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米7月求人数は2ヵ月連続で減少、離職者数は過去2番目の高水準

by • September 11, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off2132

Job Openings Decrease And Separations Increase : The Sign Of Slower Hires?

米労働省が発表した米7月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は721.7万人と、市場予想の733.1万人を下回った。前月の724.8万人(修正値)を0.4%下回り、2ヵ月連続で減少。過去最高だった2018年11月の762.6万人以下が続く。ただし、求人数自体は17ヵ月連続で失業者数を上回った。

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(作成:My Big Apple NY)

採用者数は前月比3.4%増の595.3万人となった。もっとも、過去最高を更新した4月(599.1万人)を3ヵ月続けて下回った。なお、米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は堅調なペースを維持していた。

離職者数は575.9万人と前月から5.1%増加(3ヵ月ぶりに増加)し、統計開始以来で2番目の高水準となった。定年や自己都合による自発的離職者が3.8%増(3ヵ月ぶりに増加)の359.2万人と過去最高を更新しただけでなく、解雇者数も5.1%増の179.9万人と3ヵ月ぶりに増加した結果、2018年11月以来の高水準となった。

求人率は前月の4.6%を下回り4.5%となり、2018年3月以来の水準へ低下した。過去最高に並んだ1月の4.8%以下が続く。民間が前月に続き4.8%、貿易・輸送・公益のほか、雇用増を牽引するセクターである専門サービス、教育などが低下した。逆に追加関税が懸念材料とされるなか鉱業や製造業に加え、情報などが上昇した。政府は前月の3.0%から2.9%へ低下したが、米8月雇用統計で連邦政府が国勢調査の臨時雇用を支えに増加したように、短期的に歯止めが掛かる可能性がある。

採用率は2ヵ月連続で3.8%を経て、3.9%へ上昇した。民間が前月の4.2%から4.3%へ上昇。セクター別では鉱業、製造業のほか、教育・ヘルスケア、専門サービス、娯楽・宿泊、金融など幅広く上昇した。政府も前月の1.5%から1.6%へ上昇した。

求人数が減少し離職者数が増加も、採用数が支えたように米7月雇用統計・NFPは堅調。

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(作成:My Big Apple NY)

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は3.8%と前月の3.6%から上昇し3ヵ月ぶりの水準へ戻した。民間が前月の4.0%から4.2%へ上昇。セクター別では鉱業のほか、貿易・輸送・公益、教育・健康、専門サービスなどが上昇した。政府は3ヵ月連続で1.5%だった。自発的離職率は2.4%、2001年4月以来の高水準に並んだ。解雇率は前月の1.1%から1.2%へ上昇し、2000年12月に統計が開始してから最低となる2018年3月の1.0%がやや遠のいた。

自発的離職者数と解雇者数がそろって増加、離職者数は過去最大に。

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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中3項目。未達項目は2月の大幅鈍化が響くNFPのほか、長期失業者の割合、労働参加率でした。ただ非農業部門就労者数は労働市場逼迫に伴い、鈍化する傾向が強まります。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字となります。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.6%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.3%
現時点 2.3%

4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.8%

5)非農業部門就労者数—×
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 22.4万人増
現時点の3ヵ月平均 15.6万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 3.7%

7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 7.2%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 20.6%

9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 63.2%

有効求人倍率は求人数と採用数が減少し失業者が増加したため、低下。

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(作成:My Big Apple NY)

――米7月雇用動態調査は求人数が減少し、自発的な場合と解雇者数を含め離職者数が増加しており、労働市場が変調をきたしたサインが点灯したかのようです。米8月雇用統計は、国勢調査の臨時雇用が働き盛りの男性を中心に労働参加率の改善を促したとも解釈できます。景気拡大11年目を迎え労働市場は分岐点に差し掛かったとしても、おかしくない。その一方で、チャレンジャー人員削減予定数が年初来の8ヵ月間で2015年以来の高水準だった半面、採用予定数はそれを上回っていました。今後は年末商戦の臨時雇用が就労者数を押し上げると想定され、Fedの追加利下げ効果もあり、少なくとも年末まで労働市場は持ち堪えそうです。

(カバー写真:jurek d. (Jerzy Durczak)/Flickr)

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