ、米中貿易戦争回避で知財制裁関税発動を見送るのか、答えは今月半ばに明らかになります。

▽米1~3月期労働生産性・確報値は伸び鈍化、単位労働コストは強い伸びを維持

米1~3月期労働生産性・確報値は前期比年率0.4%上昇し、市場予想の0.6%の上昇を下回った。前期の0.7%の上昇に届かず。内訳は、以下の通り。生産が前期から小幅縮小した一方で労働時間が延びたため、単位労働コストを押し上げている。

・生産 2.7%の上昇、9期連続で上昇<前期は2.8%の上昇
・労働時間 2.3%の上昇、9期連続で上昇>前期は2.1%の上昇
・時間当たり賃金 3.3%の上昇、9期連続で上昇<前期は3.4%の上昇
・実質賃金 0.2%低下、2期連続で低下<前期は0.1%の低下
・単位労働コスト(一定量を生産するために必要な労働経費を示す) 2.9%の上昇、4期連続で上昇>前期は2.7%の上昇

前年比での労働生産性は1.3%上昇、前期の1.2%と合わせ6期連続のプラスを示したが、伸び悩みを続けている。単位労働コストも1.3%上昇、前期の1.8%に届かなかったものの、2期連続で上昇した。

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(作成:My Big Apple NY)

――アトランタ地区連銀は6月6日までの経済指標を受け、米4~6月期実質GDP成長率見通しを従来の4.8%増から4.5%増へ下方修正しました。仮にこの成長率を達成すれば、2014年7~9月期以来の快挙となりますが、恐らく経済指標の発表に伴い下方修正されていくのでしょう。

(カバー写真:Jay Galvin/Flickr)

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