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米3月雇用統計、やっぱり賃金の伸びは限定的

by • April 7, 2014 • Latest NewsComments (0)1814

March Jobs Report : Wage Growth Is Still Limited.

長らく一時帰国していたせいで配信が遅れてしまいましたが、米3月雇用統計レビューをお届けします。

米3月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比19.2万人増となり、市場予想の20.0万人増を小幅に下回った。とはいえ前月の19.7万人増(17.5万人増から上方修正)に続き、堅調な水準を保つ。今回、「悪天候のため就労不能」は14.8 万人だったほか、「通常はフルタイムだが、悪天候のためパートタイム」は61.2 万人。そろって通常の範囲内に収まっており、特に影響はみられていない。なお過去2ヵ月分は3.7万人分、上方修正された。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が19.2万人増となり市場予想の20.0万人増に届かなかった。ただ前月の18.8万人増(16.2万人増から上方修正)を超え、4ヵ月ぶりの20万人乗せに近づいている。特にサービスが16.7万人増と、前月の14.8万人増を上回り、4ヵ月ぶりの高水準を示した。

寄与したサービスのセクターは、以下の通り。
・ビジネス・サービス 5.7万人増<前月は8.1万人増、増加トレンドを維持
★特に派遣は2.9万人増と、前月の2.8万人増に続く強い伸び
・貿易・輸送 3.8万人増>前月は0.7万人増、増加トレンドを維持
・教育と健康 3.4万人増>前月は3.1万人増、増加トレンドを維持
・娯楽と宿泊 2.9万人増=前月は2.9万人増、増加トレンドを維持
・情報 0.2万人増>0.8万人減、4ヵ月ぶりに増加
・金融 0.1万人増<前月は0.9万人増、2ヵ月連続で増加

リセッション以降、派遣こそ労働市場のけん引役なんです。

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(出所 : WSJ

政府は±0人となり、前月の0.9万人増から横ばいに転じた。連邦政府が0.9万人減と4ヵ月連続で減少した一方、州・地方政府が支えマイナス分を相殺している。

財生産業は2.5万人増と、前月の4.0万人増から増加幅を削った。
・製造業 0.1万人減<前月は0.9万人増、足元久々にマイナス
・建設 1.9万人増>前月は1.8万人増、3ヵ月連続で増加

3月の単月NFPは好結果だったものの、四半期ベースでみると1-3 月期NFPは53.3 万人増と2013年10-12 月期の59.5 万人増から減速を確認した。

失業率は、前月と同じく6.7%。市場予想であり、2008年10月以来の水準を示現した1月の6.6%を上回った。

・失業者数 前月比2.7万人増と2月の22.3万人増から伸びを縮小
・就業者数 前月比47.6万人増と前月の4.2万人増から大幅に伸びを拡大
・労働参加率 63.2%となり、1-2月の63.0%から上昇
・不完全失業率(経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている被雇用者) 12.7%と2月の12.6%から上昇も、2008年11月以来の13%割れを維持
・平均失業期間 1年ぶりの水準を改善した2月の37.1週から35.6週へ短縮。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のヒルゼンラス記者は、「米雇用統計を受け、政策スタンスを維持へ(Hilsenrath Analysis: Jobs Report Keeps Fed Policy on Track)」のタイトルそのままに、会合ごとに100億ドルの追加減額を決定する見通しと報じた。また、2015年に入ってからもゼロ金利政策を継続する方針とも伝えている。堅調だったNFPに加え雇用率が58.9%と2009年8月以来の高水準となったほか、労働参加率の改善に対しては評価。一方で、6ヵ月以上の失業者数が11万人減の373.9万人に減少した点に注目する。長期失業者は前年同月比で83.7万人減少したものの、1)労働市場から退出したためか、2)再就職に成功したのか――を見極める必要があると指摘していた。

気になる賃金動向と労働時間を振り返ってみましょう

時間当たり平均労働賃金は、市場予想の0.2%の上昇より弱い±0%の24.30ドルだった。8ヵ月ぶりの高い伸びを示した2月の0.4%上昇にも届かず。前年比は、市場予想の2.3%だけでなく前月の2.2%も下回る2.1%の上昇にとどまった。一方で、週当たりの平均労働時間は市場予想の34.4時間を上回り34.5時間。悪天候の影響が後退したため、前月の34.3時間(34.2時間から上方修正)も超え4ヵ月ぶりの水準へ延びた。製造業は雇用が減少した半面、平均労働時間は前月の40.8時間から41.1時間と2007年以来の高水準を遂げた。

幹部を含む全従業員の週当たり賃金をみると、前年同月比1.06%。2月からさらに鈍化を示し、FRBの目標値「2%」を大幅に下回っている。悪天候から脱した反動で労働時間が延び残業時間も増えたにも関わらず、所得の伸びは加速しなかった格好だ。

BNPパリバのジュリア・コロナド米国担当主席エコノミストは、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の3月31日の講演に基づき、労働市場のたるみ=スラックを示す4つのポイントを踏まえた上で「まちまち」と判断する。

4つのポイントとは、
1)700人に及ぶ不完全失業者(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)
2)賃金の低い伸び
3)失業者に占める高い長期失業者の割合
4)低下しつつある労働参加率

4つのポイントを採点していくと、
1)の不完全失業者は今回、2月の720万人から740万人へ増加
2)の賃金をみると、前年比で2月の2.19%から2.06%へ低下
3)の長期失業者は今回163万人と、2月の164万人から減少
4)の労働参加率は今回63.2%と、2月の63.0%から上昇

3)の長期失業者と4)の労働参加率――のみ、改善したに過ぎない。

以上を踏まえるとNFPは堅調で、労働市場はゆっくりとしたペースで持ち直していることは事実。ただし派遣の増加が背景にあるせいか相変わらず賃金の伸びは振るわず、消費がけん引して経済全体が強い回復を遂げるかには疑問の余地が残ります。ダウ平均やS&P500がザラ場で高値を更新して大幅下落に転じた理由のひとつは、弱い賃金動向にあったのではないでしょうか。

(カバー写真 : Veoz)

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