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米1月雇用統計、幸先良い2020年のスタートを飾る

by • February 9, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2024

2020 Start With Stronger Than Expected Job Growth, But Question Is How Long It Can Last.

米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比22.5万人増となり、市場予想の16.5万人増を上回った。前月の14.7万人増(14.5万人増から上方修正)も超え、2020年の開幕を20万人乗せで飾った。1月は暖冬を支えに輸送・倉庫や娯楽・宿泊、建設のほか、ヘルスケアが全体を支え大台乗せを達成。労働人口の伸びを吸収するために必要とされる10万人増を上回るペースを維持した。2019年11月分の0.5万人の上方修正(25.6万人増→26.1万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で0.7万人の上方修正となった。11~1月の3ヵ月平均は21.1万人増と、2019年平均の17.5万人増を上回った

米労働統計局は今回、年間のデータ改訂を行った。結果、2018年4月から2019年3月までの就労者数が51.4万分下方修正され、2009年以来の大幅な修正となった。2017年は210.9万人増、2018年の就労者数は231.4万人増と従来の268万人増から下方修正された。2019年の就労者数は209.6万人増となる。

近年の各政権別・NFP増加幅平均では、トランプ政権は景気拡大期にありながら就任3年間で217.3万人増とブッシュ政権(父)以降でクリントン政権に次ぎ2番目の高水準だった。

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(作成:My Big Apple NY)

NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比20.6万人増と、市場予想の15.5万人増を上回った。前月の14.2万人増(13.9万人増から上方修正)を超え、こちらも大台を回復。民間サービス業は17.4万人増となり、前月の14.7万人増(14.0万人増から上方修正)を上回った。

NFPは7ヵ月ぶりの低い伸びから20万人超えを回復、失業率は1969年12月以降での最低近くを維持。

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(作成:My Big Apple NY)

サービス部門のセクター別動向で、1位は教育・健康(前月は3位)2位は娯楽・宿泊(前月も2位)3位は輸送・倉庫(前月は3位以下)となった。トップ3常連の専門サービスは、今回4位にとどまった。減少したセクターは年末商戦の臨時雇用で増加し前月1位だった小売のほか公益、金融の3業種で、前月のゼロから増加した。詳細は、以下の通り。

(サービスの主な内訳)

・教育・健康 7.2万人増>前月は2.2万人増、6ヵ月平均は5.4万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.7万人増>前月は2.5万人増、6ヵ月平均は4.6万人増)
・娯楽・宿泊 3.6万人増=前月は3.6万人増、6ヵ月平均は4.8万人増
(そのうち食品サービスは2.4万人増>前月は1.6万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)
・輸送・倉庫 2.8万人増>前月は0.4万人増、6ヵ月平均は1.1万人増

・専門サービス 2.1万人増>前月は1.4万人増、6ヵ月平均は3.0万人増
(そのうち、派遣は0.2万人減<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.2万人増)
・政府 1.9万人増>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・卸売 0.8万人増<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

・情報 0.5万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・その他サービス 0.5万人増<前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.6万人増

・金融 0.1万人減<前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・公益 0.1万人減<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.1万人減
・小売 0.8万人減<前月は4.5万人増、6ヵ月平均は0.9万人増

財生産業は前月比3.2万人増と、前月の0.5人減(修正値)から増加に転じた。平年を上回る気温を支えに建設がけん引している。鉱業は、米中貿易協議・第1段階の合意を受け原油価格が一時60ドル台を回復するなかで、減少を2ヵ月で止めた。一方で、製造業はボーイング737MAXの生産停止を一因に過去4ヵ月間で3回目の減少となった。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

・建設 4.4万人増、2ヵ月連続で増加>前月は1.1万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・鉱業・伐採 横ばい(石油・ガス採掘は400人増)>前月は1.1万人減、6ヵ月平均は0.4万人減
・製造業 1.2万人減<前月は0.5万人減、6ヵ月平均は0.1万人増

1月のセクター別の雇用増減をみると、生産労働者・非管理職別の平均時給で民間の平均を上回る教育・健康、建設、専門サービスのほか、平均以下の娯楽・宿泊と輸送・倉庫が雇用を支えていたことが分かる。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給は前月比0.2%上昇の28.44ドル(約3,100円)と、市場予想の0.3%に届かず。もっとも、前月の0.1%を上回った。前年比は3.0%の上昇、市場予想と2.9%から上方修正された前月と並んだ。3%超えは、18ヵ月連続となる。なお、直近で最も強い伸びを遂げたのは、2019年2月につけた2009年4月以来の力強い伸びとなる3.4%である。

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(作成:My Big Apple NY)

