Skyscraper Jinx Again? NYC Luxury Condominium Sales Slow In Third Quarter.
「超高層ビルのジンクス」といえば、ニューヨークならエンパイア・ステート・ビルディングやワールド・トレード・センター（WTC）が実例として有名ですね。エンパイア・ステート・ビルディングは1929年の建設中に世界恐慌に見舞われ、WTCは完成した年の1973年に第1次石油危機が世界景気を冷やしました。
そんな「超高層ビルのジンクス」が忘却の彼方へ消えてしまったかのように、NY市内は足元で超高層ラグジュアリー・コンドミニアムの建設ラッシュを迎えています。ニューヨーカーなら誰もが憧れる「432 パーク・アベニュー（432 Park Avenue）」は、2015年にオープンした暁には高さ1396フィート（426m）に及ぶんですよ。建築家デボラ・バーク氏が手掛けた近未来型タワー、ペントハウスのお値段は9500万ドル（110億2000万円）といいますから、全日空の2012年4−6月期の黒字額に匹敵するんですね。聞いただけで身震いしてしまいます。
セントラル・パークの南西部にそびえる高さ1005フィート（306m）、75階建て（名目上は90階）の「ワン 57（One 57）」も負けていません。ペントハウスは、著名な投資家ビル・アックマン氏がウォールストリートの仲間と9000万ドル（104億4000万円）で購入したとされています。アックマン氏が「コンドミニアムのモナ・リザ」と評価するだけに、転売する日には1億ドル（116億円）の大台突破もかくや・・？
「One 57」のペントハウスからは、セントラル・パークの緑の絨毯があなたのものに。
（出所：Tattletailzz）
この2つの超高層コンドの建設計画以外にも、目を見張る物件が存在します。「One 57」にほど近い場所に建設中のノードストローム・タワーは、尖塔を含め高さ1775フィート（541m）ですから、ワン・ワールド・トレード・センターの1792フィート（546m）にさして変わりません。開業する2018年には、文句なしに世界一のハイライズたる称号を獲得するでしょう。
タイムズ・スクエアからみたミッドタウンの近未来予想図、細長い摩天楼が新たなランドマークに。
（出所：Armand Boudreaux for YIMBY via Google Earth）
外国人投資家の熱烈な需要もあって、過熱極まる高級コンドミニアム市場。しかしながら、ここに来て不穏なニュースが届いています。不動産大手ミラー・サミュエルのジョナサン・ミラー最高経営責任者（CEO）兼社長がCNBCに明かしたところ、「One 57」の今年上半期の売上戸数はたったの2軒でした。このままのペースだと、完売までに「6年」かかると言います。現状では全体の75％が売却済みとはいえ、今後は「432 パーク・アベニュー」をはじめ続々と競合物件が完成していくだけに、おちおちしていられません。
またミッドタウンから離れリトル・イタリーに建つ「133 マルベリー・ストリート（133 Mulberry St）」も、18軒のうちたった4軒しか売却できず。1544平方フィート（43.4坪）の1ベッドルーム（1LDK）物件で289万5000ドル（3億3580万円）と、かなり強気な金額設定が災いしたことでしょう。
マンハッタンの高級コンドミニアム市場、飛ぶ鳥を落とす勢いだったのも今は昔。不動産大手ダグラス・エリマンの調査によると、7−9月期の販売価格は前年比こそ34.2％上昇の725万2739ドル（8億4130万円）と2桁を維持したものの、前期比では0.03％と微かながら下落していたのです。契約完了件数も前期比で0.3％減、前年比では13.1％も大きく落ち込み333件でした。建設ラッシュを背景に在庫物件数が前期比16.8％増の1627件、前年比で47.0％も急増しており、販売価格と販売件数の伸びはそれぞれ一服していたのです。
建設中の物件になると、平均販売価格は前期比8.1％下落の325万5848ドル（3億7770万円）でした。在庫物件数にいたっては、前年比で98.5％も暴騰する体たらくです。最高値更新後に小動きが続く米株相場のように、世界景気減速で外国人需要が低下するなか投資家もババをつかまないよう慎重にならざるを得ないのでしょう。
（カバー写真：Wired New York）
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