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米1月住宅着工件数が減少でも、木材先物は最高値のワケ

by • February 18, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off5080

Housing Starts Decline For The First Time In 5 Month, But Lumber Futures Hits Record High.

米1月住宅着工件数と、米2月NAHB住宅市場指数をおさらいしていきます。

米1月住宅着工件数は年率158.0万件と、市場予想の166万件に届かなかった。前月の168.0万件(166.9万件から上方修正)を6.0%下回り、5ヵ月ぶりに減少した。

前年比でも2.3%減と、5ヵ月ぶりに減少した。米2月NAHB住宅市場指数がナイキのロゴ字型(スウッシュ型)急回復を遂げた後、原材料価格や人件費の高騰などを背景に伸び悩むように、住宅着工件数も増加が一服した格好だ。

内訳は以下の通り。

・一戸建て→前月比12.2%減の116.2万件と9ヵ月ぶりに減少、前年比は17.5%増と8ヵ月連続で増加
・複合住宅→前月比17.1%増の41.8万件と過去4ヵ月間で3回目の増加、前年比は33.4%減と6ヵ月連続で減少

・4大地域別→前月比で3地域で減少、3地域で増加していた前月と逆の展開となった。今回は複合住宅が多い北東部のみ、前月比2.3%増と増加に転じた。他は全て減少し中西部は12.3%減、西部は11.4%減南部は2.5%減だった。

チャート:住宅着工件数、2006年以来の高水準近くで推移

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(作成:My Big Apple NY)

米1月建設許可件数は188.1万件となり、市場予想の168.8万件を上回った。前月の170.4万件(170.9万件から下方修正)を10.4%上回り、2006年5月以来の高水準を記録している。hipsturbiaに象徴される郊外への引っ越し加速を背景に、3ヵ月連続で増加している。内訳をみると、一戸建てが11.8%増の83.4万件と3ヵ月ぶりに増加した半面、複合住宅は13.4%減の40.7万件と減少に転じた。建設許可件数は前年比では122.5%増と、7ヵ月連続で増加したなかで最も高い伸びとなった。

米1月建設中件数は128.0万件と、前月の127.2 万件(修正値)を0.6%上回った。8ヵ月連で増加し、2006年9月以来の高水準に達した。前年比では6.4%増と、2019年6月以降の増加基調を維持している。内訳をみると、一戸建てが1.4%減の49.7万件と4ヵ月連続で減少したほか、複合住宅は横ばいの91.0万件と減少を2ヵ月連続で止めた。

チャート:建設許可件数と建設中件数そろって2006年以来の高水準

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(作成:My Big Apple NY)

――住宅着工件数の一戸建てのうち75%が住宅市場に流入すると試算されるため、87.2万件が販売向けとなる見通しです。足元の新築販売件数の84.2万件を小幅に上回る程度なだけに、中古住宅販売件数と合わせ在庫不足の解消に役立つかは微妙な情勢。住宅価格がさらに上昇してもおかしくありません。。

▽米2月NAHB住宅市場指数、高止まりも原材料価格の高騰が重石

米2月NAHB住宅市場指数は84となり、市場予想並びに前月の83を上回った。しかし、コロナ禍を経て低金利と郊外への引っ越し需要を受け過去最高をつけた20年11月の90.0を下回ったままだ。内訳は以下の通り。

・一戸建て現況指数 80<前月は83、6ヵ月平均は85.0
・見通し指数 90=前月は90、6ヵ月平均は91.0
・客足の動向を表す見込み客指数 72>前月は68、6ヵ月平均は73.0

チャート:NAHB住宅市場指数、スウッシュ型の回復を経て高止まり

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(作成:My Big Apple NYが作成)

発表元である全米ホームビルダー協会(NAHB)のチャック・フォーク会長は「木材価格が継続的に上昇し過去最高値を更新した結果、一部の建設業者は在庫が過去最低水準にあるにも関わらず、建設計画を中断せざるを得ない」と指摘。その上で「建設業者は、手頃な価格帯の住宅を求める消費者支援を狙った、住宅価格高騰をめぐる規制やその他政策動向を注視している」とコメント、バイデン政権への警戒感をにじませた。

NAHBのロバート・ディエス首席エコノミストは「人口動態を背景に需要は堅調で、住宅ローン金利も低水準にあり、且つ郊外への引っ越し意欲も高いが、今年の建設活動は①コスト増、②サプライチェーン問題、③規制強化――を背景に減少する」と見込む。実際「前述の3つの要因を受け、一部の建設業者は生産を拡大できずにいる」と付け加えた。

――NAHBの副会長やチーフエコノミストが言及するバイデン政権の規制強化については、①最低賃金の引き上げ、②環境規制強化、⓷不動産業者への規制強化――が挙げられます。特に③については、民主党下院議員が成功報酬に課す税区分を”キャピタルゲイン税”から”所得税”に変更する法案を提出、現状では所得税の最高税率が37%に対しキャピタルゲイン税は20%ですから、不動産業者にとっては大幅増税となります。不動産業者の利益が圧迫され、手数料引き上げにつながったとしても、別の規制が強化されるリスクをはらみ、イタチごっこになりかねません。

興味深いことに、バイデン政権が提示した追加経済対策第3弾では1人当たり1,400ドルの個人給付が盛り込まれ、4人家族であれば5,600ドルの大判振る舞いとなり、住宅購入の頭金を補填できそうなのですが、全く言及されていません。これは”財政圧迫→金利上昇→住宅ローン金利押し上げ”の構図を描いているためではないでしょうか。

バイデン政権の規制強化などに加え、建設業者の頭を悩ますのはコスト増。コロナ禍で移民の流入も減少するほか、感染リスク防止、さらには手厚い失業保険などを受け、労働者の賃金は上昇中です。その上、木材先物価格が過去最高値を更新中。18日には遂に1,000ドルを突破し終値は1,004.5ドルと、3ヵ月から価格は2倍に跳ね上がりました

チャート:木材価格Random Length Lumber Futures)の推移

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(作成;My Big Apple NY)

米1月住宅着工件数のうち一戸建てが前月比12.2%減少したとはいえ、建設中断と春にかけての需要拡大が見込まれたためです。さらに、建設許可件数や建設中件数をみても2006年以来の高水準ですから、需要の力強さは疑いようもありません。

本来であれば、①カナダ産の木材への関税、20年12月に20%→9%に引き下げ、②新旧、木材加工工場の操業開始及び再開、③金利上昇や価格高騰による住宅需要低下――を手掛かりに、木材価格は下落するはず。しかし、春の到来とともにワクチン普及が広がれば、住宅市場になだれ込む潜在購入者が増えてもおかしくありません。建設を中断した業者と価格高騰の我慢大会を制するのは、果たしてどちらでしょうか?

(カバー写真:Doc Searls/Flickr)

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