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岸田氏が新首相へ―米国は安定政権を、中国は関係改善を望む

by • September 29, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2285

Fumio Kishida Wins Japan’s Leadership Race,  To Become Japan’s 100th Prime Minister.

9月29日に行われた自民党総裁選で岸田文雄氏が勝利し、10月4日の召集の臨時国会で、第100代首相に就任する運びとなりました。日経平均は前日比639.67円安の2万9,544.29円と大幅続落しましたが、各国主要メディアがどのように報じたのか、みていきましょう。

〇ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙
「岸田文雄氏、次期首相に就任へ―Fumio Kishida to Become Japan’s Next Prime Minister」

日本のミサイル防衛強化を訴えた岸田文雄元外相(64歳)、次期総裁に就任へ。岸田氏は外相時代の2016年5月、オバマ氏による現職大統領として初めて被爆地・広島訪問で尽力。力強い日米同盟を支持すると同時に、中国の軍備拡大に懸念を表明する。また、コロナ感染拡大の行動制限によって打撃を受けた日本経済の回復を狙い、年内に数十兆円もの積極的な財政支出を打ち出す方針。岸田氏が当選した理由は、そのカリスマ性や画期的な政策より、自民党重鎮の支援を集めたことにある。岸田氏の最初の難題は、11月7日あるいは14日に予定する衆院選となる。

ニューヨーク・タイムズ紙
「日本の次期首相に、世論調査で後塵を拝した党の忠誠心が強い人物が就任へ―The Choice for Japan’s Prime Minister Is A Party Stalwart Who Lagged In Opinion Polls.」

自民党幹部は、世論調査や国民の希望を無視し、穏健派で党の忠誠心が厚く不人気だった菅首相と大差のない岸田文雄氏を選出。世論調査で後塵を拝した次期総裁に白羽の矢を立てたということは、11月に予定する衆院選で自民党は与党の勝利を確信しているかのようだ

AP
「岸田元外相、自民党総裁選で勝利し次期首相に就任へ―Ex-diplomat Kishida wins Japan party vote, to become new PM」

岸田氏は勝利演説で、コロナ感染拡大や経済低迷、人口減少など「国家の危機」に対応すると発言。日本の防衛支出については、香港と台湾への強硬姿勢をにらみ中国を意識し、能力と予算の拡大を主張。また、中国に対峙する自由で開かれたインド太平洋を推進する構え。経済については成長と分配を通じた「新資本主義」の下での格差縮小を目指す。CSISのマイケル・グリーン上級副所長兼日本部長は、結果を受け「問題は誰が首相になるかではなく、政治の安定化だ」と述べ、米国側として長期政権が望ましい姿勢をにじませた。

環球時報
「岸田氏が次期首相へ、双方の利益を鑑み対中政策で過激な言動を回避か―Kishida to be next Japanese PM, may not keep extreme rhetoric on China policy ‘for the good of both’」

もともとハト派だった岸田氏は一変して対中圧力強化に言及していたが、対中強硬派発言は総裁選を始め政治家の選挙対策の一環と言えよう。岸田氏がコロナ対策や経済回復に注力せざるを得ず、専門家は同氏が安定的な日中関係を模索すると見込む

朝鮮日報
「日本の新首相に岸田元外相…韓日慰安婦合意を主導」
岸田氏は安倍内閣で外相を務め、2015年の日韓慰安婦合意を主導。慰安婦や強制徴用問題に関し国際合意を順守する立場を示す。ただし、岸田氏はアジア・太平洋外交を強調する自民党の名門派閥「宏池会」を継承しており、衆議院選挙、参議院選挙で勝利し政権が安定すれば、日韓関係改善に期待も

――個人的には、やはり2012年12月から2017年8月にわたって外相を務めた経験が奏功すると期待したいですね。言わずもがな、2016年4月のG7外相の広島訪問を手掛かりに、同年5月のオバマ大統領(当時)も実現した功労者です。オバマ氏には、通訳を介さず英語で原爆ドームや折り鶴などの説明も行ったのだとか。ケリー特使とは外相時代に40回以上も会談しており、同氏を始めオバマ政権閣僚との関係は良好と想定され、バイデン政権も今回の結果を歓迎しているのではないでしょうか。

画像:G7外相、平和記念資料館を訪問し原爆死没者慰霊碑に献花

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(出所:外務省

画像:2016年4月、訪日したブリンケン国務副長官(当時)とも会談

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(出所:外務省)

オバマ氏の広島訪問の実績を基に、2016年5月にブルームバーグは「安倍首相の後継者」として紹介。木原誠二外務副大臣の言葉として、ケリー国務長官(当時)が原爆ドームを訪れたのは、岸田氏への信頼の証だったと評価しています。ただし、難点として経済政策の実績を上げてました。

一方、岸田氏といえば、2016年9月にG20首脳会議で安倍首相と習主席の会談をセッティングするなど日中の緊張緩和に動いたことでも知られますね。

ひたすら真面目で、穏やかな人柄と報じられる岸田氏。「全員野球で自民党が一丸となって総選挙、参院選挙に臨んでいこうではありませんか」と語った新総裁の下で、自民党が結束するのかは、11月7日あるいは14日の衆院選の結果で明らかになることでしょう。その間の10月30~31日にはG20首脳会議を控え、慌ただしい日々が続きます。

(カバー写真:MEAphotogallery/Flickr)

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