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米2月雇用統計・NFPが衝撃的な低さでも、平均時給は加速

by • March 10, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off4636

Jobs Growth Came To A Near Halt, But Wage Gains Hit 10-Year High In February.

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比2.0万人増となり、市場予想の17.5万人増を下回った。前月の31.1万人増(30.4万人増から上方修正)を大幅に下回り、ハリケーン“ハービー”や“マリア”の直撃を受けた2017年9月以来の低い伸びにとどまった。1月25日に解除されたとはいえ一部政府機関の閉鎖のほか、豪雪などが影響したとみられる。2018年12 月分の0.5万人の上方修正(22.2万人増→22.7万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で1.2万人の上方修正となった。2018年12月〜2019年2月の3ヵ月平均は18.6万人増と、2018年平均の22.3万人増を上回った。

なおトランプ政権が2018年3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、同年6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含めた。中国に対しては同年8月23日から事前の340億ドルに160億ドルと合わせた500億ドル相当の追加関税を発動、同年9月24日から2,000億ドルの対中知財関税を実施した。2,000億ドル相当の対中関税措置については、2019年1月から関税率を10%から25%へ引き上げる懸念があったが、同年12月1日の米中首脳会談で90日間の猶予が設けられている。2019年1月30〜31日には米中ハイレベル通商協議で劉鶴副首相がワシントンを訪問、トランプ大統領とも会談し、大豆の500万トンを含め農産品の輸出拡大で合意した。さらに3月1日の米中通商交渉期限を前に、トランプ大統領が期限の延長を発表した。一方で、NAFTA再交渉は同年9月にカナダを含め合意が成立し、欧州とは同年7月の首脳会談にて通商協議入りで合意。日本とも個別で貿易交渉を開始した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比2.5 万人増と前月の30.8 万人増(29.6万人増から上方修正)から急減し、2017年9月以来の低い伸びだった。民間サービス業も5.7万人増と、前月の22.7 万人増(22.4万人増から上方修正)から大きく鈍化した 。

NFP、2017 年9月以来の低い伸びに。

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(作成:米労働統計局よりMy Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向では、1位に専門サービスが入り前月の3位から上昇した。次いで卸売が2位に浮上、3位は金融となった。豪雪などの影響で、前月1位だった娯楽・宿泊のほか、2位の教育・健康も圏外に転落した。今回、減少したセクターは一部政府機関の閉鎖を受け政府、また小売、輸送・倉庫の3業種となる。前月は情報の1業種のみだった(修正値ベース)。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・専門サービス 4.2万人増>前月は1.5万人増、6ヵ月平均は3.9万人増
(そのうち、派遣は0.6万人増>前月は1.2万人減、6ヵ月平均は0.8万人増)
・卸売 1.1万人増>前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・金融 0.6万人増<前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.8万人増

・教育・健康 0.4万人増<前月は6.4万人増、6ヵ月平均は3.8万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は2.3万人増<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は3.9万人増)
・その他サービス 0.3万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・情報 横ばい>前月は1.2万人減、6ヵ月平均は0.2万人減

・娯楽・宿泊 横ばい<前月は8.9万人増、6ヵ月平均は4.1万人増
(そのうち食品サービスは1,600人増>過去12ヵ月平均2.5万人増)
・公益 横ばい<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は横ばい

・輸送・倉庫 0.3 万人減<前月は3.0 万人減、6ヵ月平均は1.6万人増
・政府 0.5万人減<前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.2万人減
・小売 0.6万人減<前月は1.4 万人増、6ヵ月平均は横ばい

財生産業は前月比3.2万人減と、前月の8.1万人増(7.2万人増から下方修正)を大きく下回り、2016年8月以来の減少となった。豪雪の影響で建設が大幅減となったほか、原油先物が2018年10月初めの75ドル超えから50ドル割れまで急落した後に下げ止まったものの、鉱業が4ヵ月ぶりに減少に反転。製造業は2017年8 月に増加トレンドに入ってから、最小の伸びにとどまった 。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・製造業 0.4万人増、2017年8月以降で最低の伸び<前月は2.1万人増、6ヵ月平均は2.0万人増
・鉱業・伐採 0.5万人減、4ヵ月ぶりに減少(石油・ガス採掘は800人の増加、5ヵ月連続のプラス)<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は0.2万人増
・建設 3.1万人減、2016年1月以来の強い伸び<前月は5.3人増、6ヵ月平均は1.4万人増

