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米9月雇用統計:労働参加率は女性とヒスパニック系が押し下げ

by • October 10, 2022 • Latest News, NY TipsComments Off2336

Women And Hispanic Push Labor Force Participation Rate Down.

米9月雇用統計・NFPはこちらで紹介しましたように市場予想を上回り、失業率は再び20年2月以来の水準に低下するなど、引き続き労働市場が堅調であることを確認しました。一方で、労働参加率は低下しながら、平均時給は生産労働者・非管理職で前年同月比で21年9月以来の6%割れを迎えるなど、引き続き賃金インフレのピークアウト感も漂います。

では、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で3カ月連続で0.4%上昇。前年同月比は5.8%と、前月の6.2%を下回り21年9月以来の6%割れを迎えた。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び0.4%以上だったのは13業種中で7業種と、前月の速報値時点の5業種を上回った。今回の1位は前月に続き情報(1.3%上昇)に加え、金融(1.0%上昇)、輸送・倉庫(0.8%上昇)、その他サービス(0.7%上昇)、建設と卸売(0.6%上昇)、製造業(0.4%上昇)となった。一方で、鉱業・伐採は0.4%下落、最も雇用が伸びた教育・健康は横ばいにとどまった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率は62.3%と、20年3月以来の高水準に並んだ前月の62.4%から低下。逆に、働き盛りの男性(25~54歳)は軒並み上昇した。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.8%、2月に続き20年3月以来の高水準に並ぶ>前月は88.6%、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.7%、6カ月ぶりの水準を回復>前月は89.3%と5ヵ月ぶりの低水準、3月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 89.2%、4カ月ぶりの水準を回復>前月は88.7%、4月は89.5%と19年11月以来の高水準だった
・25~34歳(白人) 89.9%、4カ月ぶりの水準を回復>前月は89.2%、3月は90.5%と20年2月(90.7%)以来の高水準

チャート:働き盛りの男性、25~34歳は4ヵ月連続で低下

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(作成:My Big Apple NY)

男性と反対に、前月大幅に上昇した働き盛りの女性は25~54歳では軒並み低下しました。

・25~54歳 76.4%=前月は76.4%、5月は76.5%と20年2月(76.8%)以来の高水準
・25~34歳 78.0%>前月は77.3%、5月は78.4%と20年1月以来の高水準

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女ともに上昇した。
・男性 24.2%、7カ月ぶりの高水準>前月は23.6%、2月は24.3%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.9%、9カ月ぶりの高水準>前月は15.3%

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率の低下につれ前月比で5.1%増の583.4万人(男性は262.7万人、女性は320.7万人)と、大幅に増加した。男女ともに増加に転じたが、女性がけん引しており前月比7.7%増、男性は同2.1%増だった。

チャート:職を望む非労働力人口、男性が減少し女性が増加

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、働き盛り世代が示すように男性が改善も女性は低下した。男性は前月の67.6%→68.1%と6カ月ぶりの水準に上昇した一方で、女性は56.8%と20年3月の水準に並んだ前月の57.1%を下回った。

チャート:男女別、労働参加率、直近は女性が上向き

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(作成:My Big Apple NY)

男女の失業率は男女ともに低下。男性は4カ月ぶりの水準へ上昇した3.8%から今回は3.6%となった。女性に至っては労働参加率に押し下げられ、前月の3.5%から3.4%と20年2月の水準に並んだ。

チャート:男女別の失業率は、男女ともに低下も女性は20年2月以来の低水準に並ぶ

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、ヒスパニック系女性がプラスだった。ただし、ヒスパニック系男性は前月の4.6%→4.1%へ低下した。黒人男性は前月の5.9%増→7.0%増へ、ヒスパニック系女性も前月の3.7%増→4.4%増と前月を上回った。

白人男性(前月は0.6%減→0.2%減)は、2カ月連続でマイナスも下げ幅を縮小した。白人女性(前月は2.9%減→2.9%減)は引き続きマイナス。黒人女性は前月の1.9%減→1.2%減と下げ幅を狭めつつ、5カ月連続でマイナスだった。

チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

人種別の労働参加率は、低下が優勢。白人を始めヒスパニック系、アジア系が前月を下回った。黒人のみ3カ月ぶりの水準を回復した。

・白人 62.0%<前月は62.1%と5カ月ぶりの水準を回復、3月は62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、20年2月は63.2%
・黒人 62.1%、3カ月ぶりの水準を回復>前月は61.8%、5月は63.0%と20年2月(63.2%)以来の高水準
・ヒスパニック系 66.1%、5カ月ぶりの低水準<前月は66.8%、20年3月は67%、20年2月は68.0%
・アジア系 64.9%<前月は65.3%と19年10月以来の高水準に並ぶ
・全米 62.3%<前月は62.4%、3月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、黒人以外は軒並み低下

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、労働参加率の低下もあって全ての人種で低下。特にヒスパニック系は統計が開始した1973年以来の低水準を記録した。一方で、黒人は労働参加率が上向いても改善、年末商戦前の臨時雇用が支えた可能性がある。

・白人 3.1%、20年2月(3.0%)以来の低水準<前月は3.2%
・黒人 5.8%、19年11月以来の低水準に並ぶ<前月は6.4%
・ヒスパニック系 3.8%、1973年以来の低水準<前月は4.5%
・アジア系 2.5%、4カ月ぶりの低水準<前月は2.8%
・全米 3.5%、20年2月の水準に並ぶ<前月は3.7%

白人と黒人の失業率格差は、大幅縮小。白人は労働参加率が横ばいでも失業率が低下した一方で、黒人は労働参加率の低下にも関わらず失業率が上昇したためで、失業率格差は2.7ポイントと、20年4月以来の水準に低下した6月の2.5ポイントに次ぐ水準となった。ただし引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.9ポイント超えの水準を保つ。

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、中卒を除いて全て低下した。

・中卒以下 45.7%>前月は45.4%、2月は46.8%と20年2月(47.8%)以来の高水準
・高卒 56.1%、21年12月以来の低水準に並ぶ<前月は56.4%、1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 73.0%<前月は73.1%、5月は73.3%と20年1月以来の高水準
・全米 62.3%<前月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%

チャート:学歴別の労働参加率、中卒以外は振るわず

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(作成:My Big Apple NY)

学歴別の失業率は、労働参加率の押し下げもあって中卒以外で低下した。労働参加率が改善した中卒は、むしろ失業率は上昇した。

・中卒以下 5.9%>前月は5.8%、2月は4.3%と1992年の統計開始以来で最低
・高卒 3.6%、2ヵ月連続で19年9月(3.5%)以来の低水準=前月は3.6%
・大卒 1.8%、07年3月(1.9%)以来の低水準に並ぶ<前月は1.9%
・大学院卒以上 1.5%、4カ月ぶりに2%割れ<前月は2.3%、21年12月は1.2%と1992年1月の統計開始以来で最低
・全米 3.5%、20年2月の水準に並ぶ<前月は3.7%

--米9月雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①生産労働者・非管理部門の平均時給全体の前月比の伸びを上回った業種は7業種と、前月の5業種を上回る。鉱業/伐採のみ下落、教育/健康は横ばい。前月比では賃金上昇圧力が執拗であることを示唆。

②労働参加率は男性が改善をリードした一方で、女性は働き盛りを中心に低下。失業率は男女とも低下したが、女性は労働参加率が押し下げが主因

③人種別の労働参加率は黒人以外が低下、特にこれまで雇用を支えたヒスパニック系が下振れ。失業率は黒人含め全て低下。

④学歴別では、中卒以外は労働参加率が低下。失業率は中卒以外で低下

9月は、前月と打って変わって男性の労働参加率が著しく改善した半面、女性が下振れしたため全体的には小幅低下となりました。男性の間で改善した理由は、年末商戦前の臨時雇用が影響した可能性があります。ただ、過去を振り返ると9月に必ずしも上振れしていません。あくまで想像の域を出ませんが、景気後退に備え職を確保しようと試みたとも考えられます。女性の労働参加率の低下は、パートタイムの雇用の伸び減速が影響したのでしょう。

これまで雇用をけん引してきたヒスパニック系の男性で、就業者数の伸びが鈍化したことは気掛かりです。今回、黒人の就業者数は前月比で増加に転じたとはいえ、22年上半期にピークアウトした感も。労働市場は堅調に見えて、Fedの積極的な利上げがボディブローのように効き、徐々にクールダウンしつつあるようです。

(カバー写真:Gloria Bell/Flickr)

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