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4月対米証券投資、GSP除外のあの国などが米国債積み増し

by • June 19, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1943

The Country U.S. Ended Preferential Trade Status Added U.S. Treasury In April.

4月対米証券投資は、78億ドルの売り越しだった。前月(331億ドル)に続き、5ヵ月連続で流出している。海外の資金動向をみると、民間が534億ドル買い越し、前月の278憶ドルの売り越しから反転。ただし、海外中銀を含む公的機関は170億ドル売り越し、少なくとも6ヵ月連続の流出となる。海外投資家の米国債投資は169億ドルの買い越しと、前月の125億ドルの売り越しから反転。米国債の内訳をみると、民間が444億ドル売り越し前月の横ばいから大幅流入に転じた一方で、海外の公的機関ヵ月ぶりに流出させたほか、海外中銀を含む公的機関は275憶ドルの売り越しと、流出トレンドを保った。

4月の金融市場は、5月の米中通商協議を控え楽観ムードが漂っていた。米株市場は終値でナスダックが8ヵ月ぶり、S&P500は7ヵ月ぶりに過去最高値を更新。米10年債利回りは、2.5%付近での安定的な推移を続けた。足元の貿易摩擦をめぐる動きは、こちらをご参照。
国別での米国債保有高トップ5動向は、2018年8~19年3月と同じ顔触れで、順位も同年9~11月と入れ替わりなし。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきた経緯がある。しかし、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ、米国証券保有高が減少するか注目されていたが、足元では漸減にとどまる。

国別での米国債保有高トップ5動向は、2018年8月~19年3月と同じ顔触れ、順位は1~3月と変わらず。アイルランドは税制改革法案が成立直後こそ3位だったが、2018年8月にはブラジルに抜かれ4位へ、19年1月には英国に抜かれ5位となった。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきたが、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ存在感が低下しつつある。

1位 中国 1兆1,130億ドル(2017年5月以来の低水準)、75億ドルの売り越し、2ヵ月連続で流出
2位 日本 1兆640億ドル(4ヵ月ぶりの低水準)、141億ドルの売り越し、6ヵ月ぶりの流出
3位 ブラジル 3,067億ドル(4ヵ月ぶりの低水準)、50億ドルの売り越し、4ヵ月ぶりの流出
4位 英国 3,008億ドル(2011年6月以来の高水準から後退)、163億ドルの売り越し、5ヵ月ぶりの流出
5位 アイルランド 2,697億ドル(2016年8月以来の低水準)、79億ドルの売り越し、3ヵ月ぶりの流出

トップ5の米国債保有高の推移。

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(作成:My Big Apple NY)

米国債保有高が300億ドル以上の主要国のうち、買い越しトップ5ヵ国は以下の通り。

1位 フランス 149億ドル増の2,838億ドル(5ヵ月ぶりの高水準)
2位 サウジアラビア 66億ドル増の1,766億ドル(少なくとも2011年以来で最大)
3位 インド 33億ドル増の1,553億ドル(2018年4月以来の高水準)
4位 ポーランド 33億ドル増の372億ドル
5位 メキシコ 30億ドル増の477億ドル(2016年9月以来の高水準)

上記売り越しトップ5ヵ国は、以下の通り。

1位 英国 163億ドル減の3,008億ドル
2位 日本 141億ドル減の1兆640億ドル
3位 アイルランド 76億ドル減の2,697億ドル
4位 中国 75億ドル減の1兆1,130億ドル
5位 ベルギー 68億ドル減の1,798億ドル(5カ月ぶりの低水準)

――米国債保有高のトップ5が米中通商協議を継続中の中国をはじめ全て米国債を削減した一方で、フランスをはじめサウジアラビア、インド、メキシコなどが米国債を積み増していました。サウジアラビアの米国債積み増しは、サウジ人記者殺害事件後をめぐり米上下院がサウジ支援停止決議を可決した後、トランプ大統領が拒否権発動に踏み切った時期と重なるため、想像の羽根が広がります。

もうひとつ、政治的な配慮という意味では、インドやメキシコが対米輸出の増加が米国債積み増しにつながった可能性は否定できない気がするのは、筆者だけでしょうか。インドは、3月にトランプ政権から「米国に公正かつ合理的な市場アクセス提供を保証していない」との理由で、一般特恵関税制度(GSP)を除外する意向を表明され、為替報告書のリリースと同時に決定されましたよね。メキシコも、対中追加関税措置の漁夫の利を得たためか、2018年の対米輸出が前年比10.3%増と突出して拡大していました。もちろん、米国債積み増しにつき単月だけで政治的配慮が影響したとは申しませんが、こうした一致を偶然と判断するのかどうかは、統計をみる方々次第ですよね。

米財務省が公表する主要保有国リスト(米国債保有高300憶ドル以上)には、3月に続き32ヵ国が入りました。3月はチリが300憶ドル以下となったため2月の33ヵ国から減少しましたが、今回もチリは圏外となっています。4月の主要保有国リスト最下位はイラクとなり、354億ドルでした。原油価格が50ドルを割り込んで下落すれば、産油国で米国債保有高が減少してもおかしくありません。

(カバー写真:Claudio Accheri/Flickr)

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