平均時給のセクター別では、小売や娯楽・宿泊、鉱業、情報など常連組のほか、12月に続き専門サービス、今月はそれらに加え民間サービスが生産労働者・非管理職の平均時給の伸びである3.3%を上回った。

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(作成:My Big Apple NY)

週当たりの平均労働時間は34.3時間と、市場予想と前月と一致した。ハリケーン・ハービー直撃の影響を受けた2017年9月以来の水準に並んだ。34.3時間というのはハリケーン・ハービー以来の低水準であるだけでなく、2011年1月以降で最低である。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間はボーイング737MAXの生産停止を一因に4ヵ月連続で40.1時間となり、2011年11月以来の40時間割れを視野に入れたままだ。全体の約7割を占める民間サービスは、2019年6〜12月に続き33.2時間だった。

失業率は3.6%と、市場予想と前月の3.5%を上回った。もっとも、1969年12月以来の最低近くを保つ。2019年12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2020年見通しからは、若干上昇した。労働参加率は63.4%と、市場予想の63.1%はもちろん前月の63.2%を超え、2013年6月以来の高水準を達成した。就業率は2019年9~12月の61.0%を上回り、61.2%と2008年11月以来の高水準を記録した。なお、今回から人口推計が変わったため、前月と連続性はない。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは1億3,176万人、パートタイムは2,726万人だった。

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数の伸びが前月から加速したため増加基調を維持したため、平均労働時間が横ばいながら前月比で0.2%と上昇した。平均時給が上昇し続けた結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.4%上昇、24ヵ月連続でプラスだった。

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は6.9%と、統計が開始した1994年1月以降で最低を記録した前月の6.7%を上回った。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は418万人と、2006年4月以来の低水準だった2018年7月の398.4万人を上回った水準を保つ。

2)長期失業者 採点-△
失業期間の中央値は9.3週と前月の9.0週から延び、2017年12月以来の低水準となる8.9週が遠のいた。27週以上にわたる失業者の割合は19.9%と前月の20.5%以下となり、2008年8月以来の低水準だった7月の19.2%ににじり寄った。ただし、平均失業期間は21.9週と、前月の20.8週を上回り、2008年7月以来で最短を記録した2019年7月の19.6週から後退した。

3)賃金 採点-〇
今回は前月比0.2%上昇、前年比は3.1%と共に前月を上回った。前年比は18ヵ月連続で3%乗せとなる。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.1%上昇の23.87ドルと、2017年11月から続く増加トレンドを維持。前年比で3.3%と18ヵ月連続で大台を維持した。なお2019年10月は3.6%上昇、2009年2月以来の力強い伸びを果たしていた。

4)労働参加率 採点-〇
労働参加率は63.4%、2013年6月以来の高水準を達成した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。軍人を除く労働人口は1億6,461万人、非労働人口は9,490万人だった。

――2020年最初の雇用統計は、トランプ大統領が一般教書演説で自画自賛したように労働市場の力強さをみせつけました。失業率は1969年12月以来の低水準近くを維持し、黒人やヒスパニック系の失業率も過去最低付近で推移し、平均時給は3%台の上昇を続け、労働参加率は改善。失業率が上昇したと言っても労働参加率が上向いたためで、バッドニュースではありません。何より、就業率が2019年9~12月の61.0%から0.2%ポイントも上昇し、2008年11月以来の高水準を記録。さらに、25~54歳の就業率は80.6%と2001年6月の高水準に並ぶ快挙を遂げています。

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(作成:My Big Apple NY)

全体の労働参加率が2013年6月以来の高水準を達成したと同時に、働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率も概ね上昇していました。25~34歳の労働参加率が低下した一因として、黒人の労働参加率が影響した可能性があります。20歳以上の黒人男性の労働参加率は前月の68.6%から67.6%へ急低下していました。対して、20歳以上の白人男性は前月の71.6%から72.0%へ上昇、ヒスパニック系男性も前月の79.9%から81.6%へ上昇しています。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字となります。

・25~54歳 89.3%と2018年4月以来の高水準<前月は89.2%、6ヵ月平均は89.2%
・25~54歳(白人) 90.5%>前月は90.2%、6ヵ月平均は90.3%
・25~34歳 89.1%、4ヵ月ぶり低水準<前月は89.5%、6ヵ月平均は89.3%
・25~34歳(白人)90.7%=前月は90.7%、6ヵ月平均は90.6%

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(作成:My Big Apple NY)

米1月雇用統計は、再選を狙うトランプ政権の追い風となるような結果でした。問題は、2月です。ボーイング737MAXの生産停止に加え、新型コロナウイルスの影響がのしかかります。特に後者は影響がどの程度続くのか不透明で、好調な経済をもって有権者にアピールしたいトランプ政権にとって不確実要因となるでしょう。

(カバー写真:The White House/Flickr)

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