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【追記】米3月鉱工業生産、コロナ禍の需要蒸発で戦後最大の落ち込み

by • April 16, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off3116

Industrial Production Plummets Most Since 1946 As Demand Disappears.

米3月鉱工業生産指数は前月比5.4%低下し、市場予想の4.0%の低下を下回った。前月の0.5%の低下(0.6%の上昇から下方修正)から悪化し、過去4ヵ月間で3回目の低下となっただけでなく、1946年以来の激しい落ち込みなる。新型コロナウイルス感染拡大を受け3月に大半の州が外出禁止措置に踏み切り、需要”蒸発“とサプライチェーン問題により工場は閉鎖を余儀なくされ、さらに渡航禁止から航空機も打撃を負い、製造業が著しく悪化。3月の製造業生産指数は6.3%低下し、市場予想の3.2%を下回った。前月の0.1%の低下(修正値)と合わせ3ヵ月連続で低下しただけでなく、こちらも1946年2月以降で最悪となった。

鉱工業生産指数の前年比5.5%低下し、過去7ヵ月間で6回目のマイナスとなった。製造業も6.6%低下、9ヵ月連続のマイナスに。それぞれ、2009年11月、2009年10月以来の低水準を記録した。

稼働率は72.7%と、市場予想の74.0%に及ばなかった。前月の77.0%から急低下し、2010年4月以来の水準へ落ち込んだ

チャート:鉱工業生産は製造業、稼働率と合わせ金融危機以来の低水準。

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(出所:My Big Apple NY)

内訳をみると、製造業(全体の75.1%)が3ヵ月連続で低下。そのうち新型コロナウイルス感染拡大の煽りから、耐久財が9.1%低下、前月の0.2%の上昇から急激に悪化した。非耐久財も3.2%低下、2ヵ月連続で落ち込んでいる。鉱業(全体の14.2%)は、20ドル割れが迫った原油安が響き2ヵ月連続で弱い。公益(全体の10.4%)も3ヵ月ぶりに上昇した前月からマイナスに転じた。

■製造業 6.3%の低下、3ヵ月連続で低下<前月は0.1%の低下、6ヵ月平均は1.0%の低下

▽耐久財 9.1%の低下、過去4ヵ月間で3回目の低下<前月は0.2%の上昇、6ヵ月平均は1.5%の低下

・コンピュータ/電子部品 1.9%の低下、5ヵ月ぶりの低下<前月は01.3%の上昇、6ヵ月平均は0.3%の上昇
・電気製品 2.2%の低下<前月は1.8%の上昇、6ヵ月平均は0.1%の低下
・一次金属 2.8%の低下、3ヵ月連続で低下>前月は3.6%の低下、6ヵ月平均は0.9%の低下
・木材 4.2%の低下、4ヵ月ぶりに低下<前月は0.1%の上昇、6ヵ月平均は0.4%の低下
・機械 5.6%の低下、3ヵ月連続で低下<前月は0.4%の低下、6ヵ月平均は1.0%の低下
・航空機/輸送機 8.1%の低下、3ヵ月連続で低下<前月は2.1%の低下、6ヵ月平均は2.9%の低下
・組立金属 8.3%の低下、3ヵ月ぶりの低下<前月は0.9%の上昇、6ヵ月平均は1.4%の低下
・家具関連 9.9%の低下<前月は1.1%の低下、6ヵ月平均は1.4%の低下
・自動車関連 28.0%の低下、3ヵ月連続ぶりに低下<前月は3.2%の上昇、6ヵ月平均は3.6%の低下

▽非耐久財 3.2%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は0.3%の低下、6ヵ月平均は0.4%の低下

・食品/飲料/タバコ 0.8%の低下<前月は0.1%の上昇、6ヵ月平均は0.2%の上昇
・化学品 1.7%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は0.7%の低下、6ヵ月平均は0.5%の低下
・石油製品 5.9%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は1.0%の低下、6ヵ月平均は0.8%の低下
・プラスチック/ゴム 7.1%の低下<前月は0.5%の上昇、6ヵ月平均は0.9%の低下
・繊維 14.1%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は0.7%の低下、6ヵ月平均は2.3%の低下
・服飾 18.2%の低下、3ヵ月ぶりに低下<前月は2.0%の上昇、6ヵ月平均は2.9%の低下

■公益 3.9%の低下、過去4ヵ月間で3回目の低下<前月は7.0%の上昇、6ヵ月平均は0.5%の低下

・電力 3.8%の低下、過去4ヵ月間で3回目の低下<前月は5.8%の上昇、6ヵ月平均は0.7%の低下
・天然ガス 4.5%の低下、過去4ヵ月間で3回目の低下<前月は13.2%の上昇、6ヵ月平均は0.9%の低下

■鉱業 2.0%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は1.3%の低下、6ヵ月平均は0.5%の低下

――米3月鉱工業生産は予想を超える急低下となり、新型コロナウイルス感染拡大が与える供給側の爪痕の大きさを確認しました。製造業生産と実質GDP成長率の相関性を踏まえると、エコノミスト予測通り大幅なマイナス成長となるに違いありません。

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(作成:My Big Apple NY)

さらに、4月のNY連銀製造業景況指数もマイナス78.2と、前月からの下げ幅である約57ポイントと合わせ、文句なしの過去最悪を更新。新規受注に始まり雇用、設備投資見通しなどと合わせガタ落ちです。

チャート:NY連銀製造業景況指数は真っ逆さま。3月にはNYに先行し、原油安の煽りを受けてダラス連銀製造業景況指数が急落。

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(作成:My Big Apple NY)

今回の鉱工業生産をみると自動車・部品の著しく低下し、自動車メーカーだけでも惨憺たる有様です。

▽フォード・モーター
(4/13に暫定決算発表)
・売上高は前年比15.7%減の約340億ドル
・税引き前の損失は約6億ドルと、前年同期の11億6,400億ドルの黒字から、赤字転落
・1~3月期の世界販売台数は前年同期比21%減
・現金保有高は4月9日時点で300億ドル(154億ドルの借入含む)
・3月に6億ドルの配当支払い停止

(その他)
・3月下旬に中国以外の全ての生産拠点の操業を停止
・金融機関の融資枠から154億ドル借入
・正社員の給与20%支払い延期

▽GM
・1~3月期販売台数は前年比7.1%減の61万8,335台
・北米などでの操業停止
・世界全体での正社員6.9万人の給与を20%支払い延期、取締役の場合は補填せず

▽フィアットクライスラー
・正社員の給与を向こう3ヵ月にわたり20%削減、CEOは50%、取締役は30%削減

約2.2兆ドルの景気刺激策とFedの約2.3兆ドルの緊急資金供給措置は、企業の資金繰りを支援する内容ですが、急激な経済の冷え込みを抑えられのか、需要の蒸発がいつまで続くか判然としない状況では未知数。トランプ政権やNY州などの知事は、経済活動の再開に向け動き始めましたが、大企業からレストランまでコロナ後の対策費にかさむ利益を確保できるかも不透明で、生産活動の足を引っ張りかねません。

(カバー写真:Thomas Hawk/Flickr)

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