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米6月ADP全国雇用者数は2ヵ月連続で大幅増も、7月に再び減速か

by • July 2, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off2231

Private Jobs Surge 2-Month In A Row, But Outlook Remains Uncertain.

6月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、ISM製造業景況指数などをおさらいしていきます。

米6月ADP全国雇用者数は前月比236.9万人増となり、市場予想の290万人増を下回った。とはいえ、前月分が276.0万人減から306.5万人増へ上方修正されており、2ヵ月連続で大幅増を達成。過去最悪だった3月の1,955.7万人減を相殺するにはまだ距離を残すが、経済活動の再開を受け労働市場も着実な改善が見て取れる。ただ、6月26日のテキサス州とフロリダ州を始め7月1日時点で少なくともマスク着用義務化を含め、23州が経済活動再開の一時停止や規制再導入に踏み切っており、7月に減速に転じるリスクをはらむ。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

チャート:ADP全国雇用者数、2ヵ月連続で百万人単位の増加を達成

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が191.2万人増と前月の240.3万人増(修正値)に続き、好結果となった。内訳は以下の通りで、これまで減少分の約半分を占めた娯楽・宿泊が、今度は増加のうち約4割貢献している。詳細は、以下の通り。

・娯楽/宿泊→96.1万人増、4ヵ月ぶりに増加<前月は123.2万人増
・教育/健康→28.3万人増、4ヵ月ぶりに増加<前月は42.1万人増
・貿易/輸送→28.8万人増、4ヵ月ぶりに増加<前月は36.2万人増
・その他→21.5万人増、4ヵ月連続ぶりに増加<前月は26.9万人増
・専門サービス→15.1万人増、4ヵ月ぶりに増加>前月は12.5万人増
・金融→6.5万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は3.2万人増
・情報→5.0万人減、5ヵ月連続で減少<前月は3.8万人減

財部門(製造業、建設、鉱業)は45.7万人増と、前月の66.2万人増(修正値)に合わせ、2ヵ月連続で急増した。内訳をみると、建設が最も増加に寄与し、製造業も増加。一方で、鉱業のみ減少トレンドを保った。

・建設 39.4万人増、2ヵ月連続で増加<前月は39.4万人増
・製造業 8.8万人増、少なくとも7ヵ月連続で減少<前月は22.0万人増
・鉱業 2.6万人減、減少トレンドを維持<前月は2.0万人減

ADPリサーチ・インスティチュートのアフ・イルディルマス共同ヘッドは、結果を受け「中小企業で雇用が回復した」と指摘した。雇用が回復する過程で「特に失業者が多かった業種での改善する」と見込み、今回の雇用増も「70%が娯楽・宿泊と貿易、建設だった」と振り返った。

――確かにADPは良好な数字でしたが、思い起こせば4月雇用統計での雇用減の約37%を娯楽・宿泊が、5月の雇用増の約半分も同業種が占めていました。2ヵ月連続で力強い数字が出たとしても、V字型回復を達成するかは引き続き微妙な情勢と言えるでしょう。

▽米6月チャレンジャー人員削減数、単月で最多更新も採用予定数も増加

米6月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で約4倍増の17万219人と4ヵ月連続で急増した。前月の39万7,016人からは57%増となり、単月で過去最多を更新。ただし、4月20日のテキサス州を始め全米50州が経済活動の再開に着手するなか、過去最悪の4月と比べれば65%減となる。

チャート:人員削減予定数は前月からは57%減

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(作成:My Big Apple NY)

4~6月期は、前年同期比約8.8倍増の123万8,364人だった。前期比では約3.6倍増となっただけでなく、2001年7~9月期から約2倍増を記録し過去最多を更新した。

1~6月までは前年同期比4倍増の158万5,047人だった。これは、金融危機時の89万6,675人を77%上回る。30業種別で、雇用削減で前年割れを迎えたのは医薬品で73%減の1,116人、次いで化学が63%減の284人、金融が40%減の7721人だった。

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は「経済活動の再開に合わせ雇用削減は減少傾向にある」との見解を寄せた。ただし「感染者数が増加する上、何百万人もの失業者を抱え、失業保険の上乗せが失効を迎えるなか、消費者部門を始め企業支出が減少する見通し」と予想。経済活動の再開に合わせ、再稼働させた企業の間でも「再び店舗などの閉鎖を余儀なくされている」と悲観的な見方を寄せた。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。なお、5月は1位が娯楽・宿泊、2位が小売、3位がサービス、4位が航空・防衛、5位が資本財だった。

1位 娯楽・宿泊 9万2,954人(全体の54.6%)
2位 政府 2万4,911人(全体の17.3%)
3位 教育 7,416人(全体の4.4%)
4位 サービス 7,076人(全体の4.2%)
5位 航空・防衛 6,274人(全体の3.7%)

