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米9月雇用統計、女性の雇用回復の遅れが鮮明に

by • October 10, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off1562

Women Still Suffers From The Slow Job Rebound Last Month.

米9月雇用統計は、非農業部門就労者数(NFP)が前月に続き市場予想を大幅に下回り、米失業保険給付上乗せが終了した後も労働参加率は低下しました。一方で、失業率は労働参加率の低下を一因に改善が進み、平均時給は伸びが加速し、あらためて賃上げ圧力を確認しています。一連の結果を受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)が11月にテーパリングを発表するシナリオは変わらない見通しです。

就業者数は政府が押し下げ失望的な結果に終わりましたが、業種別の就労者数の変化や平均時給を始め、人種や学歴別などでどのような結果になったのでしょうか?以下、詳細を追っていきます。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.5%上昇の26.15ドル前年比は5.5%上昇し、20年12月以来の高い伸びに。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び以上だったのは13業種中で5業種と、5~7月の7業種を下回った。1位は教育・健康と輸送・倉庫(1.0%上昇、3位は娯楽・宿泊(0.7%上昇)、4位は卸売と製造業(0.6%上昇)だった。なお、前月の1位はその他サービス、2位は輸送・倉庫、3位は娯楽・宿泊だった。一方で、9月はその他サービス(同0.1%の下落)、情報(同0.3%の下落)2業種で平均時給が前月比でマイナスだった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率が61.6%と6~8月の61.7%を下回ったように、働き盛りの男性(25~54歳)は白人の若年層を除き低下した。以下、季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.1%<前月は88.4%と20年3月以来の高水準、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.3%、7~8月に続き20年3月以来の高水準=前月は89.3%、20年2月は90.6%
・25~34歳 87.9%<前月は88.1%と20年3月以来の高水準、20年2月は89.0%
・25~34歳(白人) 89.2%<前月は89.3%、20年2月は90.7%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率は25~34歳の白人を除き低下

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性の労働参加率も、低下した。25~34歳は、20年2月以来の高水準だった7~8月の76.5%から75.9%へ下振れした。

・25~54歳 75.3%<前月は75.4%、20年2月は76.8%
・25~34歳 75.9%<前月は76.5%と2020年2月以来の水準を回復、20年2月は78.2%

一方で、男女ともに高齢者の労働参加率が前月に続き上昇した。65歳以上の労働参加率は男性が24.0%と20年11月以来の高水準に、女性も15.2%と5ヵ月ぶりの水準を回復しており、高齢者の場合は失業保険給付上乗せ終了を受け、労働市場に戻ってきたと考えられよう。

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で5.1%増の569.9万人(男性は247.9万人、女性は349.0万人)。前月から増加した背景は、男性が1.5%減少した一方で、女性が10.3%も大幅増加したためで、女性は3ヵ月連続で男性を上回った。

チャート:就職を望む非労働力人口、ゆるやかに減少トレンドが一服

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年を比較すると、ご覧の通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

チャート:人種別、25歳以上の大卒以上の割合

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(作成:My Big Apple NY))

人種別の労働参加率は、まちまち。デルタ株の新規感染者が8月末にピークアウトし、失業保険給付上乗せも終了するなか、アジア系とヒスパニック系は上昇した。逆に白人と黒人は低下した。

・白人 61.5%<前月は61.6%と20年10月以来の高水準、20年2月は63.2%
・黒人 61.3%<前月は61.6%と20年3月以来の高水準、20年2月は63.1%
・ヒスパニック系 65.7%、20年3月以来の水準に並ぶ>前月は65.6%、20年2月は68.0%
・アジア系 64.3%>前月は64.1%、7月は64.5%と19年11月以来の高水準
・全米 61.6%<前月は61.7%、20年3月以降の高水準に並ぶ、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、白人と黒人は低下

