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米8月ADP全国雇用者数は10ヵ月ぶり低水準、人員削減も増加

by • September 7, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1673

Private Sector Employment Increased Less Than Expected, Job Cuts Also Rise.

8月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、米4~6月期労働生産性・確報値をおさらいしていきます。

米8月ADP全国雇用者数は前月比16.3万人増となり、市場予想の20万人増を下回った。前月の21.7万人増(21.9万人増から下方修正)にも届かず、10ヵ月ぶりの低水準となる。サービス部門と財部門ともに、鈍化を示した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、10ヵ月ぶりの低水準。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が13.9万人増と前月の17.7万人増(修正値)を下回った。内訳をみると、専門サービス(前月の4.9万人増→3.8万人増)のほか、娯楽(3.7万人増→2.5万人増)が前月から鈍化している。金融(1.3万人増→0.7万人増)も、前月値に届かず。一方で、教育(3.1万人増→4.8万人増)や貿易・輸送(2.3万人増→2.1万人増)は前月を上回った。

財部門(製造業、建設、鉱業)は2.4万人増と前月の4.1万人増(修正値)を下回り、9ヵ月連続で増加したなかで最も小幅な伸びにとどまった。内訳をみると、原油先物が70ドル割れで推移するなか、鉱業(0.3万人増→0.1万人減)と8ヵ月ぶりに減少。建設(1.6万人増→0.5万人増)と、大幅に減速した。製造業(2.2万人増→1.9万人増)も、前月を下回った。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「労働市場は過熱し、企業は従業員確保に向け競争に直面している」と指摘。その上で「特に中小企業は求人を埋めることに苦労している」との考えを寄せた。

▽米8月チャレンジャー人員削減予定数は4ヵ月ぶりに減少、年初来で最低

米8月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比13.7%増の38,427人と増加に転じた。前月比でも41.8%増と前月から増加に反転。年初来の人員削減予定数は前年比7.5%増の31万773人となった。

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのジョン・チャレンジャー最高経営責任者(CEO)は、結果を受け「8月の人員削減数の増加は、夏場の小康状態が終わった可能性を示す」と分析した。追加関税措置に加え、エマージング国の通貨安が進行、世界景気の鈍化が意識されるなかで「企業は状況に応じ、人員の水準を調整し始めている」との見解を示す。特に製造業は「追加関税措置の影響が現れるなか、コスト上昇、需要鈍化、海外との競争に直面し、一段の雇用削減を強いられる余地がある」と付け加えた。

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(作成:My Big Apple NY)

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。前月は1位が消費財、2位が小売、3位がヘルスケア、4位が輸送、5位がコンピューター製品だった。なお、チャレンジャー・アンド・グレイは、産業財の人員削減のうち半分をジョンソン・コントロールが占めると説明した。

1位 産業 10,188人(全体の26.5%)
2位 消費財 4,716人(全体の12.3%)
3位 小売 3,715人(全体の9.7%)
4位 金融 2,925人(全体の7.6%)
5位 ヘルスケア 2,407人(全体の6.3%)

州別動向は、年初来で以下の通り。前月は1位がカリフォルニア州、2位がニュージャージー州、3位がテキサス州、4位がニューヨーク州、5位がオハイオ州となり、今回は4位と5位が入れ替わった。

1位 カリフォルニア州 48,979人(全体の27.5%)
2位 ニュージャージー州 38,839人(全体の12.5%)
3位 テキサス州 23,435人(全体の7.5%)
4位 オハイオ州 19,602人(全体の6.3%)
5位 ニューヨーク州 18,428人(全体の5.9%)

リストラ実施の理由、単月のランキングは以下の通り。前月の1位はリストラ、2位が閉鎖、3位は契約切れ、4位はM&A、5位はコスト削減となる。

1位 リストラ 18,472人(全体の48.1%)
2位 閉鎖 7,672人(全体の19.9%)
3位 破産 2,505人(全体の6.5%)
4位 需要鈍化 2,018人(全体の5.3%)
5位 移転 1,598人(全体の4.2%)

採用予定数は、前年同月比88.9%減の10,274人だった。前年比ベースで、6ヵ月ぶりに増加した。前月比では4.6%増とこちらも増加に転じた。

セクター別では、以下の通り。前月は1位が航空,2位が電気機器、3位が産業財、4位が自動車、5位が娯楽・宿泊だった。

1位 コンピューター 7,152人
2位 小売 2,320人
3位 通信 1,562人
4位 産業財 1,506人
5位 電気機器 1,271人

――採用予定数は漸く増加に転じたとはいえ、米8月ADP全国雇用者数は10ヵ月ぶりの低水準で、まちまちの結果となりました。採用予定が先行指標なだけに8月に直接数字として現れる公算は小さい。人員削減予定数の増加を踏まえれば、やはり米8月雇用統計・NFPは市場予想の19.4万人増を下回る方向と言えそうです。

▽米4~6月期労働生産性・確報値、約3年ぶりの高い伸び

米4~6月期労働生産性・確報値は前期比2.9%上昇し、速報値通りだった。市場予想の3.0%を小幅に下回ったとはいえ、前期の0.3%を含め2期連続で上昇しただけでなく、2015年1~3月期以来の高水準となる。生産が力強い伸びを達成しつつ、単位労働コストは1.0%の低下と速報値の0.9%の低下から下方修正され、4期ぶりのマイナス。労働時間と賃金が鈍化し生産性が上向いた半面、単位労働コストを押し下げた。詳細は、以下の通り。

・生産 5.0%の上昇、10期連続で上昇>速報値は4.8%の上昇、前期は2.6%の上昇
・労働時間 2.0%の上昇、10期連続で上昇>1.9%の上昇、前期は2.3%の上昇
・時間当たり賃金 1.9%の上昇、10期連続で上昇<速報値は2.0%の上昇、前期は3.7%の上昇
・実質賃金 0.2%の上昇、2期連続で上昇<0.3%の上昇、前期は0.2%の上昇
・単位労働コスト(一定量を生産するために必要な労働経費を示す) 1.0%の低下、4期ぶりの低下<速報値は0.9%の低下、前期は3.4%の上昇

前年比での労働生産性は速報値通り1.3%上昇、3期ぶりの高い伸びとなる。前期の1.0%と合わせ7期連続のプラスを示した。単位労働コストも速報値と同じく1.9%上昇、2016年10~12月期以来の低い伸びにとどまった。

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(作成:My Big Apple NY)

――生産や労働時間が伸びた割に賃金が鈍化し、単位労働コストはマイナスを維持しました。追加関税措置の影響で一部企業がコスト負担を強いられるなか、利鞘縮小を回避しようとしているのでしょうか。雇用統計の平均時給と整合的ながら、労働市場の逼迫と相反する結果とも言え、平均時給の伸び悩みは続きそうです。

(カバー写真:University of the Fraser Valley/Flickr)

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