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米3月求人数は回復も、採用数は減少し自発的離職者数も弱い

by • May 14, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2214

Job Openings Bounce Back, But Hires And Leavers Decrease.

米労働省が発表した米2月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は748.8万人と、市場予想の735万人を上回った。前月の714.2万人(708.7万人から上方修正)を4.8%上回り、2018年8月の729.3万人を超え過去最高を更新している。求人数自体は13ヵ月連続で失業者数を上回り、スプレッドも前月より広がった。

求人数VS失業者数、雇用動態調査の13ヵ月連続で求人数に軍配。

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(作成:My Big Apple NY)

新規採用者数は、前月比0.6%減の566.0万人だった。2ヵ月連続で減少し、過去最高を更新した2018年10月(587.7万人)が遠ざかった。なお、米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は悪天候や政府機関閉鎖の余波が波及した前月から大幅に改善した。

離職者数は前月比2.5%減の543.4万人と、2ヵ月連続で減少した。定年や自己都合による自発的離職者が1.1%減の340.9万人と、過去最高をつけた1月の348.3万人を2ヵ月連続で下回った。また、解雇者数も4.7%減の170.0万人と、過去4ヵ月間で3回目の減少となった。

求人率は4.7%と、前月の4.5%を上回った。ただ、過去最高に並んだ1月の4.8%には届かず。民間が前月の4.8%から5.0%へ戻したつつ、政府は3.0%で横ばいだった。

採用率は前月に続き3.8%だったが、2007年5月以来の4%乗せから遠ざかった。民間が前月の4.2%から4.1%へ、政府も前月の1.6%から1.5%へそれぞれ低下した。

求人数は回復も、採用数は2ヵ月連続で減少。

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(作成:My Big Apple NY)

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は前月まで2ヵ月連続で3.7%だったが、今回3.6%へ低下した。民間が前月の4.1%から4.0%へ低下しただけでなく、政府も前月の1.6%から1.5%へ低下した。自発的離職率は3ヵ月連続で2.3%と、2001年4月以来の高水準だった9月の2.4%以下が続く。解雇率は前月の1.2%から1.1%へ低下、2000年12月に統計が開始してから最低となる2018年3月の1.0%へ接近した。

解雇者数が前月分の増加をほぼ打ち消したものの、自発的離職者数が2ヵ月連続で減少。

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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は前月に続き9項目中6項目。未達項目は2月の大幅鈍化が響いたNFPのほか、長期失業者の割合、労働参加率でした。ただ非農業部門就労者数は労働市場逼迫に伴い、鈍化する傾向が強まります。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字となります。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.7%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.1%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.1%
現時点 2.3%

4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.8%

5)非農業部門就労者数—×
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 22.4万人増
現時点の3ヵ月平均 16.9万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 3.6%

7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 8.1%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 21.1%

9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.8%

有効求人倍率は求人数と採用数だけでなく、政府機関閉鎖を受け政府の職員の失業者が増加したため2.12倍と、再び上昇。

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(作成:My Big Apple NY)

――米3月雇用動態調査では、雇用統計と同じく2月の弱さが一時的要因だったことを確認しました。もっとも、採用数と自発的離職者数が芳しくありません。労働市場の需給でミスマッチが発生しているためか、労働参加率も4月に働き盛りの男性を中心に低下していました。トランプ政権が2,000億ドルの中国製品への関税を引き上げ、さらに3,000億ドル相当の同製品への関税賦課を検討し、中国も報復関税に動くなか、労働市場には逆風が吹き付けつつあります。

(カバー写真:Budi Nusyirwan/Flickr)

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