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米7月ADP全国雇用者数、採用予定者数そろって雇用鈍化のサイン点灯

by • August 5, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2262

ADP National Employment Report, Hiring Plans And Initial Claims All Suggest Slower Job Growth In July.

7月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。

米7月ADP全国雇用者数は前月比33.0万人増となり、市場予想の69万人増を大幅に下回った。前月の68.0万人増(69.2万人増から下方修正)から伸びはほぼ半減。1回以上のワクチン接種率が8月2日に全米の成人人口の70%に達する過程にあったが、デルタ株の感染拡大を背景に、これまで米雇用統計で就労者の回復を牽引してきた娯楽・宿泊や小売など、対面サービスを提供する業種で伸びが鈍化した可能性がある。全米では少なくとも25州で失業保険給付の上乗せ前倒し終了したが、NY市では飲食やジムなど屋内活動にワクチン接種証明書の提示が必要になり、米連邦政府職員を始めカリフォルニア州の公務員などワクチン接種が義務化され始めた。感染拡大や規制強化を背景に、失業保険給付上乗せが9月6日まで続く州では、潜在的な労働者が職場復帰を控えたとしてもおかしくない。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

チャート:ADP全国雇用者数、5ヵ月連続で増加

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が62.4万人増と前月の78.3万人増(修正値)を下回ったが、6ヵ月連続で増加した。内訳は以下の通り。

・娯楽/宿泊→14.0万人増、7ヵ月連続で増加<前月は33.2万人増
・教育/健康→6.4万人増、15ヵ月連続で増加<前月は11.1万人増
・専門サービス→5.4万人増、15ヵ月連続で増加<前月は5.5万人増
・貿易/輸送→3.7万人増、7ヵ月連続で増加<前月は3.6万人増
・その他→1.6万人増、7ヵ月連続で増加<前月は4.9万人増
・金融→0.9万人増、12ヵ月連続で増加>前月は0.7万人増
・情報→0.1人減、2ヵ月連続で減少=前月は0.1万人増

財部門(製造業、建設、鉱業)は前月比1.2万人増と6月の5.6万人増を下回った。ただし、5ヵ月連続で増加している。内訳は以下の通り。

・製造業→0.8万人増、5ヵ月連続で増加<前月は1.6万人増
・鉱業→0.3万人増、6ヵ月連続で増加<前月0.4万人増
・建設→0.1万人増、5ヵ月連続で増加<前月は3.6万人増

ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「労働市場の回復は引き続き、まだら模様だ」と振り返った。また「4~6月期の雇用増加ペース(3ヵ月平均は72.8万人増)を下回る」と指摘。最も増加した業種は5ヵ月連続で娯楽・宿泊だったが「伸びは鈍化」しており、デルタ株の感染拡大に伴い雇用のボトルネックが力強い回復の障害になりうると慎重な見方を寄せた。

▽米7月人員削減予定数、ITバブル期の2000年6月以来の低水準

米7月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で92.9%減の1万8,742人と、6ヵ月連続で前年比で減少した。前月比でも9.0%減と2ヵ月連続で減少。2000年6月以来の低水準となり、単月では過去最低を更新した。デルタ株の感染拡大が確認されるなかでも、経済活動再開に伴う需要拡大をにらみ企業は削減予定を手控えつつある。

年初来では、前年同期比87.5%減の23万1,603人と1997年以来の低水準を記録した。

チャート:人員削減予定数は単月で過去最低、年初来では1997年以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「健全な経済では回転率が高いが、足元で状況は行き詰っている」との見解を示した。その上で「6月の失業者は約950万人だったが、5月の求人数は約920万件に及び、企業と労働者のニーズに乖離がある」と指摘。デルタ株の感染拡大の影響については「状況を見守る必要があるが、企業は人員確保に努めており、解雇する公算は小さい」とまとめた。

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。前月は1位がヘルスケア、2位が教育、3位が輸送、4位が製薬、5位が自動車だった。今回、製薬でリストラが増加した背景として、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスはワクチン普及により新型コロナウイルス関連の試験などの需要が後退したためと説明。産業財は、サプライチェーンの途絶が影響したという。

1位 製薬 2,249人
2位 産業財 2,037人
3位 サービス 1,941人
4位 テクノロジー 1,488人
5位 ヘルスケア 1,384人

年初来では、以下の通り。前月までの年初来では1位が航空・防衛、2位が通信、3位がサービス、4位がエネルギー、5位は小売であり、今回と変わらない。

1位 航空・防衛 3万2,998人(前年同月は5万5,131人)
2位 通信 2万4,883人(同2万9,456人)
3位 サービス 1万9,918人(同12万1,741人)
4位 エネルギー 1万6,817人(同3万3,733人)
5位 小売 1万5,331人(同16万3,112人)

