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【追記】米3月CPI、ガソリンや食品が押し上げ1981年以来の伸びを記録

by • April 12, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2948

Inflation Rises By The Most Since 1981, Driven By Gas And Food Prices.

※12日の米株相場の引け値を受けて、一部加筆修正致します。

米3月消費者物価指数(CPI)は前月比1.2%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.8%を上回り、2006年2月以来の高い伸びを記録。ロシアによるウクライナ侵攻により、WTI原油先物が3月初めに一時130ドル台を突破したため、ガソリンが急伸しCPIの伸びの約半分を占めた。食品もロシアとウクライナの輸出比率が高い小麦などが過去最高値を更新したほか、供給制約もあって、一段と上昇し20年4月以来のレベルに加速。そのほか、燃料高や需要拡大を追い風に航空運賃が過去最高の伸びとなったほか、宿泊も力強く上昇した。ただし、前月加速した自動車保険、服飾、家賃などは伸びが鈍化し、これまでCPIを押し上げた中古車が2ヵ月連続で下落するなどコアCPIは鈍化の兆しが表れている

内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が11.0%上昇し、前月の3.5%を超え2009年6月以来の高い伸びに至った。ガソリンも同18.3%と急伸、前月の6.7%をゆうに超え2005年9月以来のレベルだった。なお、全米自動車協会(AAA)によると、米国のガソリン小売価格は3月10日、2008年7月の水準を超え1ガロン=4.331ドルと過去最高値を更新した。その他のエネルギーでは、電力など公益が1.8%上昇、前月の0.4%の下落からプラスに反転した。電力が2.2%と前月の1.1%の下落から上昇に転じたためで、ガスは0.6%と2ヵ月連続で上昇した。

エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が前月比1.0%上昇、2月に続き20年4月以来の伸びとなった。詳細をみると、食費が同1.5%上昇し、20年4月以来の加速を示した。肉類・卵・魚が1.0%と前月の1.2%以下だったものの、高止まりを維持。なお、肉類の高騰を背景にバイデン政権は1月3日、寡占状態の食肉加工業者の間で競争を推進すべく、独立業者を支援するため10億ドル投じると発表した。そのほか、ウクライナ情勢緊迫化もあってシリアル・パンは同1.5%上昇、2月の1.4%を上回った。逆に、外食は同0.3%と約1年ぶりの低い伸びにとどまった。

CPIコアは前月比0.3%上昇し、市場予想並びに前月の0.5%を下回った。前月比では1982年6月以来の伸びへ加速した21年6月の0.9%以下が続く。

チャート:CPIの費目別寄与、前月比はガソリンなどエネルギーが押し上げ1980年以来の加速に

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、燃料価格の上昇に加え航空会社が売上見通しを上方修正したように需要拡大も重なり、航空運賃は前月比で過去最高の伸びを記録した。宿泊も、コロナ感染者の減少を追い風に2ヵ月連続で上昇しただけでなく、8ヵ月ぶりの加速となった。一方で、自動車保険や服飾、家賃、娯楽、新車は前月以下の伸びにとどまった。中古車は2ヵ月連続で下落し、1968年以来の落ち込みとなった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇費目)

・航空運賃 10.7%の上昇、5ヵ月連続でプラスとなり統計開始以来で最高>前月は5.2%の上昇
・宿泊 3.3%の上昇、2ヵ月連続で上昇し8ヵ月ぶりの高い伸び>前月は2.2%の下落
・自動車保険 0.7%の上昇、3ヵ月連続でプラス<前月は1.2%の上昇と20年11月以来の高い伸び
・服飾 0.6%の上昇、6ヵ月連続でプラス<前月は0.7%
・医療サービス 0.6%の上昇、9ヵ月連続でプラスとなり2019年10月以来の高い伸び>前月は0.1%
・住宅 0.5%の上昇、上昇トレンドを維持=前月は0.5%の上昇
・帰属家賃 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持し2016年10月以来の高い伸びを維持>前月は0.4%の上昇
・家賃 0.4%の上昇、プラスのトレンドを維持>前月は0.6%上昇、1987年12月以来の高い伸び
・娯楽 0.2%の上昇、3ヵ月連続で上昇<前月は0.7%
・新車 0.2%の上昇、2ヵ月連続でプラス<前月は0.3%の上昇

(横ばい、低下項目)

・中古車 3.8%の下落、2ヵ月連続でマイナスとなり1968年12月以来の下落率<前月は0.2%の下落
・教育 0.1%の下落、4ヵ月ぶりにマイナス<前月は0.1%の上昇

