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5月FOMC、据え置き姿勢を維持し景況判断の微修正にとどめる

by • May 22, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2431

Fed Keeps Its Patience, Tweeks Some Views For U.S. Economy.

4月30~5月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通りFF誘導金利目標を2.25~2.50%で据え置いた。2018年11月からハト派姿勢へ急旋回した流れを引き継ぎ、今回は利上げ、利下げどちらにもバイアスはない姿勢を打ち出した。パウエルFRB議長も、記者会見でその立場を強調。FOMCは声明文の変更を小幅にとどめ、米1~3月期実質GDP成長率・速報値や雇用統計を手掛かりに景況判断を上方修正した。ただし、家計や企業の支出の鈍化を指摘したほか、物価の伸び悩みに対応しインフレの表現は下方修正した。詳細は、以下の通り。

【景況判断】

前回:「労働市場は力強さを維持する一方、経済活動の成長ペースは2018年10~12月期の堅調なペースから鈍化した(slowed)」

今回:「労働市場は力強さを維持し、経済活動は堅調なペース(at a solid rate)で拡大した」
※1~3月期成長率は前期比年率3.2%増と3%超えを達成したほか、米3月雇用統計も季節要因などを受けて大幅鈍化した2月から改善し、文言を上方修正

前回:「2月は就業者の伸びはほぼ横ばい(little changed)だったが、労働市場は足元概して堅調で、失業率は低水準を保つ」

今回:「概して、雇用の増加は足元堅調で、失業率は低水準を保つ」
※米3月雇用統計の改善に対応。

前回:「足元の経済指標は、家計と企業の固定支出が1~3月期に鈍化した可能性を示す」

今回:「家計支出と企業の固定支出は、1~3月期に鈍化した」
※米1~3月期実質GDP成長率の発表に伴い、文言を調整。

前回:「全体の物価は前年比で鈍化した(slowed)が、概してエネルギー価格の下落によるもので、コアの物価は2%近くで推移している」

今回:「全体とコアの物価は前年比で低下し(decline)、目標値の2%を下回って推移している」
※原油先物価格が60ドル台を回復する過程でも2月PCEの上昇率は前年比1.5%上昇、コアPCEも同1.6%上昇と2018年1月以来の低水準にとどまり、文言を下方修正。

【統治目標の遵守について】
「こうした(最大限の雇用と物価安定)目標を支援すべく、委員会は政策金利を2.25~2.5%で据え置いた。委員会は引き続き、経済活動の持続的な拡大、力強い労働市場環境、2%近辺という委員会の対称的な物価目標の達成が最も起こり得る結果と考える(most likely outcomes)」
※2018年12月に「幾分のさらなるゆるやかなFF金利目標レンジの引き上げ」を削除し、差し替えた文言を1月に続いて使用し、据え置き姿勢を強調。

「世界経済と金融の動向、並びに抑制的なインフレ圧力に照らし合わせ、こうした結果(上記、持続的な経済成長など)を支援する上で適切とされる、将来のFF金利誘導目標レンジの調整を決定する上で、委員会は辛抱強くなれる(patient)」
※持続的な経済成長、最大限の雇用、物価目標2%を達成する上で、利上げに慎重となる姿勢をあらためて表明。

【政策金利について】

FF金利誘導目標を2.25~2.50%で据え置きと発表。
「FF金利の目標レンジを調整する時期と規模を決定する上で、委員会は最大限の雇用という目標と2%と対称的な物価の目標(symmetric 2 percent inflation objective)に照らし合わせ、経済動向の実勢と見通しを評価する」との文言は据え置き。
※2017年3月から“対照的な物価目標”という文言を使い、インフレ目標2%が天井ではなく、同水準を上下することを許容する立場を表明。金融政策に柔軟性を与えた。