州別動向は、年初来で以下の通り。航空・防衛が最多だったことから、ボーイングが本社を置くワシントン州が1~7月に続き前年の圏外から1位となった。2位以下は4~6月通りだった。

1位 ワシントン州 3万8,499人(前年の年初来は7万7,265人)
2位 テキサス州 3万7,943人(同14万9,647人)
3位 カリフォルニア州 2万9,032人(同32万5,289人)
4位 ミズーリ州 1万2,166人(同3万575人)
5位 イリノイ州 1万1,922人(同4万9,062人)

リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通り。今回は、3位が再編となり前月の4位から浮上、逆に4位の閉鎖は3位から転落した。一方で、新型コロナウイルスは3~4月に6位だったが、今回は5月に続き7位だった。

1位 市場動向 4万8,047人
2位 需要低下 4万94,033人
3位 再編 4万864人
4位 閉鎖 3万9,689人
5位 M&A 1万252人

採用予定数は前年同月比で92.6%減の1万8.281人と、2019年6月以来の低水準だった。前月比では83.4%減と年初来で5回目の減少となる。年初来では前年同期比57.3%減の57万70人だが、これは2020年に経済活動停止の解除の反動で急増した前年の反動によるもので、2020年を外せば2017年以来の高水準となる。

チャート:7月の採用予定者数は2019年6月以来の低水準

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チャート:採用予定数、年初来では2017以来の高水準

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チャート:7月は、人員削減予定数が6ヵ月ぶりに採用予定者を上回る結果に

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、単月で以下の通り。前月は1位がサービス、2位が輸送、3位が娯楽・宿泊、4位が金融、5位が通信だった。

1位 輸送 7,063人
2位 航空・防衛 4,630人
3位 テクノロジー 1,852人
4位 食品 1,000人
5位 産業財 966人

年初来では、以下の通り。前月は1位が小売、2位がサービス、3位が政府、4位が娯楽・宿泊、5位がヘルスケアだった。

1位 小売 11万8,665人
2位 サービス 11万4,440人
3位 政府 6万6,230人
4位 娯楽・宿泊 5万7,362人
5位 ヘルスケア 3万694人

▽米新規失業保険申請件数、コロナ禍での最低を更新

7月31日週までの米新規失業保険申請件数は38.5万件と、市場予想と一致した。前週の39.9万件(修正値)を下回り、2週連続で減少。デルタ株の感染拡大により新規感染者数が約1ヵ月間で10倍近くも急増するなかでも、失業者の大幅増加を回避した格好だ。

7月24日週までの継続受給者数は293.0万人と、前週の329.6万人を下回り2020年3月14日週以来の低水準だった。少なくとも共和党知事を抱える25州で、バイデン政権下で成立した失業保険支給上乗せなど特例措置を当初予定の9月6日から前倒しで廃止されることとなった影響が顕在化した可能性がある。関連指標の果は、以下の通り。

・新規失業保険申請件数(7/31週)1.4万人減の38.5万件、2週連続で減少
・継続受給者数(7/24週)→前週比36.6万人減の293.8万人、5週連続で減少し2020年3月14日週以来の低水準
・失業者に占める被保険者の割合(同)→2.1%、前週の2.4%を下回り20年3月21週以来の水準に並ぶ
・PAU(同)→前週比1,416人増の9万4,476人

チャート:米新規失業保険申請件数は、20年3月14日週以来で低水準

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(作成:My Big Apple NY)

――米7月ADP全国雇用者数は市場予想を大幅に下回り、米7月採用予定者数も大幅に鈍化しました。採用予定者数の伸びが振るわなかった4月米7月チャレンジャー人員削減予定数が2000年6月以来の低水準だったとはいえ、雇用が伸び悩むシナリオが想定されます。採用予定数が強い数字の場合、雇用統計・NFPも連動する傾向があり(3月の採用予定者数:9.8万人→3月のNFP:78.5万人増)、逆も然り(5月:4.9万人増→5月のNFP:58.3万人増)また、雇用統計のサンプル週の米新規失業保険申請件数も42.4万件と、約2ヵ月ぶりの水準ヘゾ増加していました。7月のNFPをめぐっては、一部で100万人超えが予想されていたものの、雇用関連指標は7月も期待外れになりそうなサインが点灯してしまいました。

(カバー写真:Chris Yarzab/Flickr)

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