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米3月小売売上高、コロナウイルス禍と外出禁止が響き過去最悪

by • April 15, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2518

Retail Sales Suffer Historic Plunge Amid Coronavirus Outbreak.

米3月小売売上高は前月8.7%減と、市場予想の8.0%減より下げ幅を広げた。前月の0.4%減(修正値)を含め、2ヵ月連続で減少しただけでなく、単月の落ち込みとしては過去最大となる。新型コロナウイルス感染拡大と外出禁止関連措置が消費に重くのしかかり、急減した格好だ。

一方で、自動車を除いた場合は4.5%減と過去最悪だったとはいえ、市場予想の5.0%減ほど悪化していない。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)が1.7%増と、市場予想の2.0%減に反し増加したためだ。前月の0.2%減からプラスに反転し、2018年12月以来の力強い伸びを達成。コロナウイルス禍で無店舗と一般雑貨、ヘルスケアが大幅増となり、その他の急減を打ち消した。

なお、小売売上高の主な13項目の比率は以下の通り。このうち、自動車・部品(20.1%)、ガソリンスタンド(8.1%)、建築/庭園(6.3%)、外食(12.5%)がコントロール小売売上高から省かれるため、無店舗(12.6%)と一般雑貨(11.3%)の寄与度が全体を支えることになる。

・自動車・部品→20.1% ・ガソリンスタンド 8.1%
・外食→12.5% ・食品/飲料→12.4%
・建築/庭園→6.3%

・無店舗→12.6% ・一般小売 11.3%
・ヘルスケア→5.6% ・服飾→4.2%
・家具→1.9% ・電気製品→1.5%
・スポーツ用品/趣味/書籍→1.2% ・雑貨→2.3%

チャート:小売売上高、前年比は6.2%減と、2009年7月以来の大幅な落ち込みを記録。

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チャート:前月比の8.7%減は、金融危機時の最悪となった2008年12月の3.8%減をはるかに超え過去最大の減少率。

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(作成:My Big Apple NY)

前月比の内訳をみると、主要13カテゴリー中5種で増加、特に巣ごもり需要拡大を反映し食料/飲料が2桁増と過去最大の増加率を記録した。その他、一般小売、ヘルスケア、無店舗、建築/庭園が力強い伸びを示した。その他は、そろって2桁減と過去最悪の数字を更新、特に服飾、家具、外食、自動車・部品は20%以上の減少率と、過去最悪を記録する無残な結果となった。前月比の項目別詳細は以下の通り。

(プラス項目)
・食品/飲料→26.9%増、過去最大の増加率>前月は0.3%減、6ヵ月平均は4.5%増
・一般小売→6.4%増、過去6ヵ月間で5回目の増加を迎え過去最大の増加率>前月は0.1%減、6ヵ月平均は4.3%増
(百貨店は19.2%減、2ヵ月連続で減少し過去最大の減少率<前月は0.2%減、6ヵ月平均は3.6%減)
・ヘルスケア→4.3%増、増加に転じ過去最大の増加率>前月は0.4%減、6ヵ月平均は0.7%増

・無店舗(主にネット)→3.1%増、3ヵ月連続で増加し2019年1月以来の強い伸び>前月は0.7%増、6ヵ月平均は0.4%増
・建築材/園芸→1.3%増、増加に反転>前月は0.2%減、6ヵ月平均は1.2%増

(マイナス項目)
・雑貨→14.3%減、過去最大の減少率<前月は0.7%減、6ヵ月平均は1.6%減
・電気製品→15.1%減、過去最大の減少率<前月は0.9%減、6ヵ月平均は2.7%減
・ガソリンスタンド→17.2%減、2ヵ月連続で減少し2008年11月以来の落ち込み<前月は2.9%減、6ヵ月平均は2.8%減

・スポーツ用品/書籍/趣味→23.3%減、2ヵ月連続で減少し過去最大の減少率<前月は0.2%減、6ヵ月平均は4.2%減
・自動車/部品→25.6%減、2ヵ月連続で減少し過去最大の減少率<前月は0.5%減、6ヵ月平均は4.0%減
・外食→26.5%減、2ヵ月連続で減少し過去最大の減少率<前月は0.2%減、6ヵ月平均は4.3%減

・家具→26.8%減、2ヵ月連続で減少し過去最大の減少率<前月は0.9%減、6ヵ月平均は4.3%減
・服飾→50.5%減、2ヵ月連続で減少し過去最大の減少率<前月は1.6%減、6ヵ月平均は8.4%減

――以上、米3月小売売上高は、前代未聞の落ち込みを記録しました。服飾などは前月比で売上高が半減しており、服飾メーカーの破綻などを表す“小売の終末(retail apocalypse)”に拍車を掛けそうです。春を迎え外出禁止措置が緩和された時の反動増に期待が掛かるものの、4月4日までの新規失業申請件数が2月時点の労働人口の約1割に相当する水準に膨らむ状況では、一時的にとどまりかねません。

お先真っ暗な数字が並ぶなか、ひときわ存在感を放ったのが食品・飲料。食品関連の注文急増を受けアマゾンはネット通販の強みもあり、合わせて17.5万人の新規採用を発表するはずで、株価も前日に最高値更新済みです。また、一般雑貨も生活必需品の需要急増を追い風に百貨店以外が大健闘。公共衛生上の危機を迎え、ヘルスケアも強い伸びとなりました。建築・庭園も増加は、自宅に長くいる方々の間でDIY需要が高まった証左と言え、東京都もホームセンターを休業要請の対象外としたのは正解でした。

今回の惨憺たる結果を受け、JPモルガンのマイケル・フェローリ米国担当首席エコノミストは「世界中のトイレットペーパーを使っても拭い去れない悪化」と評します。また、1~3月期の個人消費の前期比年率は17.3%減と試算した上で「Q1の実質GDP成長率は、当社の予測値10%減に近い数字となる」と分析。4~6月期成長率については、引き続き「40%を超えるマイナス」を予想します。トランプ政権、そして外出禁止措置を講じる知事が経済活動の正常化に取り組み始めましたが、Q2の大幅な落ち込みを回避する可能性は現状、極めて低そうです。
(カバー写真:The National Guard/Flickr)

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