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米6月貿易赤字、米中首脳会談前に輸出入が減少し小幅減

by • August 5, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1844

Trade Deficit Edges Down Before Trump-Xi Meeting At G20.

米6月貿易収支は551.54億ドルの赤字となり、市場予想の546億ドルを上回った。年初来で最大となった前月の553.44億ドル(555.20億ドルから修正)から0.3%減少。原油関連を除く貿易赤字は逆に537.99億ドルと、前月の511.94億ドル(513.22億ドルから下方修正)を上回り、年初来で最大となった。5月に米中通商協議が物別れに終わり、トランプ政権は約2,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の税率を10%から25%へ引き上げ、同13日には第4弾の追加関税として残り約3,000億ドル相当の中国製品に対し25%の追加関税を発動する方針を表明。さらに同20日にはファーウェイなど安全保障上の脅威となる企業に対し禁輸措置を講じた。6月末の米中首脳会談では、第4弾の追加関税措置の無期延期で合意するなど、雪解けの様相を呈したが、7月30日に上海で開催された米中通商協議を経て、トランプ大統領は8月1日に第4弾を9月1日に実施すると発言。再び、米中貿易摩擦が苛烈さを増す恐れがある。

内訳をみると、輸出が2.1%減の2,106億8,900万ドルと前月分の増加を相殺した。輸入は1.7%減の2,614億5,400万ドルとこちらは前月分の増加を半減させた。品目別でみると、輸出入ともに自動車や資本財、消費財など幅広く減少し、5月の輸出入の増加が米中間の貿易摩擦が激化するなかで一部駆け込み需要だった可能性を強めた。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は、861.16億ドルと、前月の863.78億ドル(修正値)を下回った。

輸出だけでなく輸入も減少し、実質ベースのモノの貿易赤字は年初来最大から小幅縮小。

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(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比2.8%減と前月の3.0%増から減少に転じた。サービスを含めた6大項目別では、食品・飲料が4ヵ月連続で、産業財が前月に続いて増加。食品・飲料は2018年9月以降、米中首脳会談直前、中国が報復関税措置を講じる大豆が13.6%増と前月の40%超えから伸び縮小も2桁増を遂げた。そのほか、中国が豚コレラに直面するなかで肉類が4.6%増、果物・冷凍ジュースが11.8%増と支えた。産業財は3ヵ月ぶりに増加に転じ、燃料が4.5%増、鉄鋼製造用素材が23.1%増、石油製品が3.2%増と押し上げた。一方で消費財、自動車、資本財、サービスが減少。消費財は2桁減と大幅に減少に転じ、ダイヤモンドやコインが33.8%減、医療品も9.4%減。宝石も30.2%減とそれぞれ前月分の増加を相殺した。自動車は、前月4.7%増の増加をほぼ打ち消し3.7%減となる。資本財は過去4ヵ月間で3回目の減少となりコンピュータ付属品が13.5%減、産業機器が4.7%減、通信機器が6.7%減だった。民間航空機は19.2%増と2ヵ月連続で増加した。

なお中国は2018年9月6日に追加で600億ドル相当の報復関税を発動、対象は大豆、小麦、ワイン、航空機、自動車、液化天然ガス(LNG)など約3,500の製品とした。ただその後、米中通商協議を経て購入枠を拡大した物品もある。モノの輸出項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・食品/飲料 0.6%増、4ヵ月連続で増加<前月は6.8%増
・産業材 0.5%増、3ヵ月ぶりに増加>前月は0.5%減

(減少項目)
・消費財 10.7%減、減少に反転<前月は4.7%増
・自動車 3.7%減、減少に反転<前月は4.7%減
・資本財 2.6%減、過去4ヵ月間で3回目の減少<前月は3.0%増
・サービス 0.7%減、減少に反転<前月は0.3%増

輸入の内訳をみると、モノは2.2%減と前月の4.0%増から減少に転じた。原油価格が50ドル台を中心に推移するなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が10.2%減と4ヵ月ぶりに減少した。前年比では12.0%減と、少なくとも3ヵ月連続で減少した。金額ベースでは、4ヵ月ぶりに下落した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は前月比で0.9%減と前月の3.4%増から反転した。5大項目別では全て減少、特に前月に力強い伸びだった産業財、自動車、が弱い。産業財は原油が10.5%減、石油製品が28.3%減、燃料が14.3%減と、それぞれ2桁減だった。資本財は民間航空機が25.9%減と前月の増加から反転、コンピュータ付属品が4.9%減、農業機器が18.1%減と落ち込んだ。消費財は携帯その他家電が14.4%減と前月の増加を完全に打ち消したほか、家具・家財が7.7%減、宝飾品が9.7%減だった。食品・飲料は2ヵ月連続で減少し、特に魚・魚介類が3.9%減、肉製品が5.7%減、油種が9.4%減と弱かった。項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
なし

