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米11月貿易赤字は6ヵ月ぶりに減少も、中国向け輸出の減少を確認

by • February 7, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2048

U.S. Trade Deficit Narrows For The First Time In 6 Months.

米10月貿易収支は493.18億ドルの赤字となり、市場予想の540億ドルを下回った。2008年10月以来で最大を記録した前月の556.99億ドル(554.88億ドルから修正)から、11.5%減少。6ヵ月ぶりに減少した結果、赤字水準自体は対中追加関税措置500億ドルの第一弾を開始する直前、6月以来の低いレベルとなる。原油関連を除く貿易赤字も486.90億ドルと、過去最大へ膨らんだ前月の528.58億ドル(修正値)以下にとどまった。

なおトランプ政権による追加課税措置については、2018年1月に太陽光パネル・洗濯機、同3月に鉄鋼・アルミへのセーフガードが発動。同年6月には、鉄鋼・アルミへの追加関税措置がEU、カナダ、メキシコへ波及した。対中追加関税は同年7月6日には通商法301条を根拠とした500億ドルのうち340億ドル、同年8月23日には残りの140億ドルが発動、そして同年9月24日からは2,000億ドル相当へ拡大。同年12月1日の米中首脳会談で2019年1月から2,000億ドル相当への関税を10%から25%へ引き上げる措置は2月末まで猶予を与えられている。

内訳をみると、輸出が0.6%減の2,098.73億ドルと過去6ヵ月間で5回目の減少となった。年末商戦の開始を控え輸入は2.9%減の2,598.19億ドルと7ヵ月ぶりに減少、過去最高記録更新を3ヵ月で止め、貿易赤字の改善につながった。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は、878.80億ドルだった。前月の872.24億ドル(修正値)を上回り、3ヵ月連続で過去最高を更新した。

輸出だけでなく今回は輸入が減少し、実質ベースのモノの貿易赤字は6ヵ月ぶりに減少。

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(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比0.8%減と過去6ヵ月で5回目の減少となった。項目別では、消費財が4ヵ月ぶりに落ち込んだ。産業財も3ヵ月ぶりに減少、石油製品・その他が9.5%減だったことが響いた。自動車は2ヵ月連続で減少した。一方で、食品・飲料が6ヵ月ぶりに増加した。特にコメが85.2%増ソグラム・大麦・オート麦が80%増と急増したほか、ナッツ類も19.2%増野菜が23.5%増アルコール飲料(ワイン以外)が20.9%増と支えた。ただし中国への主要輸出産品である大豆は追加関税措置の影響で9.9%減、小麦も24.0%減、コーンも7.8%減と不振が続く。資本財も前月から増加に転じ、民間航空機が20.5%増と支え、民間航空機向けエンジンも7.1%増と前月の減少を相殺した。その他、通信機器が13.5%増、産業エンジンも7.1%増と改善している。なお中国は9月6日に追加で600億ドル相当の報復関税を発動、対象は大豆、小麦、ワイン、航空機、自動車、液化天然ガス(LNG)など約3,500の製品とした。モノの輸出項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・消費財 5.0%減、4ヵ月ぶりに減少<前月は1.1%増
・自動車 3.0%減、2ヵ月連続で減少<前月は1.9%減
・産業財 2.9%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は0.7%増
・サービス 0.2%減、16ヵ月ぶりに減少増加<前月は0.3%増

(減少項目)
・食品・飲料 0.6%増、6ヵ月ぶりに増加>前月は5.7%減
・資本財 3.0%増、過去4ヵ月間で3回目の増加>前月は1.1%減

輸入の内訳をみると、モノは3.6%減と7ヵ月連続で減少し、減少率は少なくとも直近で最大となる。原油価格が2014年11月以来の高値75ドル超えから50ドル台へ落ち込む過程だったものの、量ベースでのエネルギー関連輸入が11.5%減と過去5ヵ月間で4回目の増加を示した。前年比では13.4%減だった。金額ベースでは2桁下落に転じた。エネルギー製品を除いたモノの輸入は2.5%減と、こちらも7ヵ月ぶりに減少した。項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・自動車 0.8%増、過去6ヵ月間で5回目の増加<前月は2.3%増
・資本財 0.6%増>前月は5.2%減