州別動向は、年初来で以下の通り。なお、5月時点では1位がIT企業を多く抱えるカリフォルニア州、2位が全米で感染者最多のNY州、3位は観光地で知られるフロリダ州、4位は全米で経済活動再開が最も早かったテキサス州、5位は製造業比率の高いオハイオ州だった。

1位 カリフォルニア州 30万1,813人(全体の19.0%)
2位 ニューヨーク州 18万4,199人(全体の11.6%)
3位 フロリダ州 13万7,057人(全体の8.6%)
4位 テキサス州 11万6,578人(全体の7.4%)
5位 オハイオ州 8万1,130人(全体の5.1%)

リストラ実施の理由別ランキングは、単月で以下の通り。なお、5月は1位が新型コロナウイルス、2位が市場環境、3位が需要鈍化、4位が閉鎖、5位が油価の下落だった。2019年は主に再編、閉鎖、コスト削減、契約切れが上位に入った。

1位 市場環境 8万9,902人(全体の52.8%)
2位 コスト削減 2万8,624人(全体の16.8%)
3位 新型コロナウイルス 2万7,314人(全体の16.0%)
4位 需要鈍化 1万967人(全体の6.4%)
5位 自発的退職 4,319人(全体の2.5%)

採用予定数は、前年同月比で約7.5倍増の7万5,454人だった。前月の3万8,981人から約2倍増と、力強い伸びを維持した。5月単月では、少なくとも2015年以降で最大を記録した。チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社によれば、ヘルスケアが7割近くを占めたという。

セクター別では、以下の通り。なお、5月の1位は娯楽・宿泊、2位は通信、3位はテクノロジー、4位は小売、5位は資本財だった。

1位 ヘルスケア 5万197人(全体の66.5%)
2位 政府 1万52人(全体の13.3%)
3位 航空・宇宙 5,166人(全体の6.8%)
4位 通信 5,030人(全体の6.7%)
5位 服飾 2,000人(全体の2.7%)

――経済活動の再開に沸いた5月ですから好結果となるのは当然で、問題は7月です。6月25日のテキサス州を皮切りに、7月1日時点で少なくとも23州で経済活動再開を一時停止あるいは規制の再導入に踏み切りました。6月の雇用統計が良好な数字となっても、7月に雲行きが怪しくなる見通しで、楽観は禁物と言えるでしょう。

▽米6月ISM製造業景況指数、4ヵ月ぶりに分岐点回復も雇用は50割れ

米6月ISM製造業景況指数はと52.6と、市場予想の49.8を上回った。前月の43.1を上回り、4ヵ月ぶりに分岐点を回復している。5月20日に全米50州で経済活動の再開に着手するなか、コロナ禍の落ち込みを相殺した格好だ。項目別をみると、生産、新規受注、仕入れ価格が分岐点へ戻し、入荷遅延はサプライチェーン途絶緩和を背景に上げ幅を縮小した。ただし、雇用や新規輸出受注は50割れを維持し、需要の弱さを確認している。詳細は、以下の通り。

・生産 57.3、4ヵ月ぶりに分岐点回復>前月は33.2
・新規受注 56.4、5ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月は31.8
・雇用 42.1、11カ月連続で分岐点割れ>前月は32.1、

・在庫 50.5、2ヵ月連続で分岐点乗せ>前月は50.4
・新規輸出受注 47.6、4ヵ月連続で分岐点割れ>前月は41.3
・仕入れ価格 51.3、5ヵ月ぶりに分岐点を回復>前月は40.8

・入荷遅延 56.9<前月は68.0
・受注残 45.3>前月は38.2

ISMのティモシー・フィオーレ会長は、結果を受け「新型コロナウイルス・パンデミックによって生じた混乱期を経て、拡大期に入ったと想定される」とコメントした。また「ネガティブな回答1に対し、ポジティブは1.3と前月と逆転した」と指摘。その上で、特に好調な業種として食品・飲料・タバコのほかコンピュータ・電子部品、化学品などを挙げた。

今回、18業種別でビジネス拡大を報告したのは13業種(繊維、木材、家具、印刷関連、服飾・革製品、食品・飲料・タバコ、コンピュータ・電子部品、プラスチック・ゴム、化学、雑貨、非金属鉱物品、紙製品、電気製品)と、前月の4業種から増加した。一方で、4業種(輸送機器、一次金属、組立金属、機械)が縮小し、前月の14業種から大幅に減少した。

米6月IHSマークイット製造業PMI確報値は49.8と、速報値の49.6から上方修正された。前月の39.8を上回り、2009年3月以来の落ち込んだ4月の27.1から急回復した。

(カバー写真:MTA/Flickr)

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