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米5月求人数は3ヵ月ぶりに減少も、退職者数は過去最高

by • July 11, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2243

Job Openings And Hires Decline, But Leavers Hit Record.

米労働省が発表した米5 月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は663.8万人と、市場予想の662万人を超えた。前月の684.8万人(669.8万人から上方修正)を3.0%下回り、過去最高記録更新は2ヵ月でブレーキを掛けた。ただし、求人数自体は前月に続き失業者数を上回り、労働市場の一段の逼迫を示す。

求人数VS失業者数、雇用動態調査の2ヵ月連続で求人数に軍配。

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(作成:My Big Apple NY)

新規採用者数は前月比3.1%増の575.4万人と2ヵ月連続で増加し、過去最高を遂げた2001年1月に次ぐ水準となった。労働市場の力強さが際立った米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)と、整合的だ。

離職者数は前月比0.8%増の546.8万人と、3ヵ月連続で増加し2001年4月以来の高水準だった。定年や自己都合による退職者6.3%増の356.1万人と、過去最高を更新。解雇者数は8.3%減の158.8万人となり、2016年9月以降で2番目の低水準となる。

求人率は4.3%で、過去最高を塗り替えた前月の4.4%を僅かに下回った。民間が前月通り4.6%と前月の4.7%以下だった半面、政府は前月の2.5%から2.6%へ上昇した。

就業者に対する新規採用率は、前月の3.8%から3.9%へ上昇した。民間は前月の4.2%から4.3%と、過去最高を更新。政府は今回、表示されていない。

求人数が減少、新規採用が増加したとはいえ両者の乖離は続く。

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(作成:My Big Apple NY)

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は、2ヵ月連続で3.7%だった。民間が前月の4.0%から4.1%へ上昇していたが、政府は今回表示されず。自発的離職率は前月まで2ヵ月連続で2.3%を経て、2.4%と2001年4月以来で最高だった。解雇率は1.1%と前月の1.2%から低下したが、2000年12月に統計が開始してから最低となる3月の1.0%以上を保つ。

自発的離職者数が増加し、解雇者数は減少と労働市場の逼迫を表す。
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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中7項目で、3~4月に続き長期失業者の割合と労働参加率が改善できずにいる。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字です。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.3%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.1%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.4%

4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.9%

5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 21.1万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 4.0%

7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 7.8%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 23.0%

9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.9%

有効求人倍率は2.04倍と、前月の1.96倍(修正値)を大きく上回りました。少なくとも、2000年以降で最高を記録しています。

求人数と合わせ、有効求人倍率は過去最高。

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(作成:My Big Apple NY)

有効求人倍率が統計開始以来で最高だったとはいえ、労働参加率の改善したせいか平均時給は当時の4%超え水準から大きく下回ります。5月分のベージュブックでは引き続き労働市場の逼迫が指摘されるものの、トラック輸送やIT関連職などこちらで示したように賃金上振れはみられず。パウエルFRB議長が言うところの、労働市場逼迫下で賃上げが加速しない「困惑」した状況が続きます。

▽米6月NFIB中小企業楽観度、史上6番目の高水準

米6月NFIB中小企業楽観度指数は107.2となり、市場予想の106.9を上回った。前月の107.8に届かなかったものの、過去45年間で6番目の水準を達成している。なお過去最高は1983年7月の108.0となる。トランプ政権が鉄鋼・アルミ関税を欧州連合(EU)、カナダ、メキシコに発動すると発表し、7月に対中知財関税措置の導入を決定。さらに中国には2,000億ドルの追加関税、世界全体で自動車関税の賦課を検討するなか、センチメントは高止まりを維持している。なお同指数は、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表する労働市場情勢指数(LMCI)に含まれる。

発表元である全米独立企業盟(NFIB)のジュアニタ・ドゥガン最高経営責任者(CEO)は、結果を受け「減税効果と規制緩和といった政策を手掛かりに、中小企業の楽観度指数は上半期に非常に好調な数字を叩き出した」と振り返った。

NFIB、統計開始以来で6番目の高水準。

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(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、13項目中プラス圏にのせた項目は10項目で、前月の11項目を下回った。内訳をみると、「在庫満足度」がマイナス圏を脱したがゼロにとどまり、逆に統計開始以来で初めて前月にプラスに転じた「黒字見通し」が、マイナスに転落した。プラス項目のうち「求人件数」、「賃上げ見通し」、「採用見通し」、「在庫を増加させる」が前月を上回る。「在庫を増加させる」が前月を上回った。しかし「経済がより良くなる」と「事業拡大に良いタイミング」など6項目が前月以下となる。以下は、項目ごとの変化。

「求人件数」36%>前月は33%、6ヵ月平均は35%
「経済がより良くなる」33%<前月は37%、6ヵ月平均は36%
「賃金引き上げ」31%<前月は35%、6ヵ月平均は32%
「設備投資を拡大した」29%<前月は30%、6ヵ月平均は29%
「事業拡大に良いタイミング」29%<前月は34%、6ヵ月平均は29%

「売上拡大見通し」29%<前月は31%、6ヵ月平均は25%
「賃上げ見通し」21%>前月は20%、6ヵ月平均は21%
「採用見通し」20%>前月は18%、6ヵ月平均は19%
「販売価格の引き上げ」14%<前月は19%、6ヵ月平均は15%
「在庫を増加させる」6%>前月は4%、6ヵ月平均は3%

「在庫満足度」0%>前月は−4%、6ヵ月平均は−4%

「黒字トレンドにある」−1%<前月は3%と統計開始以来初のプラス>前月は−1%、6ヵ月平均は−2%
「信用状況が緩和する」−4%>前月は−5%、6ヵ月平均は−5%

――GDPの6割を担うとされる中小企業のセンチメントが高止まりを続け、4~6月期はもちろん、通期でもトランプ政権が目指す3%成長達成に期待が掛かります。ただし、5月の耐久財受注は貿易収支が示すほど上振れていません。企業の設備投資が関税導入後に加速できるのか疑問も残り、足元で企業から油価をはじめ物価高に伴い仕入れコストの上昇などが聞かれる始末。上半期で頭打ちとなるか、要注意です。

(カバー写真:Hamza Butt/Flickr)

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