Retail Sales Decline In May, Suggesting Consumers Spend More On Services.
米5月小売売上高は前月比1.3％減と、市場予想の0.5％減より下げ幅を広げた。前月の0.9％増（横ばいから上方修正）を下回り、年初来で2回目の減少となった。バイデン政権下で成立した現金給付効果の剥落に加え、サプライチェーン障害で生産が需要に追い付かない環境やワクチン普及、経済活動の再開に合わせ、米国人の消費がモノからコトへシフトしつつある可能性を示唆した。一方で、米4月貿易収支で消費財の輸入が減少していたように、ペントアップ需要が一巡したシナリオも想定される。小売売上高ではサービス消費の網羅は限定的で、いずれにしても今後伸び悩む可能性がありそうだ。
自動車とガソリンを除いた場合は前月比0.7％減と、市場予想の0.5％減を下回った。前月の0.1％増（0.8％減から上方修正）に届かず。国内総生産（GDP）の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高（自動車、燃料、建築材、外食などを除く）は0.7％減と、市場予想の0.6％減より下げ幅を拡大。前月の0.4％減（1.5％減から上方修正）を下回り、年初来で2回目の減少となる。
チャート：小売売上高、4月分が上方修正されたため、年初来では2回目の減少に
チャート：前年比はベース効果で過去最高の伸びとなった4月から鈍化
（作成：My Big Apple NY）
前月比の内訳をみると、主要13カテゴリー中5項目増加し、前月の6種から減少した。今回、最も力強く増加したのは経済活動の再開の恩恵を受け服飾で、続いてワクチン普及の追い風もあって前月に続き外食が力強い。その他、ヘルスケアや食料・飲料、コロニアル・パイプラインのサイバー攻撃により3ドルを突破したガソリンスタンドが支えた。一方で半導体供給不足に伴う減産の影響で自動車・部品のほか、電気製品や一般小売、住宅市場の減速により家具、建築・園芸が弱かった。前月比の項目別詳細は以下の通り。
（プラス項目）
・服飾→3.0％増、年初来で3回目の増加＞前月は2.0％減、6ヵ月平均は4.7％増
・外食→1.8％増、3ヵ月連続で増加＜前月は4.5％増、6ヵ月平均は4.0％増
・ヘルスケア→1.8％増、3ヵ月連続で増加＞前月は1.0％増、6ヵ月平均は1.9％増
・食料/飲料→1.0％増、3ヵ月連続で増加＞前月は0.7％増、6ヵ月平均は0.5％増
・ガソリンスタンド→0.7％増、年初来で4回目の増加＞前月は1.1％減、5ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は4.1％増
（マイナス項目）
・無店舗（主にネット）→0.8％減、2ヵ月連続で減少＜前月は0.3％減、6ヵ月平均は1.4％増
・スポーツ用品/書籍/趣味→0.8％減＜前月は0.3％減、6ヵ月平均は3.9％増
・家具→2.1％減、3ヵ月ぶりに減少＜前月は0.7％増、6ヵ月平均は2.5％増
・一般小売→3.3％減、2ヵ月連続で減少＜前月は2.2％減、6ヵ月平均は1.7％増（百貨店は1.6％増＞前月は0.6％減、6ヵ月平均は3.7％増）
・電気製品→3.4％減、3ヵ月ぶりに減少＜前月は1.5％増、6ヵ月平均は3.4％増
・自動車/部品→3.7％減、3ヵ月ぶりに減少＜前月は4.3％増、6ヵ月平均は3.5％増
・雑貨→5.0％減、2ヵ月連続で減少＜前月は0.6％増、6ヵ月平均は1.4％増
・建築材/園芸→2.3％減、2ヵ月連続で減少＜前月は5.9％減、6ヵ月平均は1.5％増
チャート：5月の品目別動向、服飾や外食がけん引も建築・庭園や家具など住宅市場の減速に伴う落ち込みが足を引っ張る
（作成：My Big Apple NY）
――5月小売売上高のうち、増加した5品目のうち裁量消費財は服飾のみとなりました。その他はサービス関連と、ガソリンや食料・飲料と生活必需品に分かれます。何より、住宅市場の減速が響き建築・園芸や家具が弱い。また、一般小売を始め、価格高騰と減産が響き自動車・部品も減少し、やはり裁量消費財の落ち込みが目立ちます。こうしてみると、やはりペントアップ需要が一巡したようにみえますが、7月から開始する扶養控除の影響で逆に消費が活性化するのか、失業保険給付上乗せ措置の9月6日期限切れやFedのテーパリング協議の影響と合わせ、見極めが必要です。
その一方で、20年2月との水準比較では、唯一減少トレンドをたどってきた外食がようやくプラスに転じました。夏休み効果もあって、外食が今後は小売売上高の増加を牽引するのか、底力が試されます。
チャート：20年2月時点との比較
（作成：My Big Apple NY）
（カバー写真：Metropolitan Transportation Authority of the State of New York/Flickr）
Comments
パウエル氏率いるFed、”変心”再びで市場に衝撃 Next Post:
米6月ADP全国雇用者数、採用予定者数まで幅広く好調な雇用統計を示唆
about the author: Sawako
