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ベージュブック、中国懸念は後退も個人消費など下方修正

by • January 15, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2332

Beige Book Takes Out Concerns For China, But Optimistic Tone Fades.

米連邦準備制度理事会(FRB)が13日に公表したベージュブック(11月半ばから12月末までカバー)は、経済拡大を確認した。フィラデルフィア連銀がまとめた今回のベージュブックでは、総括として9地区連銀で「拡大してきた(has expanded)」とまとめている。前回12月分の「経済活動は穏やかに拡大し続けている(continued modest expansion in economic activity)」から若干変更が加わったとはいえ、2014年12月以降続けている「経済が拡大し続けた(continued to expanded)」にほぼ沿う表現を用いた。ただ全般的に個人消費、製造業、賃金など前回より下方修正が目立ち、3月15〜16日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げを支援する内容とは判断しづらい。

今回ボストン連銀が前回から「好転(upbeat)」したものの、NY連銀とカンザスシティ連銀は「横ばい(flat)」に終わった。経済拡大を報告した9地区連銀のうちアトランタ連銀とサンフランシスコ連銀は「緩やか(moderate)」で、前回の1行から増加。フィラデルフィア連銀、クリーブランド連銀、リッチモンド連銀、シカゴ連銀、セントルイス連銀、ミネアポリス連銀、ダラス連銀の7地区連銀は「控え目(modest)」とし、前回と数は変わっていない。経済見通しはボストン連銀、フィラデルフィア連銀、シカゴ連銀、カンザスシティ連銀、カンザスシティ連銀、ダラス連銀の6行が「概して前向き(mostly positive)」だった。

ドル高をめぐるネガティブな表記は、総括を含め16回と前回の15回から増加した。6地区連銀から以下のように言及され、NY連銀が消えたため前回の7地区連銀から減少している。

・ボストン連銀「複数の企業にとって、ドル高が問題であり続けた」
・フィラデルフィア連銀「世界的な需要が低下し、ドル高が原因」
・クリーブランド連銀「製造業で生産を押し下げた背景の一つはドル高」、「エネルギー価格の下落が利ざや確保に貢献したが、ドル高の影響は相殺できず」、「鉄鋼業者はドル高や過剰供給、需要低下など向かい風に直面」、「鉄鋼業者はドル高に伴う輸入業者との競争が生じている」
・リッチモンド連銀「輸出が軟化し、ドル高が背景にある」
・アトランタ連銀「ドル高による、海外観光客の需要押し下げを懸念」
・ダラス連銀「複数の製造業者は、ドル高が輸出に対する負の影響を与えたと指摘」、「化学業者はドル高の打撃を報告」、「国境付近の観光客による支出減速及び売上鈍化は、暖冬やドル高が主因」

中国というキーフレーズが登場した回数は、2015年12月まで6回だったものの今回は2回に減少した。2015年7月に初めて中国が盛り込まれた当時の8回から、大きく落ち込んでいる。しかもボストン連銀は、検査関連器具の受注がインドと並び増加したと報告。フィラデルフィア連銀は安価な中国の鉄鋼商品との競争を懸念する声を挙げており、前回と比較し中国需要の悲観的な見解は見つかっていない。年明け以降、中国発の世界同時株安もあって再び暗いトーンへ変化する可能性を残す。

今回、総括部分で使用されたキーワードの登場回数(同じ単語の変化形を含む)は以下の通り。

「増加した(increase)」→14回、前回は36回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→10回、前回は19回
「緩やか(moderate)」→13回、前回は25回
「控え目(modest)」→5回、前回は25回
「弱い(weak)」→11回、前回は10回
「底堅い(solid)」→0回、前回は4回
「安定的(stable)」→2回、前回は9回

全体的に「増加した」、「強い」などの楽観的なトーンが後退しつつ、 他の表現も「弱い」を除き減少しまちまちとなった。中国に関する懸念が後退した一方、ホリデー商戦を受けながら個人消費が伸び悩んだせいか振るわず。足元の米株安でリスク・オフ相場を迎えドル高に修正が加わるものの、情勢の変化に伴いさらに楽観度が巻き戻されうる。

主な各項目の詳細は、以下の通り。

(個人消費)
消費動向をめぐっては、ほぼ全ての地区連銀がホリデー商戦中に「幾分増加した(some growth)」と報告。前回の「増加した(increased)」からやや下方修正した。ただペースは「わずかにから緩やか(slight to moderate)」であり、ミネアポリス連銀のみ「力強い(strong)」と示した。NY連銀、リッチモンド連銀、ダラス連銀の3行は「緞帳あるいは軟化(sluggish or had softened)」としている。さえない売上の理由に平年を上回る気温を挙げたのはクリーブランド連銀、リッチモンド連銀、ダラス連銀の3行で、NY連銀をはじめリッチモンド連銀、シカゴ連銀の3行は冬物衣料が失望を誘ったと報告。サンフランシスコ連銀は小売店舗で見通し以下にとどまったとし、ミネアポリス連銀は反対にオンラインで記録を更新した。クリーブランド連銀は電子商取引全般から楽観的な見通しが挙がった。自動車の売上は、全体的に「好調(positive)」。観光は「まちまち(varied)」だった。

