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中間選挙前、米10月雇用統計で就労者数と賃金が大幅増

by • November 4, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1729

The Perfect Jobs Report Could Bolster GOP Heading Into Midterm Elections.

米10月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比25.0万人増となり、市場予想の20.0万人増を上回った。ハリケーン”フローレンス”の影響で1年ぶりの低水準だった前月の11.8万人増(13.4万人増から下方修正)から改善している。ホリデー商戦の臨時雇用も増加をもたらしたようで、中間選挙を前にトランプ政権にとっては文句なしの好結果と言えよう。8月分が1.6万人の上方修正(27.0万人増→28.6万人増)と合わせ、過去2ヵ月分は合計でゼロに。8~10月の3ヵ月平均は21.8万人増で、2017年の平均値17.1万人増を上回ったままだ。

なおトランプ政権が3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。一方で、NAFTA再交渉は9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは7月の首脳会談にて通商協議入りで合意するなど、中国を除けば貿易戦争に突入する最悪の事態を回避しつつある。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比24.6万人増と市場予想の19.5万人増を上回った。1年ぶりの低水準だった前月の12.1万人増からも、改善している。民間サービス業は17.9万人増と、前月の7.9万人増(7.5万人増から上方修正)を上回った

サービス部門のセクター別動向では、教育・健康が首位に立った。ホリデー商戦の臨時雇用が支えたためか、娯楽・宿泊は2位に浮上し、ハリケーン”フローレンス”の影響で横ばいにとどまった前月から大幅改善した。専門サービスは前月まで3ヵ月連続でトップだったが、今回は3位となる。前月は小売、情報、政府の3セクターが減少したが、今回はゼロだった。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 4.4万人増>前月は2.6万人増、6ヵ月平均は4.7万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.7万人増>前月は3.5万人増、6ヵ月平均は3.9万人増)
・娯楽・宿泊 4.2万人増>前月は0万人、6ヵ月平均は2.5万人増
(そのうち食品サービスは3.4万人増<過去12ヵ月平均1.6万人増)
・専門サービス 3.5万人増<前月は4.6万人増、6ヵ月平均は4.5万人増
(そのうち、派遣は0.3万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.4万人増)

・輸送・倉庫 2.5万人増>前月は2.1万人増、6ヵ月平均は1.8万人増
・卸売 0.9万人増>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は1.1万人増
・情報 0.7万人増>前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0万人

・金融 0.7万人増>前月は1.5万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・その他サービス 0.7万人増>前月は0.4万人減、6ヵ月平均は0.6万人増
・政府 0.4万人増>前月は0.3万人減、6ヵ月平均は1.2万人増

・小売 0.2万人増>前月は3.2万人減、6ヵ月平均は0.5万人減
・公益 0.1万人増>前月は0人、6ヵ月平均は0人

財生産業は前月比6.7万人増と、前月の4.2万人増(4.6万人増から下方修正)を上回り、8ヵ月ぶりの高水準だった。製造業や建設が共に好調だったほか、原油価格が約4年ぶりの75ドル乗せへ向かう過程で、鉱業も3ヵ月連続で増加した。

(財生産業の内訳)

・製造業 3.2万人増>前月は1.8万人増、6ヵ月平均は2.1万人増
・建設 3.0万人増>前月は1.8万人増、6ヵ月平均は2.3万人増
・鉱業・伐採 0.5万人増(石油・ガス採掘は800人の増加、4ヵ月ぶりのプラス)>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は0.4万人増

NFP、ハリケーン”フローレンス”の影響で鈍化した9月から大幅回復。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.2%上昇の27.30ドル(約3,080円)となり、市場予想と一致した。前年比は3.1%の上昇と、市場予想に並んだんだけでなく、2009年4月以来の3%超えを果たした。

週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想と前月に一致した。逆に財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は9月に続き40.3時間となり、8月の40.5時間を下回った。なお財部門は、4月に2006年7月以降で最高となる40.7時間を記録していた。

失業率は3.7%と市場予想と前月値と変わらず、1969年12月以来で最低となった。9月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しに並ぶ。労働参加率は62.9%と、市場予想や8〜9月の62.7%を上回った。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。

失業者数は前月比11.1万人増加した半面、就労者数は60.0万人増加した。低い労働参加率の改善と合わせ、失業率が約50年ぶりの低水準であることを支えた。就業率は60.6%と、2009年1月の高水準に並んだ。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.2%増の1億2,921万人と、2ヵ月連続で増加した。パートタイムは0.9%増の2,730万人と、2ヵ月連続で増加した。増減数ではフルタイムが31.8万人増、パートタイムは24.2万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を上回ったため、平均労働時間が9月と横ばいでも、前月比で0.2%上昇し3ヵ月連続でプラスを示した。平均時給も上昇したため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.4%上昇、こちらは9ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.4%と、前月の7.5%を下回り、2001年4月以来の低水準に並んだ。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は462.1万人と、前月の464.2万人から減少。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は4.6%と前月と変わらず、金融危機前の低水準をつけた。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.4週と、前月の9.2週から延びた。なお6月は、2008年5月以来の低水準となる8.9週だった。平均失業期間は22.5週と前月の24.0週から短縮しつつ、2009年3月以来で最短を記録した6月の21.3週には届かず。27週以上にわたる失業者の割合は22.5%と、前月の22.9%から低下。しかし、2008年8月以来の20%割れを遂げた5月の19.4%を上回る水準を続けた。

3)賃金 採点-○
今回は前月比0.2%の上昇と、5月と7~8月につけた年初来で最も強い伸びとなる0.4%を下回った。ただし、前年比は前月の3.1%の上昇、2009年4月以来の3%乗せを達成。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の22.89ドル、前年比は3.2%の上昇と、そろって全従業員の水準を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、生産・非管理職の労働者は全従業員を超える伸びを達成。

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(作成:My Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-○
労働参加率は8〜9月の62.7%を経て、62.9%へ上昇。2014年3月以降で2番目の高水準だった2月の63.0%に接近した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は0.4%増の1億6,264万人と、2ヵ月連続で増加。非労働人口は0.5%減の9,588万人と、4ヵ月ぶりに減少した。

――米10月雇用統計・NFPはホリデー商戦の下支えもあって、20万人の大台を超える力強さを示しました。さらに失業率が1969年以来の低水準を維持するなか労働参加率も改善し、文句なしの好結果と言えるでしょう。特に労働参加率は働き盛りの世代での上昇が、著しい。25~54歳の男性の労働参加率は9月に88.6%と年初来の最低を更新したものの、10月は89.0%へ改善。25~34歳も前月の89.0%を上回り、89.4%でした。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は、前年比で2009年4月以来の3%超えを遂げました。今回、生産労働者・非管理職の平均時給の前年比が全セクターの平均である3.2%を上回ったのは6セクターで、前月の4セクターを上回りました。

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(作成:My Big Apple NY)

特に財部門の賃金上昇が著しく、前年比3.8%の上昇とサービス部門の3.1%を大きく上回りました。これは鉱業・伐採が5.2%の上昇と前月に続き5%乗せを果たしただけでなく、建設が4.2%の上昇を遂げたことが大きい。その一方で、雇用増加を牽引する教育・健康、専門サービスは平均以下の伸びが続いています。この両セクターの賃上げペースが加速すれば、さらなる上昇もあり得るのでしょうが、そうなれば利上げの回数を押し上げかねず。ゴルディロックス経済を望むならば、現状が理想的と考えられます。

(カバー写真:The White House/Flickr)

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