23167089521_43488d8b06_z (1)

米7月貿易赤字は縮小、米中首脳会談後の輸入減・輸出増を受け

by • September 9, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2205

Trade Deficit Narrows Down As Exports Rebounds And Imports Decrease.

米7月貿易収支は539.9億ドルの赤字となり、市場予想の534億ドルを小幅に上回った。前月の555.08億ドル(551.54億ドルから修正)から2.7%減少し、3ヵ月ぶりの低水準。原油関連を除く貿易赤字は逆に514.21億ドルと、前月の541.36億ドル(537.99億ドルから修正)を下回り、4ヵ月ぶりの低水準となる。

5月に米中通商協議が物別れに終わり、トランプ政権は約2,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の税率を10%から25%へ引き上げ、同13日には第4弾の追加関税として残り約3,000億ドル相当の中国製品に対し25%の追加関税を発動する方針を表明。さらに同20日にはファーウェイなど安全保障上の脅威となる企業に対し禁輸措置を講じた。6月末の米中首脳会談では、第4弾の追加関税措置の無期延期で合意するなど、雪解けの様相を呈したが、7月30日に上海で開催された米中通商協議を経て、トランプ大統領は8月1日に第4弾を9月1日に実施すると発言。8月23日には、中国が約700億ドルの米国製品に5~10%の追加関税を9月1日から発動すると表明した。同日、トランプ政権は約2,500億ドル相当(第1~3弾)の税率を25%→30%、第4弾の税率を10%→15%へ引き上げる方針を発表し、米中貿易摩擦が苛烈さを増す状況だ。ただし、9月4日に米中通商協議が10月初旬に開催されると中国政府が発表し、足元で決裂への懸念は後退しつつある。

内訳をみると、輸出が0.6%増の2,074億100万ドルと小幅ながら増加に転じた。輸入は0.1%減の2,613億9,100万ドルとこちらもわずかに減少した。

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの貿易赤字は855.09億ドルと、前月の861.82億ドル(修正値)を下回った。

輸出が増加したが輸入が減少し、実質ベースのモノの貿易赤字は2ヵ月連続で縮小。

tb
(作成:My Big Apple NY)

当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比0.9%増と前月の2.8%減から増加に転じた。サービスを含めた6大項目別では、前月に続き3項目が増加した。消費財、自動車、資本財がそろって前月から増加に転じた。消費財は医薬品が25.9%増となったほか、美術品・アンティークが26.5%増となった。自動車は、前月の減少を相殺。資本財は掘削機器が2倍増と急伸したほか、民間航空機が7%増、医療機器が3.9%増となる。一方で、食品・飲料が5ヵ月ぶりに減少したほか、産業財も前月から減少に反転した。食品・飲料は2018年9月以降、米中首脳会談後ながら、大豆は5.9%減と前月の13%台の増加から反転し、そのほか小麦が12.4%減、コーンが7.8%減と落ち込んだ。産業財は原油が9.1%減だったほか、原料炭が30.8%減、燃料が6.3%減と減少に転じた。サービスは3ヵ月連続で減少した。なお中国は2018年9月6日に追加で600億ドル相当の報復関税を発動、対象は大豆、小麦、ワイン、航空機、自動車、液化天然ガス(LNG)など約3,500の製品とした。ただその後、米中通商協議を経て購入枠を拡大した物品もある。モノの輸出項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・消費財 9.6%増、増加に反転>前月は10.7%減
・自動車 4.6%増、増加に反転>前月は3.7%減
・資本財 1.9%増、増加に反転>前月は2.6%減

(減少項目)
・食品/飲料 2.0%減、5ヵ月ぶりに減少<前月は0.4%増
・産業材 3.8%減<前月は0.4%増、3ヵ月ぶりに増加
・サービス 0.1%減、2ヵ月連続で減少<前月は0.3%減