(減少項目)
・産業材 6.9%減、前月から減少に反転<前月は3.9%増
・自動車 1.8%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は7.5%増
・消費財 1.6%減、過去4ヵ月間で3回目の減少<前月は2.5%増
・食品/飲料 0.7%減、3ヵ月連続で減少<前月は0.4%減
・資本財 0.6%減、減少に反転<前月は2.9%増

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比0.7%減の299.68億ドルと微減に転じた。日本への赤字は、6.8%増の57.11億ドルと、日米貿易交渉が注目されるなかで赤字が拡大。欧州全体への赤字額は16.9%減の171.82億ドルと、過去最高を更新した4月を2ヵ月連続で下回った。英国に対する貿易収支は5.6億ドルの黒字となり、2ヵ月連続で黒字を計上した。

主な産油国への貿易収支は、対カナダと石油輸出国機構(OPEC)で赤字が縮小した。対カナダが前月比6.3%減の29.06億ドルと3ヵ月ぶりに減少している。OPECへの貿易収支は25.0%減の2.72億ドルの赤字となり、前月比で赤字を縮小させながら3ヵ月連続で赤字を計上した。一方で、メキシコに対する赤字額は2.2%増の98.52億ドルで、2ヵ月連続で増加。なお、原油輸入量はカナダが前月比13.7%減、OPECは8.0%増、メキシコは15.3%減だった。

国別動向の年初来・貿易赤字は、1位は中国、2位はメキシコで変わらず、3位は3ヵ月連続で日本となる。2018年9月~19年1月まで3位だったドイツは、4位を維持した。貿易額でトップは少なくとも4ヵ月連続でメキシコとなり、2018年の中国から首位を奪った状況が続く。また、米商務省が7月2日に韓国、台湾の鋼材品をベトナムで最終加工する迂回輸出を抑制する狙いで、最大456%の追加関税措置を発動したが、ベトナムからの輸入も引き続き拡大傾向にあることを確認した。各国ごとの年初来の貿易収支動向は、以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

――対中追加関税措置が発動されてから、引き続きメキシコとベトナムが対米貿易収支で存在感を増しています対米輸出額のランキング(財ベース)も1~6月の年初来で中国が12.4%減である一方、メキシコは6.3%増ベトナムに至っては33.4%増となり順位も2018年の前年同期の12位から8位へ上昇したポジションを維持していました。他にフランス、インド、韓国なども合わせて、対米輸出の増加が顕著となっています。

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(作成:My Big Apple NY)

トランプ大統領が対中追加関税の第4弾を発動するならば、懸念されるのが世界景気の減速です。既に、国際通貨基金(IMF)は2019年、2020年の貿易見通しを下方修正済み。世界経済が鈍化するなか、2019年の貿易見通し(財・サービス)は0.9%ポイント引き下げ2.5%増と、大幅に修正されました。先進国が前回2.8%増→2.2%増に対し、新興市場国・発展途上国が前回4.3%増→2.4%増と下方修正幅が大きい点に注意。2020年も3.7%増(前回から0.2%ポイント下方修正)で、先進国が据え置きだった半面、新興市場国と発展途上国が0.3%ポイント引き下げられ、全体の重石となりました。外需頼みの回復は、困難と想定されます。

そこへきて、世界で広がる利下げの輪も気掛かりです。少なくとも、米国とブラジル、韓国、インドネシア、南アフリカが加わり、7月末で先進国、新興市場国・開発途上国合わせて少なくとも37ヵ国に増加しました。5月時点の25ヵ国を大きく上回ります。

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(作成:My Big Apple NY)

さらに、対中追加関税第4弾の発動が懸念される中国は、8月5日に人民元が約11年ぶりに7元台に乗せることを許容する有様。これまで中国は預金準備率こそ引き下げつつ利下げに消極的でしたが、各国が利下げで景気浮揚を図るなかで、パンドラの箱を開けたのか、米中間のさらなる火種になるのか注目です。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

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