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10月FOMC、著名エコノミストは「相当な期間」の文言維持を予想

by • October 25, 2014 • Finance, Latest NewsComments Off2945

Remains Of The QE Days , Fed Would Retain The Words ‘Considerable Time’.

10月28−29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、泣いても笑っても量的緩和第3弾(QE3)が終了する見通しです。2012年9月に開始してから、ようやく幕を下ろします。

では、「相当な低金利」の文言はどうなるのでしょうか?結論から言うと、かつて米連邦準備制度理事会(FRB)で金融政策局長を務めFOMC議事録では書記の役割を担った輝かしい経歴をもつモルガン・スタンレーのビンセント・ラインハート米国担当主席エコノミストは、「維持」を予想しています。理由は、ざっくり以下の通り。

1)QE終了でドル高をサポート
ドイツが景気後退に直面するなど景気減速が著しい欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁、消費税増税に揺れる日本銀行の黒田総裁としては、世界経済のけん引役である米国にドル高負担を背負ってほしいところ。Fedとしても世界経済に回復してもらわなければ持続的な米成長も望めず、QE終了に伴うドル高で恩を売るのは妥当。

2)低インフレは継続、早期利上げの必要性なし
QE終了後も、インフレは低水準で推移する公算。ドル高、原油安、世界景気鈍化に加え地政学的リスクやエボラ出血病の米国上陸といった不透明性の高まりも、インフレを抑制しうる。10月FOMC声明文では「インフレが目標値2%を下回り続ける可能性はある程度、後退した(the likelihood of inflation running persistently below 2 percent has diminished somewhat)」との文言を削除へ。

3)Fed内の援軍
フィッシャーFRB副議長は、10月9日に「相当な期間(considerable time)」の定義を「2ヵ月から12ヵ月」と発言。イエレン議長が漏らした「6ヵ月」を修正した。また、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は力強さを示した米9月雇用統計を受けても「労働資源の活用不足(significant underutilization)」を認め、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も低インフレ状況下では「利上げの先送り」に言及し、利上げに傾倒する姿勢をみせず。マーケットが予想する第1弾の利上げ時期についてはフィッシャー副議長が「正しく受け止めているように映る」と述べたように3者とも適切との見解を表明済み。政策決定はあくまで経済指標次第であり、カレンダーに依存しないスタンスもアピール。

——以上から、早々に第1弾の利上げへ駆り立てられる可能性は低いと分析しています。その上で、第1弾の利上げ時期を「2016年初め」で据え置きました。

イエレンFRB議長、17日には格差拡大に懸念を表明。
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(出所:FRB)

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストも同じく、「相当な期間」の低金利維持を予想する1人。理由として 1)QEにピリオドを打つと同時にフォワード・ガイダンスを削除するのは危険、2)イエレン議長の記者会見や議事録などで補足説明が可能、3)イエレン議長の記者会見予定なしで混乱招く懸念——などを挙げています。

フェローリ氏はまた、インフレをめぐる文言がハト派寄りになると予想。ラインハート氏と違って、7月FOMC声明文で切り捨てた「委員会は、インフレが目標値2%を執拗に下回る場合は経済動向にリスクをもたらすと認識する(The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance)」といった内容の復活を見込んでいます。

雇用動向を表す第1段落の文言「労働資源の活用不足」も、維持を予想。ただし9月FOMC以前に発表された速報値ベースの米8月雇用統計と打って変わって米9月雇用統計が好調だったため、「50%以下の確率」と前置きしつつ修正を加える可能性も捨てきれないと付け加えていました。

いずれにしても「相当な期間」の文言自体、「資産買入プログラム終了後、FF金利誘導目標を現状の低水準で維持することは恐らく適切だろう(it likely will be appropriate to maintain current target range for the federal funds rate for a considerable time after the asset purchase program ends)」とQE終了を前提にした文言ですから、慌てて看板を下ろす必要はありません。ひとまず10月FOMCではQE終了に伴い資産買い入れをめぐる段落を削除しなければならず、声明文の調整に終始しそうです。

モルガン・スタンレーが独自に実施したFOMC直前調査では、利上げ開始予想が後ろ倒しされていました。

調査によると、第1弾の利上げ時期につき「2015年下半期」との回答が51%と6月時点の45%から上昇していたのです。「2015年上半期」はわずか11.7%と、6月時点の27%から急低下。最も増えた回答は「2016年以降」で35%と、6月時点の26%から10%近く上昇していました。

それだけではなく、利上げのピークも「3.50%以下」が67%とハト派寄りに傾いていました。6月時点に「3.5%以上」と二分した50%を大きく上回っています。

イエレンFRB議長が奏でる調べは、今回もマーケットに甘く響く——市場関係者は少なくとも、そう期待しているようにみえます。2週間の大幅下落を経て、FOMCに先駆け米株が急速に息を吹き返すはずですね。

(カバー写真:AFP)

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