50987664762_592fcb5aca_c

大忙しのバイデン大統領、インフラ計画の議会攻略にこの5人を指名

by • April 12, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2452

Biden’s “Jobs Cabinet” Will Sell GOP The American Jobs Plan.

米国雇用計画は、現代のニューディール政策だ(American Jobs Plan: ‘My Generation’s New Deal’)」――ニューヨーク・タイムズ紙は、バイデン大統領が3月31日にインフラ計画「米国雇用計画(The American Jobs Plan)」を公表した翌日にこのような記事を掲げました。そこには、発表からわずか1日で読者から寄せられたインフラ計画への、並々ならぬ思いと希望が溢れ「ルーズベルト時代のようなニューディール政策のような理念と投資が、将来に勝利をもたらすカギとなる」ともつづられていました。

既報の通り、インフラ計画は3本柱すなわちインフラ再建+気候変動対策+雇用創出で成り立っております。そこへきて、さらに競争力向上、格差是正、医療充実などを含み「盛りだくさん」という言葉がピッタリです。例えば、主な内容を見てもご覧の通り自宅や地元での医療関連サービスが含まれています。特に介護士について、バイデン政権はインフラ計画の資料にて「平均時給が12ドルに過ぎない」と指摘、民間サービスの非管理職・生産労働者の平均の約25ドルを大きく下回るだけに賃金引き上げも目指します。この辺り、ラジオNIKKEIのこちらでもご説明させて頂いた通りです。

チャート:インフラ計画の概要

i-chart
(作成:My Big Apple NY)

盛りだくさんな内容にリベラル派は拍手喝采で迎えておりますが、手厚い内容を受け共和党は「インフラストラクチャーの範疇を超えている」と非難轟々。米上院では、共和党のマコーネル院内総務が「最後まで戦い抜く」と徹底抗戦の構えをみせるだけでなく、ナンバー4のロイ・ブラント議員(ミズーリ)が「従来のインフラに相当する部分は3割程度だから、6,150億ドルで十分だろう」と息巻いております。

ひとまずバイデン政権は共和党の協力を得る方針を打ち出しているため、7月4日の成立を目指し政治力を駆使した交渉を展開するのでしょう。

しかし、4月16日の日米首脳会談に加え、22~23日には気候変動サミットを予定し、国内向けには予算教書演説や上下両院合同会議での議会演説、インフラ計画との2本立てとなる育児・医療などを軸とした経済対策発表なども控えるだけに、バイデン大統領がそれぞれ説得工作を仕掛けるにはあまりにも無理がありますよね?

そういうわけで、バイデン氏は自身のメッセンジャーとして米国雇用計画=アメリカン・ジョブズ・プランをもじって「ジョブズ・キャビネット」を発足させました。メンバーはこちらの5名です。

チャート:ジョブズ・キャビネットの5名

I-jc
(作成:My Big Apple NY)

レモンド商務長官は民主党知事協会会長でしたから知事出身の共和党議員を含めた議会のパイプ役として、期待も大きいでしょう。ブティジェッジ運輸長官は、マッキンゼーのコンサルタントだった経歴を生かし、縦横無尽に動いてくれそうです。エネルギー長官のグランホルム氏はミシガン州知事として2期を満了、金融危機後のデトロイトを率い復活に導いた実績が役立つ見通し。ウォルシュ労働長官は、21歳で労働組合の北アメリカ労働者国際連合に加入し地元支部で代表になった経歴が光るように、全体をまとめていく力に優れているに違いありません。ファッジ住宅都市開発長官は、元連邦議会黒人幹部会の会長として、存在感をいかんなく発揮するのでしょう。

ジョブズ・キャビネットを用意する一方で、シューマー上院院内総務の報道官が明らかにしたように、超党派での成立が困難と判断すれば3月11日に発効した1.9兆ドルの追加経済対策と同様に、“財政調整措置”を活用した成立させる方針です。本来、同措置は歳入・歳出・債務に直結する観点から利用は年度に1回ですが、追加経済対策で通した予算決議案の修正版とみなし、適用可能と判断しました。

与党での単純過半数による成立を選んだとしても、成立への道のりは平坦ではありません。民主党指導部は、追加経済対策でも失業保険の上乗せ額を300ドルに抑え、且つ所得上限に口を出した、ジョー・マンチン議員(ウエストバージニア州)など保守派との交渉に心血を注ぐ必要があります。マンチン氏など同党保守派は法人税引き上げを28%でなく25%とすべきと主張、足元ではウォール街もそのような見方に傾きつつあります。ついでに2兆ドル以下となる観測も高まり、米金利上昇に一服感をもたらす状況です。

また、米国民のインフラ計画への支持が芳しくない点も気掛かり。超党派のシンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」のマクギネス委員長も、ツイッターで「10年間で9,000億ドルの財政赤字を増やし・・・債務超過に陥る」と批判していました。バイデン政権は世論に配慮しながら保守派との中間点を探っていくことでしょう。

(カバー写真:The White House/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.