【票決結果】

票決は、全会一致。1月にボウマンFRB理事が投票メンバーに入ったため、参加者は17名となる。輪番制である地区連銀総裁からは今年、セントルイス連銀のブラード総裁、シカゴ連銀のエバンス総裁、カンザスシティ連銀のジョージ総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁となる。なお2018年の票決は、1、3、5、6、8、9、11、12月のすべての会合で全会一致だった。

【超過準備預金金利】

FOMCは、超過準備預金金利(IOER)を従来の2.40%から2.35%へ引き下げた。FF金利誘導目標の上限を上回らないよう、対応したかたちだ。IOERの調整は、今回で3回目となる。利上げ過程にあった2018年の6月、12月は、IOERの引き上げを25bpではなく20bpとし、FF金利上限からの乖離を広げていた。なお同年9月は、IOERを据え置いた。

【パウエルFRB議長の記者会見、質疑応答の抄訳】

●物価について
→「物価は(目標値である)いずれ2%へ回帰する」
→「持続的で対称的な2%の物価目標を遵守する」
→「物価が執拗に物価目標を下回って推移すれば、委員会は懸念を表明するようになり、政策を決定する上で考慮に入れるだろう」

●金融政策姿勢について
→「金融政策の姿勢は適切で、調整を考慮する上で辛抱強くなれる」
※「patient」の使用回数は今回2回、前回3月の12回から減少した理由は、金利据え置きが幅広く周知されたためと考えられる
→「金融政策は現時点で適切と考えられ、(利上げ、利下げの)力強い論拠をみていない」
→「委員会は現状の政策姿勢に満足している」

●保有資産の構成
→「今回、より徹底した分析と協議に向けた基盤作りのための予備的議論を行ない、保有資産の構成年限について年末にかけ(注:圧縮停止は10月)再度議論する」
→「この問題を喫緊に解決する必要性はないが、円滑な調整をもたらすよう、十分に前倒しで通知する」

●金融安定、レバレッジ拡大局面での対応について
→「金融安定をめぐり、我々は四半期に1回、議論する機会を設けており、今回協議した」
→「非金融企業の債務に懸念が残るものの、全体的に金融安定の脆弱性は概して後退した。金融システムは高い資本と流動性により、衝撃への耐性が非常に強いと申し上げたい」
→「しかしながら、FOMCは4つの分野を注視しており、一つは資産価格で、一部の資産価格は過度ではないものの、幾分上昇した・・2つ目に非金融企業のレバレッジが挙げられ、懸念要因として注目しており、これは金融不安定の観点というより、景気減速局面での悪化要因と捉えている。そのほか金融システムにおけるレバレッジ、過去の水準と比較し非常に低い米国での資金調達コストが挙げられるが、私の見方で脆弱性は高まっていない(moderate)」
→「こうした懸念材料に対応する手段として資本増強をはじめ流動性の確保、監督体制の強化、ストレステストなどが挙げられる
※資産価格の上昇や過度なレバレッジ環境に、利上げで対応しない立場を示唆か

●見通しの“逆流”について
→「年初から、中国と欧州をはじめとした世界経済の減速のほか、混迷を極めるBREXIT、米通商協議など、数多くの(経済的)逆流が見通しにリスクを及ぼしてきた・・未だリスクが残るものの、幾分後退した。世界の金融環境は、多くの国々で緩和方向へシフトした金融政策や、一部での財政出動により落ち着いた」

●米経済見通しについて
→「委員会並びに私の米経済見通しは年内にわたってポジティブかつ健全で、個人消費と企業支出に支えられると見込む。

●貿易摩擦
→「通商協議をめぐる不確実性が解消すれば、おそらく企業信頼感を押し上げるだろう。通商協議開始直後から、非常に多くの企業からコメントを受けており、(鉄鋼輸入業者や輸出業者を中心に)不確実性こそが懸念材料である」

――FOMCは年内据え置き、保有資産圧縮を9月末までに停止と、一気にカードを切ってきました。スピーディーに政策変更を行うパウエルFRB議長の下では、インフレ目標の議論などスムーズに行われる可能性を示唆します。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

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