輸入の内訳をみると、モノは0.2%減と前月の2.2%減と合わせ2ヵ月連続で減少した。原油価格が50ドル台を中心に推移するなか、量ベースでのエネルギー関連輸入が9.8%増と4ヵ月ぶりに減少した前月から増加基調へ戻した。前年比では7.0%減と、少なくとも4ヵ月連続で減少した。金額ベースでは、4ヵ月ぶりに下落した前月から上昇に転じた。エネルギー製品を除いたモノの輸入は前月比で0.3%減と前月の0.9%減と合わせ2ヵ月連続で減少した。5大項目別では4項目で増加、前月は全て減少していた。産業財、消費財、自動車、食品・飲料が増加に転じ、資本財のみ2ヵ月連続で減少した。産業財は石油製品が33.3%増、燃料が13.5%増、化学肥料が31.4%増と支えた。消費財はスマートフォンその他家庭用品が6.3%増、玩具・ゲームが15.4%増、家具などが7.8%増と追加関税第4弾で12月15日発動される品目が牽引した。食品・飲料は3ヵ月ぶりに増加し、ワインを除くアルコール飲料が10.5%増、油種が14.1%増だった。自動車は、前月の減少から小幅増に転じた。一方で、資本財はコンピュータが18.8%減、半導体が4.6%減、通信機器が3.2%減となる。項目別動向は、以下の通り。

(増加項目)
・産業材 2.0%増、前月から増加に反転>前月は6.9%減
・消費財 1.1%増、前月から増加に反転>1.6%減
・食品/飲料 0.6%増、前月から増加に反転>0.7%減
・自動車 0.3%増、前月から増加に反転>1.8%減

(減少項目)
・資本財 2.6%減、2ヵ月連続で減少<前月は0.6%減、減少に反転

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比9.4%増の327.75億ドルと増加に転じ6ヵ月ぶりの高水準だった。日本への赤字は、10.9%増の63.31億ドルと、日米貿易交渉が8月末のG7首脳会談で合意に結び付く前に拡大欧州全体への赤字額は39.7%増の240.01億ドルと、過去最高を更新した。ジョンソン英首相就任で関係強化が目される英国への貿易収支は2.8億ドルの赤字となり、3ヵ月ぶりに赤字に転じた。

主な産油国への貿易収支は、対メキシコと石油輸出国機構(OPEC)で赤字が縮小した。メキシコに対する赤字額は19.0%減の79.76億ドルで、3ヵ月ぶりに減少。OPECへの貿易収支は51.9%減の1.00億ドルの赤字となり、前月比で赤字を縮小させながら4ヵ月連続で赤字を計上した。一方で、対カナダが前月比21.4%増の34.86億ドルと増加に転じた。なお、原油輸入量はカナダが前月比19.9%増、OPECは17.3%減、メキシコは11.3%増だった。

国別動向の年初来・貿易赤字は、1位は中国、2位はメキシコで変わらず、3位は3ヵ月連続で日本となる。2018年9月~19年1月まで3位だったドイツは、4位を維持した。貿易額でトップは少なくとも5ヵ月連続でメキシコとなり、2018年の中国から首位を奪った状況が続く。また、米商務省が7月2日に韓国、台湾の鋼材品をベトナムで最終加工する迂回輸出を抑制する狙いで最大456%の追加関税措置を発動したが、ベトナムからの輸入も引き続き拡大傾向にあることを確認した。結果、対ベトナムの貿易赤字は6月までの年初来6位から、今回5位へ浮上。代わりに、アイルランドがワンランク下落した。各国ごとの年初来の貿易収支動向は、以下の通り。

tradeb_C
(作成:My Big Apple NY)

――対中追加関税措置が発動されてから、引き続きメキシコとベトナムが対米貿易収支で存在感を増しています。特にベトナムに至っては、7月までの年初来の対米輸出で前年同期の12位から8位へ浮上しその位置を維持しています。その他、対アイルランド、スイスでの赤字がそれぞれ30%超も膨らみました。アイルランドとスイスは、医薬品の輸入が足元で2桁増をたどり、赤字が急拡大しております。さらにアイルランドはアップルが製造豪拠点を置く事情から携帯電話・家庭用品も2桁増となり、赤字が拡大したようです。

米中通商協議は、10月初旬に開催される方針で固まりつつあります。中国が建国70周年記念を迎えるだけに、株安など金融市場の混乱は回避したい意図が見え隠れします。トランプ大統領としても、設備投資が鈍化するように景気伸び悩みが懸念されるだけに、個人消費頼みのところ資産価格の上昇は必須でしょう。8月23日に発表した中国側の報復措置や米国側の税率引き上げなどをめぐり、一旦棚上げなどのウルトラCで市場を喜ばせるシナリオは捨てきれません。結局、米中間の追加関税措置は続くのですが、最悪の事態を回避するというのは、両者にとって悪い話ではありませんよね。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.