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米10月NFIB中小企業楽観度は高水準も、関税措置の余波を示唆

by • November 14, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1968

NFIB Small Business Optimism Close To Record High, But Concern About Tariffs Remain.

米10月NFIB中小企業楽観度指数は107.4となり、市場予想の108.0を下回った。過去最高を更新した8月の108.8から2ヵ月連続で低下したが、高水準は保つ。トランプ政権は6月から鉄鋼・アルミ関税を欧州連合(EU)、カナダ、メキシコを盛り込み、7月と8月には対中知財関税措置の一部である340億ドルを発動。さらに中国には、2,000億ドルの追加関税対象リストを発表した。ただ7月の米欧首脳会談にて、貿易協議の進行中は新たな関税を導入しない方針で合意し、NAFTA再交渉も3ヵ国で合意。明るい材料が届くなか、直近では対中追加制裁で年明けから2,670億ドル相当の中国製品全体に関税が賦課されるリスクが台頭しつつあり、センチメントは小幅に低下した。11月13日に米中通商協議再開が報じられたため、G20首脳会合での米中首脳会談を経て、センチメントが好転するか注目だが、追加関税措置による物価上昇の影響への懸念が残る。なお同指数は、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表する労働市場情勢指数(LMCI)に含まれる。

発表元である全米独立企業盟(NFIB)のジュアニタ・ドゥガン最高経営責任者(CEO)は、「約2年にわたり、中小企業のオーナーの楽観度は高水準で推移し、力強い経済成長を牽引している」と振り返った。こうした高いセンチメントは「税制改革を通じた減税のほか、規制緩和」によって押し上げられたと説明する。

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(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、13項目中プラス圏にのせた項目は9月に続き10項目だった。内訳をみると、そのうち、今回上昇した項目は「販売価格の上昇」と「在庫を増加させる」の2項目のみ。一方で「賃金引き上げ」や「賃上げ見通し」のほか、「採用計画」が低下し、その他は横ばいだった。マイナス項目は、3つのうち「在庫満足度」と「黒字トレンドにある」が下げ幅を小幅に広げた。以下は、項目ごとの変化。

「求人件数」38%、3ヵ月連続で過去最高=前月は38%、6ヵ月平均は37%
「賃金引き上げ」34%<前月は37%、6ヵ月平均は34%
「経済がより良くなる」33%=前月は33%、6ヵ月平均は34%
「設備投資を拡大した」30%=前月は30%、6ヵ月平均は30%
「事業拡大に良いタイミング」30%<前月は33%、6ヵ月平均は32%

「売上拡大見通し」28%<前月は29%、6ヵ月平均は28%
「賃上げ見通し」23%<前月は24%と1月に続き過去最高、6ヵ月平均は22%
「採用見通し」22%<前月は23%、6ヵ月平均は22%
「販売価格の引き上げ」15%<前月は17%、6ヵ月平均は16%
「在庫を増加させる」5%>前月は3%、6ヵ月平均は5%

「在庫満足度」−2%<前月は−1%、6ヵ月平均は−2%
「黒字トレンドにある」−3%<前月は−1%、6ヵ月平均は0%
「信用状況が緩和する」−5%=前月は−5%、6ヵ月平均は−5%

――GDPの6割を担うとされる中小企業のセンチメントは2ヵ月連続で過去最高を下回ったものの、力強さを維持します。

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(作成:My Big Apple NY)

敢えて弱い材料を掘り起こすなら、追加関税措置をめぐる影響でしょう。今回、「黒字トレンドにある」だけでなく、「賃金引き上げ」や「賃上げ見通し」が歩調を合わせ低下しました。鉄鋼・アルミ追加関税をはじめ、一連の措置が仕入れ価格の上昇をもたらす上、足元で労働市場は逼迫しており、米10月雇用統計の平均時給でも伸びが加速していましたよね。しかし、大企業より深刻な人手不足に直面している公算が大きい中小企業が賃上げに消極的であるのは、物価高に加え金利上昇も重なり、利鞘縮小に追い込まれている可能性を示唆します。成長と共に、中小企業のセンチメントも4~9月にかけて頭打ちとなった感は否めません。

(カバー写真:PacificLegalFoundation/Flickr)

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