ECB Raises Emergency Funding Back To Greek Banks.
欧州中央銀行(ECB)は16日、フランクフルトで開催した定例理事会で市場予想通り政策金利にあたるリファイナンス金利を0.05%で据え置いた。上限金利の限界貸出金利も0.30%、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.2%で維持している。
ドラギECB総裁は、記者会見で「緊急流動性支援(ELA)の条件があらためて整った」と発言。ギリシャ議会が国際債権団の財政再建策を15日に通過したため、6月28日以降、約890億ユーロで据え置かれていた枠を1週間にわたり9億ユーロ引き上げたと明かした。ギリシャ向けエクスポージャーは、総額1300億ユーロに拡大したという。ドラギ総裁はユーロ圏が「不可逆(irreversible)」と発言しなかった一方で、「ギリシャがユーロ圏の加盟国であり、そうあり続けるとの仮定に則している」と言及。また「過去2日間のように好ましい進展が続けば、動向を見守るギリシャ中銀と連携し同国経済の必要性を検討していく」と述べ、支援を続ける意向を打ち出した。「もっともギリシャへの流動性供給は「無制限でも、無条件でもない」と釘を刺すことも忘れない。流動性支援だけではなく「誰も議論していないものの、物議を醸さない手法での債務軽減免も必要」とも語り、ギリシャへ歩み寄る姿勢も示す。
ギリシャの資本規制がいつ解除されるかは、言及を避けた(ギリシャ政府は20日に営業を再開、段階的に解除していくと発表)。今回の決定を受け、ギリシャ向けELAを本日まで据え置き、資本規制を余儀なくされる事態を招いたとの批判には「まったく不当で根拠がない」と一蹴した。
20日に予定するECBへの35億ユーロの債務返済をめぐって、ドラギ総裁は「実行される」と述べた。
ELA引き上げを好感、欧州株は軒並み上昇。
(出所:Reuters)
量的緩和(QE)をはじめとする支援策については、前回に続き「完全実施(full implementation)」を確約した。資産買い入れプログラム自体、前回と同じく「順調に進んでいる」とも発言し、予定通り2016年9月まで実施する構えをあらためて打ち出した。
金融引き締めの効果が確認された場合は、声明文にて「あらゆる手段を駆使し、対応していく」と説明した。質疑応答では、QE前倒しにつき夏期休暇を受け流動性が低下することから「準備はできている」と発言。5月と6月に30億ユーロずつ増加せた例もあると説明した上で「8月にどうなるかは、検討がつくだろう」とし、拡大への可能性を点灯させた。
経済見通しについては「一連の金融政策の決定を背景に、下振れリスクは概して抑制されている」との見解を示した。前回の「下振れリスクが残るものの、均衡に近づいた」から、上方修正されている。また前回の「経済回復は広がりをみせ、徐々に強まるだろう」から、今回は「一段と回復の裾野が広がっていく」と、楽観的なトーンへ寄せた。インフレも「年初で底打ちし、足元数ヵ月は好ましい領域に入って来た」とコメント。ユーロ安に加え、下半期に原油安のベース効果がはく落することから「2016年から2017年に回復していく」と予想した。
ABNアムロのファイナンシャル・マーケッツ・リサーチのヘッドであるニック・クニス氏は、結果を受け「今回の定例理事会でELAを引き上げるとは予想していなかった」と振り返る。その上で「ギリシャへ支援への意欲をみせた」と評価する。CMCマーケッツのイエスパー・ローラー氏は、ELA引き上げを受け「銀行破綻のリスクを収束させたと同時に、銀行再開および資本規制解除への道を開いた」とコメント。クレディ・アグリコルのエコノミスト、フレデリック・デュクローズ氏は「注意深い測定の元に決断した」と指摘した。市場関係者の間では「ギリシャの銀行は1週間に少なくとも5億ユーロが必要で、企業は過去2週間で20億ユーロの支払いを必要としてきた。ベイルイン(預金者を含めた内部による救済)への懸念が残る」との慎重な声も聞かれている。
——ひとまず、ギリシャ第3次支援をめぐってフィンランド議会が可決しました。今後はドイツのほかオランダ、フランス、オーストリア、スロバキア、エストニアの承認も必要になります。問題はやはりドイツで、国際通貨基金(IMF)のほかドラギ総裁がギリシャの債務減免に言及するなか、ショイブレ財務相は独連邦議会で「債務減免はない」と豪語していました。ユーロ圏で最大の債権者ドイツは、態度を軟化させられるのでしょうか。ひとまずELA引き上げに加え、ユーログループが第3次支援をめぐる交渉開始で原則合意したので、最悪の事態は脱したと言えます。
(カバー写真:ECB/Flickr)
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