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資産買入縮小を準備するなら・・今でしょ!を検証する

by • May 22, 2013 • Latest NewsComments (0)2062

Market Prepares For Tapering Asset Purchases.

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は22日、米上下両院合同経済委員会で経済見通しについて議会証言しました。注目の内容はというと・・・。

質疑応答でのこのひと言。景気改善が持続的と確信した場合は「今後数回の会合で債券購入のペースを減速させることもあり得る」と応じたんですよね。ハト派寄りのコメントを期待したマーケットに冷や水を浴びせちゃいました。同じ日に公表のFOMC議事録では「複数のメンバーが6月の資産買入の縮小に意欲を示した」との文言もあり、本日の米株はマイナス引けです。

PIMCOの債券王ビル・グロス氏、バーナンキ証言を受けCNBCで9月の縮小を予想。
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半面、バーナンキ議長は議会証言の冒頭では準備原稿をもとに非常に緩和的な金融政策は「適切」との見解を表明してたんです。資産買入プログラムが終了し、経済回復が強まりをみせた後も「しばらくの間、適切であり続ける」とも言及。時期尚早な金融引き締めは一時的な金利上昇につながる一方で、「経済回復が頓挫あるいは鈍化し、インフレをさらに減速させるといった大いなるリスクをもたらす恐れがある」と発言してました。

だからこそ、ダウ平均は一時は154.82ドル高の15542.40ドルと、ザラ場での最高値を更新したんです。

また緩和策を解除すれば「金利上昇と合致する経済状況に至る公算は小さいだろう」とも述べました。この場合の金融引き締めとは1)金利の引き上げ、2)バランスシートの縮小--を指し、最近ちまたで話題の資産買入の縮小を意味しない点に留意しつつ・・がっつりタカ派!というわけではありませんでした。

資産買入のペースについてはFOMC声明文通り、「拡大も縮小も可能」、「経済指標次第」と発言したものの、「保有資産を売却する可能性もあれば、しない可能性もある」としてたんですよ。満期償還まで保有する可能性にも触れてました。米連邦政府の財政政策が「非常に引き締め的となった」点には強い懸念を示し、国内総生産(GDP)を1.5%ポイント押し下げるとの米議会予算局(CBO)の試算を引き合いに出してたんです。

それでも、資産買入縮小のXデー到来への恐れが先に立ったんでしょうか。今風にいうと「いつ買入縮小の準備するの?今でしょ!」を地で行く展開となり、ダウ平均はFOMC議事録の公表後は一時121.62ドル安の15264.96ドルと3日ぶりの水準へ落ち込みました。

備えあれば憂いなし・・でも、さすがにバーナンキ発言にはビックリした?
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では、FOMC議事録を含めたエコノミストの反応はといいますと。

バークレイズ・キャピタルのマイケル・ゲイピン米エコノミスト
「FOMCは労働市場とインフレの動向を忍耐強く見守るスタンスを維持するとみられ、2014年1-3月期まで資産買入の縮小を待つとの予想を堅持する」

JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト
「6月の買入縮小を提唱した複数(a number of)のメンバーには投票権のない参加者、例えば(タカ派の)ダラス連銀・フィッシャー総裁、リッチモンド連銀・ラッカー総裁、カンザスシティ連銀・ジョージ総裁、フィラデルフィア連銀・プロッサー総裁などが含まれうる。また議事録には『多くの参加者(many of these participants)は買入縮小に景気回復の持続的な進展、下方リスクの払拭、あるいは見通しへの確信が必要と認識していた』との記述もあり、当方は12月の買入縮小をメインシナリオで維持する」

と、いずれも購入縮小には前傾姿勢をとってはいません。

 

個人的に気になった点は、2011年6月FOMC議事録で公表した出口戦略の変更を協議したとの議事録内容。2011年6月FOMC議事録では、出口戦略の原則として、1)システム・オープン・マーケット・ アカウント(SOMA、公開市場操作向けの口座)の残高にある償還元本の再投資終了、2)「長きにわたる低金利の維持」という文言の修正、3)FF金利の引き上げ、合わせて超過準備預金金利(IOER)をFFレート水準へ引き上げ、4)住宅ローン担保証券、エージェンシー債など保有債券の売却開始--を挙げていたんです。

前出のフェローリ米主席エコノミストは、NY連銀のダドリー総裁と同じく、バーナンキFRB議長が議会証言で住宅ローン担保証券(MBS)を売却しないサインを点灯した点につき、売却しない利点として、1)市場の混乱を回避、2)米財務省に対する保有証券の金利収入の納付継続――を挙げてました。

米財務省への2012年国庫納付額は889億ドルに達するなど貴重な財源であり、債務上限引き上げ交渉がつきまとうなかでは納付額の減少は避けたいところ。またMBSの元となる住宅市場を振り返っても、絶好調とはいえません。米4月中古住宅販売件数の買い手動向をみると、

・差し押さえ物件→前月の13%から11%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売される住宅)→前月の8%から7%
・差し押さえとショートセールを合わせた不良債権物件→前月の21%から18%
・新規購入者→前月まで5ヵ月連続で30%を経て、今回29%
・現金での購入者→前月の30%から29%
・投資向け購入者→前月通り19%

差し押さえなど不良債権の物件の減少に合わせ、新規購入者や現金での購入者が低下していることが分かります。投資向け購入者のみ、横ばいの状況なんですね。

BNPパリバのイリーナ・シュヤルティバ米エコノミストは、中古住宅販売件数の結果を受け「差し押さえ物件など安価な不良債権が減少するなか、投資家の住宅購入が細った場合に新規購入者がバトンをを譲り受ける必要がある」と分析。しかし新規購入者は厳しい住宅ローン貸出基準や住宅ローン金利の上昇を背景に伸び悩む可能性があり、「年内に中古住宅販売件数が頭打ちとなる可能性も考えられる」と慎重な見解を寄せてました。

労働市場も今後改善ペースをたどるか見極めが必要であり、筆者は6月に資産買入を縮小するとは想定していません。やっぱり年後半まで様子をみて、縮小に踏み切るのではないでしょうか。

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