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米2月CPI、エネルギーや食品を始め広範囲で上振れを確認

by • March 10, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2995

Inflation Sets Fresh 40-year High As Energy And Food Push Prices.

米2月消費者物価指数(CPI)は前月比0.8%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.6%を上回り、2008年6月以来の高い伸びだった21年6月と9月の0.9%に迫る勢いとなった。WTI原油先物が90ドル台を突破する過程で、エネルギーが再び押し上げたほか、食品も供給制約を受けて一段と上昇し20年4月以来のレベルに加速。そのほか、ロシアが2月24日にウクライナ侵攻を開始したが、オミクロン株の新規感染者減少を追い風に航空運賃を始め、宿泊、自動保険、娯楽、服飾など外出関連の伸びが目立つ。住宅価格の高騰を一因に、家賃も1987年以来の高い伸びとなった。唯一、これまで上昇をけん引してきた中古車の伸びは、前月から下落に転じた。

内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が3.5%上昇し、前月の0.9%を超え4ヵ月ぶりの高い伸びとなった。ガソリンに至っては同6.6%もの大幅上昇、前月の同0.8%下落から一転し21年3月以来の急加速を記録した。なおエネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン価格は2月28日週に3.486ドルと2014年7月以来の水準へ急伸した。その他のエネルギーでは、電力など公益が0.4%下落、2014年3月以来の上昇率となった前月の2.9%から落ち込んだ。電力が1.1%下落し8ヵ月ぶりにマイナスとなり前月の4.2%の上昇から反転したためで、ガスは1.5%上昇し前月の0.5%下落を超え3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が前月比1.0%上昇、20年4月以来の伸びとなった。詳細をみると、前月に鈍化した肉類・卵・魚が1.2%と5ヵ月ぶりの加速をみせていた。なお、肉類の高騰を背景にバイデン政権は1月3日、寡占状態の食肉加工業者の間で競争を推進すべく、独立業者を支援するため10億ドル投じると発表した。そのほか、シリアル・パンが同1.1%上昇し20年4月以来の高い伸びとなった前月の1.8%に続き高止まりし、外食も0.7%と高水準にあった。

CPIコアは前月比0.5%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.6%を下回り、前月比では1982年6月以来の伸びへ加速した21年6月の0.9%以下が続く。

チャート:CPIの費目別寄与、前月比(21年12月は四捨五入前で0.575%に対し、1月は0.645%)

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、オミクロン株の感染収束を追い風に航空運賃の伸びが再加速したほか、宿泊は7ヵ月ぶりの伸び自動車保険も20年11月以来の高い伸び娯楽や服飾も上昇を支えた。また、CPIの23.6%を占める帰属家賃は、2016年10月以来の高い伸びを維持し、家賃に至っては21年8月の立ち退き猶予期間の撤廃を一因に、1987年12月以来の上昇記録をつけた。一方で、中古車は5ヵ月ぶりに下落した。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇費目)

・航空運賃 5.2%の上昇、4ヵ月連続でプラスとなり21年5月以来の高い伸び>前月は2.3%の上昇
・宿泊 2.2%の上昇、7ヵ月ぶりの高い伸び>前月は3.9%の下落
・自動車保険 1.2%の上昇、2ヵ月連続でプラスとなり20年11月以来の高い伸び>前月は0.9%の上昇
・娯楽 0.7%の上昇、2ヵ月連続で上昇<前月は0.9%と21年4月以来の高い伸び
・服飾 0.7%の上昇、5ヵ月連続でプラス>前月は1.1%と21年5月以来の高い伸び
・家賃 0.6%の上昇、プラスのトレンドを維持し1987年12月以来の高い伸び>前月は0.5%上昇
・住宅 0.5%の上昇、上昇トレンドを維持し3ヵ月ぶりの高い伸び=前月は0.3%の上昇
・帰属家賃 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持し2016年10月以来の高い伸びを維持>前月は0.4%の上昇
・新車 0.3%の上昇<前月は横ばい
・医療サービス 0.1%の上昇、8ヵ月連続でプラス>前月は0.6%と2019年10月以来の高い伸び
・教育 0.1%の上昇、3ヵ月連続で上昇=前月は0.1%