CPIは前年比で8.5%上昇し、市場予想の8.4%を上回った。前月の7.9%から一段と加速し、1981年12月以来の上昇率となる。CPIコアは同6.5%上昇し、市場予想の6.6%以下だったとはいえ1982年8月以来の高い伸びを記録し、前月の6.4%を超えた。

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与など

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(作成:My Big Apple NY)

――米3月CPIはガソリンなどエネルギーに加え、航空運賃と宿泊が全体を押し上げました。ホワイトハウスが事前に警戒を促したように、前月比と前年比で一段と加速しています。

さて、経済活動の再開を受け物価の伸びが顕著な費目をみてみましょう。中古車は前月比で2ヵ月連続で下落したものの20年2月比で未だ48.5%上昇。その他、肉類・魚・卵(同20.1%)を始め食費(同14.2%)、外食(同11.0%)など食品関連の伸びが顕著です。需要拡大に支えられ、宿泊(同9.0%)は上向きつつあります。

チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、20年2月からみた上昇率

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの14.9%を占める食費は、前述の通り外食から肉・魚・卵など幅広くロシアのウクライナ侵攻もあって高止まりを続けます。20年2月比で右肩が上がりを続けるだけでなく、食料品は前年同月比で8.8%上昇し1981年5月以来の伸びでした。費目別の前年同月比の上昇率は、外食が同6.9%と1981年12月以来、肉類・魚・卵は同13.7%と1979年5月以来、シリアル・パン類は同9.4%と2009年1月以来、食費は同10.0%上昇と1981年3月以来と、それぞれ引き続き著しい。足元、過去最高値をつけた小麦先物など一部の食品で一服感がありますが、戦況次第で配送問題もあって、高止まりするリスクをはらみます。

早速、世界農業需給予測では、ウクライナの2021~22年度のトウモロコシ輸出は450万トン下方修正の2,300万トン、小麦輸出は100万トン下方修正され1,900万トンとなりました。結果、世界の小麦在庫も2億7,840万トンに引き下げられています。ウクライナ侵攻で黒海の穀倉地帯の物流が急変するほか、ロシアからは肥料の原料である炭酸カリウムの輸出で2位(約16%)ですから、米国の台所にも供給制約の波が価格として反映されてもおかしくありません。

チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続

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(作成:My Big Apple NY)

7.3%を占めるエネルギーは、前年同月比でガソリン(前月:38.0%→3月:48.0%)と電力・ガス(前月:12.2%→13.4%)そろって加速しました。食費(前月:8.7%→3月:10.0%)や家賃(前月:4.2%→3月:4.4%)も、前月を上回る伸びとなっています。

チャート:食費に加え生活必需品のガソリン、電力・ガス料金のほか、家賃も家計を圧迫へ

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(作成:My Big Apple NY)

物価の高止まりは、実質賃金を押し下げ続けています。3月の実質平均時給は前年同月比2.7%下落し、12ヵ月連続でマイナスでした。前月の2.5%から下げ幅を拡大し10ヵ月ぶりの落ち込みとなりました。

チャート:実質賃金の下落に加え、エネルギーや食品、家賃など生活必需品の値上げが消費の重石に

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(作成:My Big Apple NY)

一連の結果を受けても、米株相場はNY時間午前11時半頃に反発しました。理由は、ガソリンなど燃料や航空運賃や宿泊以外は、前月以下にとどまる費目が多くコアCPIの前月比が予想以下だった結果、インフレがピークアウトするとの見方が強まったためです。ただ、中古車の押し下げ効果が大きいんですよね。また、原油高が一服しても、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化すれば、エネルギーや食品の高止まりが続きかねません。住宅価格の高騰もあって、今回鈍化した家賃が再び上向く可能性もあります。

※追記:12日の米株相場は、買い一巡後に下落して引け。やはり、ピークアウトの期待は時期尚早と判断されたもよう。

以前から指摘しておりますように、実質賃金の下落に加え貯蓄率の低下も気掛かりです。だからこそ、米国人は節約せざるを得ないというわけで、CNBCが3月23~24日に実施した世論調査で、その実態が浮かび上がります。支出抑制の最右翼は、やはりコロナ前の調査で日本人より格段に頻度の高さを確認した外食で、続いてガソリン高から自動車の運転頻度削減も入っており、旅行キャンセルを上回っていました

チャート:過去6ヵ月間での節約術、外食の頻度が高いだけにターゲットになりやすい

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(作成:My Big Apple NY)

興味深いのは、定額サービス中止やブランド品の購入手控え、自動車買い替え見送りなどです。足元で一般消費財セクターの上値が重いのは、インフレ加速による裁量消費の余地縮小が意識されているためでしょう。

(カバー写真:Chris Yarzab/Flickr)

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