5388310946_471b1b4088_b

米9月貿易赤字、予想以上に縮小しGDP予想は上方修正

by • November 5, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off1294

Smaller Trade Deficit Brightens Growth Outlook.

米9月貿易収支は408.12億ドルの赤字となり、市場予想の410億ドルから縮小した。8月の480.17億ドル(483.30億ドルから修正)を15.0%下回り、7ヵ月ぶりの低水準。米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げを見送ったためドル高が緩和した効果もあり、輸出増・輸入減を迎え赤字縮小につながっている。

内訳をみると、輸出が前月比1.6%増の1878.96億ドル。2012年10月以来の水準へ縮小した8月の2.0%減から持ち直した。実質の輸出ベースでは年初来で最高を遂げている。逆に輸入は1.8%減の2287.08億ドルと、減少に反転。国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、572.41億ドルだった。直近で最大を記録した8月の630.12億ドルから、元のレンジを取り戻した。なお2014年の貿易赤字は5050億ドルとなり、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加していた。

米9月貿易赤字の3ヵ月平均も、いったん悪化に歯止め。
tradebalance
(出所:BEA)

モルガン・スタンレーのテッド・ウィーズマン米エコノミストは、結果を受けて「中国向け輸出が4.2%増だったほか韓国も1.4%増、インドネシアをはじめマレーシア、フィリピン、タイの4カ国(NICs)も12.6%増などアジア諸国向けで改善が目立ったほか、欧州も5.0%増を示した」と説明する。米9月貿易赤字は大幅に改善したものの、米7-9月期GDP速報値での試算ベースと変わらず米7-9月期GDP改定値の予想は「1.4%増」で据え置いた。もっとも、米10-12月期GDP予想は「純輸出の寄与度が0.2%ポイント引き上げられると考えられ、従来の2.0%増から2.1%増へ上方修正する」と結んだ。以下は、今回の貿易収支における輸出と輸入の内訳のほか各国ごとの貿易収支動向。

輸出の内訳をみると、モノは前月比2.3%増と8月の3.2%減から増加に転じた。ドル高と世界景気の減速を背景に産業財が引き続き弱かったものの消費財、自動車、食品などが増加転じている。資本財は増加基調を保った。

(増加項目)
・消費財 8.1%増、前月の3.4%減から増加に反転
・食品/飲料 3.7%増、前月の2.4%減から増加に反転
・資本財 2.0%増、前月の0.2%増と合わせ3ヵ月連続で増加
・自動車 1.3%増、前月の3.8%減から増加に反転
・サービス 0.1%増、前月の0.4%増と合わせ少なくとも6ヵ月連続で増加

(減少項目)
・産業財 0.1%減、前月の5.9%減と合わせ2ヵ月連続で減少

輸入の内訳をみると、モノが2.3%減となり前月の1.1%増を打ち消した。原油安だけでなく量ベースでも5.1%増と前月の6.8%減から転じていた。原油を除いた場合は1.8%減で、前月の2.9%増から減少へ切り返している。

(増加項目)
・食品/飲料 0.5%増、前月の1.1%増と合わせ2ヵ月連続で増加

(減少項目)
・産業財 4.0%減、前月の5.4%減と合わせ2ヵ月連続で減少
・自動車 2.8%減、前月1.6%減と合わせ2ヵ月連続で減少
・資本財 2.1%減、前月の2.1%増を下回り3ヵ月ぶりに減少
・消費財 0.9%減、前月の8.3%増から減少に反転

国別での貿易赤字動向をみると、最大の赤字を抱える中国への赤字は前月比3.8%増の362.77億ドルと5ヵ月連続で拡大した。8月11日から3日間にわたり中国人民銀行が人民元を切り下げたため中国向け輸出が増加したものの、米国による対中輸入の伸びが引き続き力強さを示している。日本も1.1%増の52.09億ドル。欧州への赤字額は18.0%減の127.03億ドルと、3ヵ月ぶりに減少した。主な原油輸出国への赤字は、原油先物の下落にも関わらず石油輸出国機構(OPEC)を除き増加。カナダは9.0%増の19.86億ドル、メキシコは9.4%増の57.61億ドルとなる。一方で、OPECへの貿易黒字は14.47億ドルで、前月の8.64億ドルを上回った。

——米9月貿易収支では、輸出が改善し赤字が縮小しました。しかし、直近の貿易動向はボラティリティが激しいですね。ドル高の影響を吸収し始めたのか、あるいは輸出増加トレンドがカムバックしたのかは不透明そのもの。中国人民銀行による追加利下げや一人っ子政策の廃止、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和示唆がどこまで需要を押し上げられるかも、未知数です。

米国の成長見通しには、明るさが戻りました。アトランタ連銀の試算値をチェックしてみますと・・。

米9月貿易収支後は2.3%増と、従来の1.9%増から上方修正されています。米10月ISM非製造業景況指数などサービス業も堅調だったため、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、ダドリーNY連銀総裁も4日の議会証言で12月利上げ開始のシグナルを送りやすかったのでしょう。

(カバー写真:Darren Hillman/Flickr)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.