(製造業)
製造業活動は前回に続き「まちまち(varied)」で、ほぼ半数の地区連銀が「低下(decline)」を報告した。前回の「まちまち(mixed)」から下方修正された。NY連銀、フィラデルフィア連銀、アトランタ連銀、ミネアポリス連銀、カンザスシティ連銀の5行が低下を示した一方、クリーブランド連銀、理知もンド連銀、シカゴ連銀の3行は「控え目から緩やかに(modestly to moderately)」拡大した。ダラス連銀は需要が「横ばいあるいは拡大(flat or increased)」したといい、サンフランシスコ連銀は逆に「横ばいから低下(flat or decreased)」とまとめている。ドル高をめぐりボストン連銀、フィラデルフィア連銀、クリーブランド連銀、ダラス連銀、サンフランシスコ連銀の5地区連銀が低下の要因として挙げた。ボストン連銀、クリーブランド連銀、ダラス連銀の3行はエネルギー価格下落によってもドル高の負の影響を相殺できなかったと報告。原油・ガス供給側は「弱含み、時には悪化(weak and sometimes deterioration)」を示し、フィラデルフィア連銀、クリーブランド連銀、リッチモンド連銀、シカゴ連銀、セントルイス連銀、カンザスシティ連銀の6行で需要の低下を挙げている。自動車産業は「全般的に強い需要(generally experienced strong demand )」を確認した。

(労働市場、賃金、物価)
労働市場は「改善し続けた(continued to improve)」とし、前回の「控え目ながら逼迫し続けた(continued to tighten modestly)」から上方修正された。リッチモンド連銀では雇用の伸びが「緩やか(moderate)」だったほか、フィラデルフィア、シカゴ、ダラスは「わずかなから控え目(slight to modest )」にだったという。概してNY連銀とアトランタ連銀は解雇より採用が多かった。ボストン連銀とミネアポリス連銀は「まちまち(mixed)」だったが、そろって雇用増加の方向性を示した。セントルイス連銀も、「前向き(positive)」な雇用見通しを明らかにした。労働市場について「引き締まっている、あるいは引き締まりつつある(tight or tighitening)」と報告したのはNY連銀、クリーブランド連銀、アトランタ連銀、ミネアポリス連銀の4行。NY連銀、フィラデルフィア連銀、リッチモンド連銀、ミネアポリス連銀の4行は人材派遣会社から強い労働市場の様々な前向きな兆候が見られたという。

賃上げ圧力はフィラデルフィア連銀、アトランタ連銀、シカゴ連銀、カンザスシティ連銀の4行で「比較的、抑制的だった(relatively subdued)」だった。NY連銀とサンフランシスコ連銀の2行のみ、「幾分の賃金上方圧力(some acceleration in upward wage pressure )」が示されたという。クリーブランド連銀、リッチモンド連銀、ダラス連銀の3行は「まちまち(mixed)」で「横ばいから緩やか(flat to moderate)」だった。7行はあらゆる産業の特殊技能職において一段の賃上げ圧力を確認したが、6行は技能の低い職にまで及んだと報告。最低賃金の引き上げや、銀行、小売、宿泊関連のエントリー・レベルでの離職率の上昇による労働不足も一因になった。

物価上昇は、ほぼ全ての地区連銀で全般的に「最小限(minimal)」にとどまった。前回の「安定的あるいは増加した)」から下方修正されている。NY連銀、フィラデルフィア連銀、サンフランシスコ連銀の3行はサービス業で、リッチモンド連銀やカンザスシティ連銀では小売アウトレットやレストランで上昇を確認した。ただしリッチモンド連銀、カンザスシティ連銀、ダラス連銀ではエネルギー価格の下落による仕入れ価格の下落、ボストン連銀、クリーブランド連銀、アトランタ連銀、シカゴ連銀の4行は銅、鉄、その他の商品の価格下落に伴う仕入れ価格の下落に報告。原油安で、ミネアポリス連銀は住宅暖房コストの下落、ダラス連銀の航空運賃下落を確認した。

(エネルギー、農業関連)
エネルギー関連は原油とガス価格が下落し続けたため、ほとんどのセグメントで「さらなる困難に直面した(struggled further)」。前回の「小幅に低下した(mildly decline)」から、下方修正。クリーブランド連銀とカンザスシティ連銀は暖冬を理由に挙げ、在庫をさらに押し上げたと説明している。クリーブランド連銀、アトランタ連銀、ミネアポリス連銀、カンザスシティ連銀、ダラス連銀は原油とガスの掘削が「低下し続けた(continued declines)」といい、そのうちの複数の地区連銀は深刻な資金不足に陥り雇用を削減したと伝えた。一方で、クリーブランド連銀、ミネアポリス連銀、ダラス連銀は精製所のポジティブな影響を報告した。。

農業は全般的に「横ばいから低下した(flat to decline)」。商品先物の低迷や一段安が農場の所得を押し下げており、シカゴ連銀、カンザスシティ連銀、ダラス連銀は一部の農業主の間で利益が確保できないとの報告が挙がった。

(カバー写真:Tim Evanson/Flickr)

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