平均時給は前月比0.4%上昇の27.66ドル(約3,040円)となり、市場予想の0.3%を上回った。前年比は3.4%の上昇と、2009年4月以来の力強い伸びを遂げた。

週当たりの平均労働時間は34.4時間と、前月の34.5時間から短縮した。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は前月の40.7時間から40.2時間へ大幅に短縮している。

失業率は3.8%と市場予想と一致し、前月の4.0%から低下した。なお、2018年11月は3.7%と、1969年12月以来で最低だった。2018年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2019年見通しを上回る。労働参加率は前月と変わらず63.2%と、2013年9月以来の高水準を保った。事業調査であるNFPと異なり、就業者が25.5万人増だった一方で、一部政府機関の閉鎖を受けて失業者が30万人減少し、失業率の低下につながったとみられる。就業率は60.7%と、前月に続き2008年12月の高水準に並んだ。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.2%増の1億3,016 万人と、増加に転じた。パートタイムは0.5%増の2,688万人と4ヵ月ぶりに増加した。増減数ではフルタイムが32.2万人増、パートタイムは11.9万人増だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を大幅に下回っただけでなく、週平均労働時間も短縮したため、前月比で0.3%低下し3ヵ月ぶりにマイナスとなった。平均時給が好調だったところ、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.1%上昇、13ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.3%と2001年3月以来の低水準に並んだ。前月の8.1%から大幅に改善したが、前月は一時帰休を余儀なくされた連邦政府職員が不完全失業率を押し上げたとみられる。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は431.0万人と、前月の514.7万人から急減した。

2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は9.3週と、2017年12月以来の水準へ短縮した前月の8.9週から延びた。平均失業期間は21.7週と、こちらも2009年2月以来で最短を記録した20.5週を上回る。27週以上にわたる失業者の割合も20.4%と、2008年8月以来の20%割れを遂げた前月の19.3%から上昇した。

3)賃金 採点-○
今回は前月比0.4%の上昇と、前月の0.1%を上回った。前年比は1月の3.2%から3.4%へ加速、2009年3月以来の高水準を達成。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の23.18ドル、前年比は3.5%の上昇と、2018年12月に続き約10年ぶりの高い伸びだった。全体の平均時給と合わせ、7ヵ月連続で3%を超えた。なお、民間における生産・非管理職の割合は約8割を占める。

平均時給、前年比は全体と生産労働者・非管理職ともに加速。

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(作成:米労働統計局、米国勢調査局よりMy Big Apple NY)

4)労働参加率 採点-△
労働参加率は63.2%と、前月に続き2013年9月以来の水準へ上昇。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口はわずかながら1億6,318万人となり、2ヵ月連続で減少。逆に、非労働人口は0.7%減の9,521万人と3ヵ月ぶりに増加した。

――今回の雇用統計はNFPこそショッキングでしたが、①失業率が低下、②労働参加率が堅調な伸びを維持、③不完全失業率が2001年3月以来の水準へ改善、④平均時給の前年比が約10年ぶりの高い伸びを達成——など好材料が目立ちます。Fedは世界景気の減速に配慮し据え置き姿勢を貫きますが、特に賃上げペースの加速は、今後の金融政策を占う上で要注意。これまで、パウエルFRB議長は景気見通しと金融市場の動向に合わせ政策スタンスを間髪に入れずに変更してきたほか、2月の議会証言でも利上げ野可能性に言及しませんでした。しかし労働市場のひっ迫が続けば、逆のシナリオ、つまり利上げ姿勢へ転換するリスクに留意すべきでしょう。

(カバー写真:Metropolitan Transportation Authority/Flickr)

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