Earnings Roundup : Walmart, Home Depot, TJX.
小売の決算が相次いで発表されました。住宅市場の追い風を受けてホーム・デポは好調だったものの、ウォルマートは引き続き失望を誘う結果に。明暗が分かれています。
▽ウォルマート、ドル高と賃金引き上げが響き見通しを下方修正
小売最大手が発表した5−7月(第2四半期)決算では、純利益が前年同期比15.1%減の34億7500万ドルだった。希薄後の1株当たり利益は1.08ドルと、市場予想の1.12ドルに届かず。為替差損により、0.04ドル押し下げられたという。営業利益は10.0%減の60億6900万ドル。ドル高に加え、2月に発表した賃金引き上げ(今年の時給は9ドル、来年に10ドル)、新店舗オープンや電子商取引への投資が重しになったと説明している。販売・一般管理費用は3.1%増の241億400万ドルだった。
会員費用などを含む総売上高は0.1%増の1202億2900万ドルで、市場予想の1197億ドルを上回った。ドル高の影響を除いたベースでは3.6%増となる。
売上高は増加も、引き続きドル高の逆風が吹き付ける。
(出所:Walmart)
全体での燃料を除く既存店売上高は1.1%増となり、市場予想の1.0%増をわずかながら上回った。ただし、4期連続で増加している。電子商取引は全世界で16%増、2−4月期の17%以下にとどまった。少なくとも、過去2年間で最も鈍い水準となる。
米国の売上高は4.8%増の739億5900万ドル。客足が1.3%増と前年同期の1.1%減から増加に転じたものの、支出額は0.2%増と前年同期の1.1%増に届いていない。既存店売上高は1.5%増となり、前年同期の±0%から改善。7四半期ぶりに増加に転じている。営業利益は8.2%減の48億1900万ドルだった。
サムズ・クラブの売上高は9.6%減の147億3400万ドル。燃料を除く既存店売上高は1.3%増となり、前年同期の±0%から増加に反転した。客足は0.5%増と前年同期と同じく0.3%増を上回り、顧客の支出額も前年同期の0.3%減から0.8%増へ改善し売上に寄与。営業利益は13.4%減の4億2800万ドルだった。
海外の売上高は9.6%減の306億3700万ドル。為替変動を除くベースでは、2.8%増の348億ドルとなる。営業利益は14.2%減の12億7700万ドルだった。
8−10月期は、1株当たり利益を0.93−1.05ドルを見込み市場予想の1.08ドル以下にとどまった。2015年度(2016年1月末終了)の1株当たり利益は4.40−4.70ドルを見込み、従来の4.70−5.05ドルから下方修正。市場予想の4.77ドルにも及んでいない。今回の下方修正には賃金引き上げで0.24ドル、電子商取引への投資で0.06−0.09ドル、為替差損で0.15ドル押し下げられるという。さらに小型店舗の出店数を160−170店舗とし、従来の180−200店舗から引き下げた。都市型店舗「ネイバーフッド・マーケッツ」での店舗拡大を見送った格好だ。米国での売上に明るい兆しが見られたとはいえ見通しの下方修正をはじめドル高の悪影響、コスト増加を嫌気し株価は一時3.3%沈んだ。
▽ホーム・デポ、好調な住宅市場を支えに見通し上方修正
リフォーム関連小売が発表した5−7月(第2四半期)決算では、純利益が前年同期比9.0%増の22億3400万ドルだった。一時的項目を除く1株当たり利益は1.71ドルで、市場予想と一致。営業利益は5.8%増の36億4700万ドル。営業費用は、3.5%増の47億1800万ドルだった。
売上高は4.3%増の248億2900万ドルとなり、市場予想の246億9000万ドルを上回った。クレイグ・メニアー最高経営責任者(CEO)は、カンファレンス・コールにて「住宅指標はリフォーム関連セクターの業績を引き続き支援している」とコメント。同社は2月、書き入れ時の春先を前に新規で8万人のパートタイム従業員を採用する計画を発表したが、狙い通りだったと言える。
米7月住宅着工件数など住宅指標は、ホーム・デポを後方支援。
(出所:The American Genius)
