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米8月CPI:中古車は下落も、食費など生活関連費目は高止まり

by • September 15, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2120

Consumer Price Increase Eased, But Food And Energy Prices Stay Elevated.

米8月消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇し、市場予想の0.4%を下回った。2008年6月以来の高い伸びだった6月の0.9%、7月の0.5%から鈍化を続けた。エネルギーや食費が高止まりした半面、特殊要因や経済活動が停止していた反動で上振れした費目の物価上昇に漸くブレーキが掛かり、過去7ヵ月間で最低の伸びにとどまる。

内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が2.0%、ガソリンは2.8%とそろって3ヵ月連続で上昇した。なおエネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン価格は8月17日週に一時3.174ドルと、2014年10月以来の高値をつけた。その他のエネルギーでは、電力など公益が1.1%上昇し前月の0.8%から加速し4ヵ月ぶりの高水準。そのうち電力が1.0%と2ヵ月連続で上昇したほか、ガスも1.6%上昇し前月の2.2%に続く高い伸びとなった。

エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が0.4%上昇、前月の0.7%を下回りつつ上昇トレンドを維持した。引き続き肉類・卵・魚が同0.7%上昇し、高止まりを示した。小麦粉・小麦粉ミックスも同2.0%と、前月の0.3%から加速。外食もデルタ株感染が拡大するなかで同0.4%となり、米8月雇用統計で外食が含まれる娯楽・宿泊の平均時給が鈍化した割に上昇トレンドを維持した。

CPIコアは前月比0.1%上昇し、市場予想と前月の0.3%を下回った。6ヵ月ぶりの低い伸びとなる。1982年6月以来の伸びへ加速した6月の0.9%から鈍化を続けた。

チャート:CPIの品目別寄与、前月比

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、ワクチン普及と経済正常化を受け上振れしていた費目で、落ち着きがみられた。足元でコアCPIを押し上げた航空運賃と自動車保険は、前者が5ヵ月ぶり、後者が7ヵ月ぶりに低下に転じた。その他、半導体不足に伴う減産を受け記録的な伸びをたどっていた中古車のほか、新車も伸びが鈍化。服飾の上昇記録も、3ヵ月で止まった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇品目)

・新車 1.2%の上昇、5ヵ月連続でプラス<前月は1.7%の上昇
・娯楽 0.5%の上昇、7カ月連続でプラス<前月は0.6%の上昇
・服飾 0.4%の上昇>前月は横ばい
・帰属家賃 0.3%の上昇、上昇トレンドを維持=前月は0.3%の上昇
・家賃 0.3%の上昇、上昇トレンドを維持>前月は0.2%の上昇
・住宅 0.2%の上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.4%の上昇
・医療サービス 0.2%上昇、2ヵ月連続で上昇>前月は0.3%の上昇
・教育 0.2%の上昇、5ヵ月連続でプラス=前月は0.2%の上昇

(横ばい、低下項目)

・中古車 1.5%の低下、6ヵ月ぶりにマイナス<前月は0.2%の上昇
・宿泊 2.9%の低下、6ヵ月ぶりにマイナス<前月は6.0%の上昇
・航空運賃 9.1%の低下、2ヵ月連続でマイナス<前月は0.1%の低下
・自動車保険 2.8%の低下、2ヵ月連続でマイナス=2.8%低下

CPIは前年比で5.3%上昇し、市場予想と一致した。2008年4月以来の高い伸びとなった前月の5.4%を下回った。CPIコアは4.0%上昇し、市場予想の4.2%だけでなく前月の4.3%以下となった。

チャート:CPIの前年比、品目別の寄与など

 

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チャート:CPIとCPIコア、前年比

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(作成:My Big Apple NY)

――4~6月を中心に特殊要因で上振れした中古車の他、ワクチン普及と経済活動再開を支えに価格上昇が際立った費目が減速し、物価の伸びを抑えました。航空運賃と自動車保険はデルタ株感染拡大による需要後退を受け2ヵ月連続で下落し、中古車や娯楽も下落に転じています。パウエルFRB議長などFed高官のほか、バイデン政権関係者が指摘するように、物価の上振れは一過性との見方を正当化する内容でした。

チャート:経済活動の再開で4~6月に上振れした品目、20年2月からみた上昇率

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(作成:My Big Apple NY)

しかし、こちらで指摘するように問題はCPIの14.9%を占める食費、7.3%を占めるエネルギーなど生活必需品の費目の高止まりです。実質所得が低下するとあって、個人消費を押し下げかねません。

チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続

 

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:ガソリンと電力・ガス料金も、家計を圧迫

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(作成:My Big Apple NY)

食費の上昇は所得を食いつぶし、エンゲル係数も4~6月期に14.2%と2008年以来の高水準となっています。

チャート:エンゲル係数、2008年以来の高水準

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(作成:My Big Apple NY)

当然ながら、インフレ加速により実質賃金はマイナス状態。8月の実質平均時給は前年同月比0..9%下落し、5ヵ月連続でマイナスです。

チャート:実質賃金の下落に加え、生活必需品のインフレ加速で裁量消費余地は一段と限定的に

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(作成:My Big Apple NY)

ゴールドマン・サックスは2021年の実質GDP成長率予想を6.0%増から5.7%増に引き下げたように、エコノミストは見通しを下方修正中。ブルームバーグによるエコノミスト予想中央値も、6月時点の6.6%増から9月15日時点で5.9%増に引き下げられ、米連邦公開市場委員会(FOMC)や国際通貨危機院(IMF)の予想値7.0%増が遠い蜃気楼となりつつあります。

インフレ加速が一過性との主張に正当性がもたらされたとはいえ、一難去ってまた一難。デルタ株感染拡大や人手不足を受けた資材価格や食料品価格の高止まりは早々に解決されそうになく、米経済回復の足かせとなりそうです。

(カバー写真:Ron Bieber/Flickr)

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