U.S. Economy Rebounds But Not So Good News For President Biden.
米7〜9月期実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率2.6%増と、市場予想の2.3%増を上回った。前期の0.9%減から回復し、3四半期ぶりのプラス成長に。内訳をみると、GDPの7割を占める個人消費は拡大を続けたが、耐久財と非耐久財の減少を相殺してきたサービスの伸びが鈍化し前期を下回った。ただし、企業支出や政府支出がプラスに転じ、成長に寄与。また、輸入の減少に伴う貿易赤字の縮小を受け、純輸出も成長に寄与した。一方で、金利上昇を背景に住宅支出はマイナス基調を保った。
米7~9月期の実質GDP成長率・前年同期比は1.8%増と、前期と変わらず。7期連続でプラス成長を維持した。
再び四半期ベースのGDPに視点を戻すと、米経済の寄与度は項目別に以下の通り。前述の通り、個人消費は鈍化しつつも20年Q2以降、8四半期連続でプラスを維持した。純輸出は、中国のゼロコロナ対策に伴う対応もあって2四半期連続でプラス。企業支出は在庫投資が20年Q2以来、2年ぶりにマイナスに反転した前期からプラスを回復したほか、政府支出も6四半期ぶりにプラスに転じた。一方で、金利上昇と価格高騰を受け、住宅投資も6四半期連続でマイナスとなった。
・個人消費 0.97%pt、20年Q2以来8期連続でプラス<前期は1.38%pt
・企業支出 0.49%pt>前期は0.01%ptのマイナス、20年Q2以来8期ぶりにマイナス
・住宅投資 1.37%ptのマイナス、6期連続でマイナス<前期は0.93%ptのマイナス
・純輸出 2.77%ptのプラス>前期は1.16%ptのプラスと20年Q2以来8期ぶりにプラス
・政府支出 0.42%ptのプラス、6期ぶりにプラス>前期は0.29%ptのマイナス
チャート:Q3実質GDP成長率・速報値は、3四半期ぶりにプラス成長に戻す
チャート:実質の金額ベースでは、過去最大を更新
GDPの項目別、前期比伸び率の詳細は以下の通り。
▽個人消費の内訳
・個人消費 1.4%増、9期連続でプラス<前期は2.0%増
・耐久財 0.8%減、2期連続でマイナス>前期は2.8%増
・非耐久財 1.4%減、3期連続でマイナス<前期は2.5%減
・サービス 2.8%増、9期連続でプラス<前期は4.6%増
▽民間投資の内訳
・民間支出 8.5%減、2期連続でマイナス>前期は14.1%減
・固定投資 4.9%減、2期連続でマイナス>前期は5.0%減
・非住宅固定投資(企業の設備投資) 3.7%増>前期は0.1%減と8期ぶりにマイナス
あ構築物投資 15.7%減、6期連続でマイナス<前期は12.7%減
あ機器投資 10.8%増<前期は2.0%減と3期ぶりにマイナス
あ無形資産 6.9%増、9期連続でプラス<前期は8.9%増
・住宅投資 14.4%減、6期連続でマイナス>前期は8.9%増
・在庫投資 816億ドルの増加、3期連続でプラス<前期は1,885億ドルの増加
▽政府支出
・政府支出 2.4%増、6期ぶりにプラス>前期は1.6%減
あ連邦政府 3.7%増(防衛支出4.7%増、非防衛財は2.3%増)>前期は3.4%減と5期連続でマイナス>前期は1.6%減
あ州/地方政府 1.7%増>前期は0.6%減と3期連続で縮小
GDP価格指数は前期比年率4.1%の上昇と、市場予想の5.3%を下回り前期の9.1%からも半分以上も伸びを狭めた。コアPCE価格指数は市場予想通り前期比4.2%上昇、前期の7.3%を大きく下回った。
――Q2実質GDP成長率・速報値は、個人消費の鈍化を純輸出、企業の設備投資、政府支出が支えプラスに転じました。バイデン大統領は結果を受け「力強い回復の証拠」を表すとの声明を発表、中間選挙前に景気後退懸念の払しょくに努めました。
確かに、Q3は潜在成長率2%を上回りましたが、GDPの7割を占める個人消費の失速や企業の設備投資のうち構築物投資が弱く、住宅投資の落ち込みも響きました。結果、変動の大きい在庫投資や政府支出、純輸出を除く最終需要は0.5%増とコロナ禍以降で最低だった前期の0.2%増を小幅に上回る程度でした。つまり、米国内の需要は積極的なFedの利上げによって着実に鈍化しつつあります。
チャート:国内の最終需要(変動の大きい在庫投資や政府支出、純輸出を除く)はプラスを維持するも、2期連続で小幅にとどまる
インフレ退治を狙うFedとしては、GDPデフレーターなどと合わせ歓迎すべき内容でしょう。しかし、景気後退入りを示唆する内容とも捉えられ、バイデン政権にとってはグッドニュースとは言えなさそうです。
(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)
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