既存店売上高は4.2%増と、市場予想の3.6%増を超えた。特に、米国が5.7%増と力強くこちらも市場予想の4.7%増を上抜けている。平均支出額は1.7%増の59.42ドルで、1−3月期(1.8%増の58.60ドル)を上回った。2006年以来で最高を記録しており、メニアーCEOによると900ドル以上の支出が6.3%増と寄与したという。
2015年度(2016年1月末終了)の1株当たり利益は5.31−5.36ドルを見込み、従来の5.24−5.27ドルをから上方修正した。売上高は5.2−6.0%増を予想し、こちらも従来の4.2−4.8%増から上方修正。既存店売上高は4.1−4.9%増とし、従来の4.0−4.6%増から引き上げた。
なお、今回の決算では2014年9月に発生したカード情報流出問題をめぐる損失額として税引き前で9200万ドル計上した。株価は好業績と見通し上方修正を材料に、一時2.1%上昇した。
▽TJX、客足が戻り売上は市場予想超えで見通しも上方修正
T.J.マックスやマーシャルズなどを抱える格安百貨店が発表した5−7月(第2四半期)決算では、純利益が前年同期比4.5%増の5億4930万ドルだった。希薄後の1株当たり利益は0.80ドルとなり、市場予想の0.76ドルより強い。売上高は6.4%増の73億6370万ドルで、市場予想の72億6000万ドルを超えた。キャロル・メイロウィッツ最高経営責任者(CEO)は、決算資料で「既存店売上高で6%増、調整済み1株当たり利益で7%増を達成し、非常に喜ばしい限り」とコメント。背景として「5期連続で客足が伸び、好業績につながった」と説明している。売上の伸びを背景に、粗利益率は29.1%と、28.6%から上昇した。
既存店売上高は6%増となり、市場予想の3%増および前年同期の3%増を上回った。
米国
・T.J.マックス/マーシャルズ 6.9%増の48億600万ドル(既存店売上高 4%増>前年同期は2%)
・ホームグッズ 15.8%増の8億9500万ドル(既存店売上高 9%増>前年同期は5%増)
TJXカナダ 0.4%増の6億9900万ドル(既存店売上高 12%増>前年同期は3%増)
TJXヨーロッパ 0.9%増の9億6300万ドル(既存店売上高 5%増<6%増)
2015年度(2016年1月末)の為替変動を除く1株当たり利益は3.24−3.28ドルと掲げ、従来の3.21−3.27ドルから上方修正。既存店売上高も3−4%増とし、従来の2−3%増から引き上げた。5−7月期の1株当たり利益は0.80−0.82ドルを描きつつ、市場予想の0.89ドルには届かなかった。見通しがアナリスト予想に及ばなかったとはいえ上方修正を好感したほか、ドル高への耐性も意識され一時6.7%も急伸した。
▽アーバン・アウトフィッターズ、競争激化に逆らえず売上が予想以下
女性向けカジュアル服飾大手が発表した5−7月(第2四半期)決算では、純利益が前年同期比1.0%減の6680万ドルだった。発行済み株数の減少を背景に1株当たり利益は6.6%増の0.52ドルで、市場予想の0.49ドルより強い。オンライン向けマーケティング費用を含めた販売・一般管理費が8.2%増の2億14400万ドルとなり、減益につながっている。粗利益率は36.7%と、前年同期の37.4%から低下。ファスト・ファッションのH&Mやフォーエバー21などとの競争激化に直面するなか、引き続きディスカウント幅も広げ利益を圧迫した。
売上高は6.9%増の8億6750万ドルとなり、市場予想の8億8120万ドルを下回った。ブランド別の売上高は“アンスロポロジー”が3.8%増の3億1140万ドルで、11四半期ぶりの低水準。“アーバン・アウトフィッターズ”は6.4%増の2億9580万ドル、“フリー・ピープル”は21.4%増の1億3200万ドルだった。
オンラインを含む既存店売上高は4%増となり、市場予想の4.3%増に届かず。ブランド別では“フリー・ピープル”が14%増と引き続きけん引した一方、 “アーバン・アウトフィッターズ”は4%増、“アンスロポロジー”は2%増となった。卸売は21%増だった。在庫は6%増の2200万ドル相当、新学期セールを控え積み増した格好だ。結果を受け、株価は一時1.8%落ち込んだ。
(カバー写真:Ron Dauphin/Flickr)
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