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、全ての人種で低下した。特に労働参加率が低下した黒人は前月比0.9%ポイントも急低下し、20年3月以来の水準となった。アジア系とヒスパニック系は、労働参加率が上昇したものの失業率も改善し、労働参加率に戻ってきた求職者の間で再就職を果たした人々が優勢だったことを示唆する。

・白人 4.2%、20年3月以来の低水準<前月は4.5%、20年2月は3.0%
・黒人 7.9%、20年3月以来の低水準>前月は8.8%、20年2月は6.0%
・ヒスパニック系 6.3%、20年3月以来の低水準<前月は6.4%、20年2月は4.4%
・アジア系 4.2%、20年3月以来の低水準<前月は4.6%、20年2月は2.4%
・全米 4.8%、20年3月以来の低水準<前月は5.2%、20年2月は3.5%

白人と黒人の失業率格差は黒人の失業率が労働参加率の低下を一因に大幅低下したため、3.7ポイントと前月の4.3ポイントから縮小し8ヵ月ぶりの低水準だった。しかし、雇用増がもたらした縮小ではなく、課題を残す。前月の3.4ポイントから拡大した。引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.8ポイント超えの水準を保つ。

チャート:黒人と白人の失業率格差、トランプ前政権期と比較して上昇続く

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、全て低下した。

・中卒以下 45.3%、3ヵ月ぶりの低水準<前月は45.8%<、20年2月は47.7%
・高卒 55.1%、6ヵ月ぶりの低水準<前月は55.3%、20年2月は58.3%
・大卒以上 72.1%<前月は72.3%、20年2月は73.2%
・全米 61.6%<前月は61.7%と20年3月以来の高水準を維持、20年2月は63.3%

学歴別の失業率は、中卒を除き低下中卒は労働参加率の低下にも関わらず、失業率が上昇したことになる。一方で、大卒と大学院卒の失業率はそれぞれ動労参加率も手伝って大幅低下し、大卒は20年3月、大学院卒はコロナ感染拡大直前の20年2月以来の水準を回復した。

・中卒以下 7.9%>前月は7.8%と20年3月以来の低水準、20年2月は5.8%
・高卒 5.8%、20年3月以来の低水準<前月は6.0%、20年2月は3.5%
・大卒 2.5%、20年3月以来の低水準<前月は2.8%、20年2月は1.9%
・大学院卒以上 2.1%、20年2月以来の低水準<前月は2.5%、20年2月は1.7%
・全米 4.8%、20年3月以来の低水準<前月は5.2%、20年2月は3.5%

チャート:学歴別の失業率、大卒は20年3月以来、大学院卒が20年2月以来の低水準

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(作成:My Big Apple NY)

--米9月雇用統計結果の通り、失業率は低下が優勢でしたが、労働参加率が下押ししたと想定され、芳しい内容とは言えません。米失業保険給付上乗せが終了すれば労働参加率が改善するかと思いきや、デルタ株感染拡大を一因に労働市場に戻ってこなかった可能性があります。翻って10月は、新規感染者の減少や米9月採用予定数が急増した通り、年末商戦の臨時雇用の押し上げにより改善が見込まれます。こうしたプラス要因が、米9月人員削減予定数で明らかになったようなワクチン接種義務化に伴うヘルスケア関連の雇用減少をどこまで相殺するか、そこが今後の課題になるでしょう。

そのほか今回、女性の労働市場復帰が困難になっている実態が浮き彫りとなりました。縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々をみると、女性が急増していましたね人種・男女別で20年2月時点との就労者数を比較すると、女性で労働市場の回復の遅れが顕著となっています。

チャート:人種・男女別、20年2月との就労者数の比較

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(作成:My Big Apple NY)

学歴別でみても、中卒のみ労働参加率低下にも関わらず失業率が上昇するなど、引き続き教育格差も確認できます。今回の結果はテーパリングの道筋を変える内容ではなかったものの、質的な改善余地をあらためて示したと言えるでしょう。

(カバー写真:Stephen Day/Flickr)

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