(減少項目)
・消費財 7.5%減、5ヵ月ぶりに減少<前月は3.5%増
・産業財 6.9%減、3ヵ月ぶりに減少<前月は横ばい
・食品・飲料 1.2%減、過去4ヵ月間で3回目の減少

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比12.2%減の378.61億ドルと減少に転じ、過去最大更新記録を4ヵ月連続で止めた。日本への赤字は、6.1%減の57.90億ドルと、日米貿易交渉が注目されるなかで減少に反転。欧州全体への赤字額は14.1%減の184.12億ドルと、3ヵ月ぶりに過去最高を更新した前月から改善した。対英貿易収支は6.05億ドルの黒字と、前月の5.64億ドルの赤字から転換した。

主な産油国への貿易収支は、対カナダ、メキシコ、石油輸出国機構(OPEC)と全て減少した。カナダへの貿易赤字は前月比96.6%減の6.7億ドルの赤字と、大幅に縮小。メキシコに対する赤字額は8.3%減の65.67億ドルで、過去最大だった8月の86.91億ドル以下が続く。石油輸出国機構(OPEC)への貿易赤字は68.3%減の7.76億ドルと、2014年1月以降で2番目の高水準だった前月から大幅減となった。一方で、原油輸入量はカナダが前月比7.4%減、メキシコは14.3%減、OPECは7.5%減となり、対カナダやOPECの貿易赤字縮小に油価の下落に伴う押し下げ効果があったことが分かる。

なお、米国とメキシコはNAFTA再交渉で8月27日に合意に到達。対してカナダは7月から米国による鉄鋼・アルミ関税への報復措置を7月1日から開始し、鉄鋼やアルミ、食品など166億加ドル相当の製品を対象とした。ただし、9月30日にカナダが米国・メキシコと歩調を合わせ、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に合意、NAFTAの枠組み維持で妥結した。各国が批准する必要があり、カナダとメキシコは鉄鋼・アルミ関税の除外を求めている。

国別動向の年初来・貿易赤字は、1位は中国、2位はメキシコで変わらず、3位は9~10月に続きドイツ、日本は4位となった。カナダは3月から7月までタイに取って代わられトップ10圏外だったが、8~10月に続き圏内に残った。その他、11月は米中貿易戦争が激化するなかで、中国と香港向けの輸出が2ヵ月連続で年初来での減少を迎えている。各国ごとの単月の貿易収支動向は、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

――トランプ政権が対中追加関税として500億ドルに加え2,000億ドルを発動したところ、対中への輸出額は年初来で2ヵ月連続で減少しています。大豆や小麦などに加え、LNGなどエネルギー関連などの主要輸出品目が9月から報復関税対象となったことが響いたことは確実。中国からの輸入が年初来で9.1%増輸出は4.4%減だったため、結果的に対中貿易赤字は12.8%増加しています。2017年11月の年初来は対中貿易赤字が7.9%増(輸出:12.3%増、輸入:8.9%増)だったことを踏まえると、トランプ大統領が一般教書演説でアピールしたほど、追加関税措置は対中貿易赤字を削減できていません。

日本に視点を変えると、対日貿易赤字は11月までの年初来で2.4%減(輸出:6.8%増、輸入:11.4%増)と、2017年11月の年初来である1.7%増(輸出:6.4%増、輸入:3.9%増)から赤字を削減していました。2018年9月に幕開けした物品貿易協定(TAG)交渉で、こうしたカードがトランプ大統領に使えるとよいのですが。

(カバー写真:hans molenaar/Flickr)

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