(横ばい、低下項目)

・中古車 0.3%の下落、5ヵ月連続にマイナス<前月は1.5%の上昇

CPIは前年比で7.9%上昇し、市場予想と一致した。前月の7.5%から一段と加速し、1982年1月以来の上昇率となる。CPIコアは同6.4%上昇し、市場予想の5.9%並びに前月の6.0%を超え、1982年8月以来の高い伸びを記録した。

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与など

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チャート:CPIとCPIコア、前年比

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(作成:My Big Apple NY)

――米2月CPIは電力や食品に加え、航空運賃を始め宿泊、自動車保険、娯楽、服飾、家賃などが押し上げ再加速しました。

経済活動の再開を受け物価の伸びが顕著な費目のうち、中古車は前月比で下落したものの20年2月比で54.4%上昇し、引き続きけん引役となっています。その他、肉類・魚・卵が同19.0%、新車(同13.7%)や肉類・卵・魚(同19.0%)と、さらに加速しました。

チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、20年2月からみた上昇率

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの14.9%を占める食費は、前年同月比で1979年ぶりの伸びを記録した肉類・魚・卵(前月:12.3%→2月13.0%)を筆頭に、上昇スピードが加速しました。ロシアのウクライナ侵攻による効果はわずか4日間しか反映していないというのに、この状態。小麦先物を始め最高値を更新へまっしぐらなだけに一段の上振れは免れようもなく、消費者の財布にさらなる打撃を与えかねません。

チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続

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(作成:My Big Apple NY)

7.3%を占めるエネルギーは、前年同月比で高止まりの状況は変わらず。家賃(前月:7.4%→2月:8.7%)や食費(前月:3.7%→2月:4.2%)は、むしろ加速しました。ガソリン(前月:40.0%→2月:38.0%)と電力・ガス(前月:13.5%→2月:12.2%)は鈍化したとはいえ、引き続き2桁の伸びと落ち着く気配は微塵も感じられません。いわんや、ロシアのウクライナ侵攻で食費と合わせ、再加速すること必至です。

チャート:食費に加え生活必需品のガソリン、電力・ガス料金のほか、家賃も家計を圧迫へ

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(作成:My Big Apple NY)

物価の高止まりは、実質賃金を押し下げ続けています。2月の実質平均時給は前年同月比2.6%下落し、11ヵ月連続でマイナだっただけでなく前月の1.8%から下げ幅を拡大し8ヵ月ぶりの落ち込みとなりました。

チャート:実質賃金の下落に加え、生活必需品のインフレ加速で裁量消費余地が狭まる

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(作成:My Big Apple NY)

パウエルFRB議長は3月の議会証言で、①3月の利上げは25bp、②今後は状況次第で50bpも、③保有資産圧縮は3月から開始せず、前回と同様なペースで――との方向を示しました。今回のCPIの結果を受けた年内の利上げ織り込み度はというと、NY時間午前11時15分時点で以下の通り。

チャート:年内の利上げ織り込み度は6回→7回へシフトし50bp利上げを含めた7回以上の織り込み度は55.4%と1ヵ月ぶりの高水準

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(作成:My Big Apple NY)

ロシアのウクライナ侵攻と米欧を中心とした対露制裁により、需給ひっ迫と供給制約が悪化しつつあり、米国はかねてから言われるように、1970年代のスタグフレーションに突入しつつあるようです。エネルギーや食品の高騰はまさにそのデジャブと位置付けられ、FF先物市場が織り込むようにFedは利上げへ積極的にならざるを得なくなってきました。しかも、北海ブレント原油先物が月内に200ドルを突破するというオプションを買うトレーダ―が出てくる有様。UAEが3月9日、OPECプラスが増産を検討すると明かしたものの、サウジアラビアなどは米国の要請に反し、増産に慎重との声もあります。そうなると問題は、実質賃金の下落とインフレ高進に直面する個人消費で、快進撃にいつブレーキが掛かってもおかしくありません。

(カバー写真:ernej Furman/Flickr)

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